中国・広西チワン族自治区荔浦市で、バス会社3社が9月29日から運行を全面停止すると発表した。理由は「長期的な赤字と保険料未払い」で、市民の間に不安が広がった。地元当局は「事前通告なしの運行停止は違法」として撤回を命じたが、問題の根は深いようだ。
荔浦通達公共客運有限会社など3社は、乗客の減少と燃料費の高騰による収益悪化に加え、政府補助金の遅延で資金繰りが限界に達したと説明。車両保険など必要経費すら支払えず、やむなく運行の停止を決定したという。運行を停止している中でも資金調達を続け、再開時期は改めて通知するとしている。

地元関係者によると、今回の通告は単なる経営難ではなく、市政府に補助金支給を迫る「実力行使」の意味合いもあるという。しかし、市政府自身も財政難に陥り、職員の給与さえ滞っているのが実情だ。
市民からは不安と不満の声が相次いでいる。通勤や買い物の足を失った住民は「生活が成り立たない」と訴え、小さな商店を営む男性は「客足が遠のき、売り上げがさらに落ち込んだ」と語った。
こうした事態は特定地域に限らない。河南省鄭州や陝西省西安、湖北省武漢、四川省成都など各地でも、補助金不足を補うため、バス会社が夜間に宅配便や農産物を運ぶ“副業”に乗り出している。
あるドライバーは「車体には『公共交通』と書かれているが、今は荷物を運ぶ仕事になっている」と話す。逼迫する地方財政が、公共交通のあり方を根本から変えつつある。
専門家は、土地売却収入や税収の減少により地方財政が急速に行き詰まり、補助金の削減が公共交通の維持を直撃していると指摘する。その結果、バス会社が「停運」というかたちで自治体に支援を迫るケースも珍しくなくなった。
突き詰めれば、問題の根は「資金不足」にある。公共サービスを支えてきた制度自体が、いま限界に達しつつあるのだ。
市民の間では「今日はバス、明日は病院や学校か」との声も上がり、公共サービス崩壊への不安が広がっている。

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