米連邦準備制度理事会(FRB)は9月17日、政策金利を0.25%引き下げ、年4.25~4.5%とすることを決定した。市場の予想通りの措置であり、最新の「ドットチャート」では2025年中にさらに2回の利下げが見込まれている。
今回の決定は、投票権を持つ理事12人のうち11人が賛成し、1人は0.50%の利下げを主張した。市場ではFRBが借入コストを引き下げ、雇用市場を下支えすることへの期待が高まっており、株式市場は最高値を更新してきた。発表直後は株式・債券ともに一時上昇したが、30分足らずで上げ幅を失い、パウエル議長の会見前に反落した。
カゴ・マーカンタイル取引所グループの金利予測ツールFedWatchによると、市場は10月と12月の会合でもそれぞれ0.25%の追加利下げを織り込みつつあり、その確率はいずれも70%を超えている。
FRB声明のポイント
政策金利の指標であるフェデラルファンド金利は、企業向け融資から住宅ローンに至るまで幅広い分野の基準となっている。
FOMCは声明で、米経済活動が「減速」しているとし、「雇用増加は減速し、失業率はやや上昇したものの依然として低水準にとどまっている。インフレ率は上昇し、なお高止まりしている」と指摘した。これは「物価安定」と「最大限の雇用」というFRBの二大目標の間に矛盾が生じていることを示している。
さらに「経済の先行きには依然として高い不確実性がある。委員会は雇用の下振れリスクが強まっていると判断している」との文言も盛り込まれた。
ドットチャートでは、年内にあと2回の利下げが見込まれており年内に合計1.25%の追加利下げを見込む票を投じた。CNBCによると、この見解を示したのは新任のFRB理事で大統領顧問のスティーブン・ミラン氏とみられる。
出席した当局者(投票権の有無を含む)のうち、9人は今年中に利下げはあと1回にとどまると見込み、10人は2回の利下げを予測している。これは、FRBが10月と12月の会合で追加の行動を取ることを意味している。また、1人は今回の利下げを含め、一切の利下げを望んでいなかった。
会合後に公表された経済見通しでは、成長率が6月時点の予測をやや上回ると示された一方、失業率とインフレの見通しは据え置かれた。
FRBは2025年の実質GDP成長率見通しを1.4%から1.6%に引き上げた。2026年は1.8%、2027年は1.9%の成長を見込み、いずれも小幅な上方修正となった。
失業率については、2025年は4.5%で変わらず、2026年と2027年はそれぞれ4.4%、4.3%と0.1ポイント下方修正された。
パウエル議長の発言
パウエル議長は会見で、今回の利下げを「リスク管理的な利下げ」と表現した。雇用市場が弱含む一方でインフレは依然として高止まりしており、FRBが二つの使命の間で難しい判断を迫られていることを強調した。
「労働需要と供給が同時に大きく鈍化するのは珍しい。雇用の下振れリスクが高まっている」と述べた。
さらに、今回の利下げ決定により金融政策は「より中立的な立場」に移行し、従来の「やや制約的」とされる状態ではなくなったと説明した。
1年前、市場では失業率の緩やかな上昇が経済全体の弱さを示唆しているとの懸念があったが、FRBは0.50%の大幅利下げを実施していた。当時、共和党の大統領候補であったトランプ氏は、この決定が大統領選に影響を及ぼし民主党候補を有利にすることを狙った政治的判断だと批判していた。
異例の会合
ウォール・ストリート・ジャーナルは、今回の会合を「近年で最も異例な会合のひとつ」と評した。
投票では、パウエル氏をはじめ11人が0.25%の利下げを支持し、新任のミラン理事のみが0.50%の利下げを主張した。
会合直前には、FRB理事人事をめぐり相次いで劇的な展開が生じた。
ミラン氏は、上院での指名承認公聴会を経て就任したばかりだ。こうした中、民主党は17日、ホワイトハウスとFRBとの関係をより明確に切り分けることを目的とした法案を上院に提出した。
また、16日には連邦控訴裁判所が、FRBのクック理事の会合出席を認める仮処分を支持した。トランプ政権は住宅ローン詐欺への関与を理由にクック氏の解任を試みていた。
パウエル氏の任期は2026年5月までである。次期議長人事は早くも関心を集めており、スコット・ベッセント財務長官は11人の候補者リストを公表し、その中には今回会合に出席した現役理事4人も含まれている。
市場への影響
CNBCは、今回の利下げそのものよりも、今後の政策見通しを示すドットチャートが市場にとって重要だと指摘している。政治要因が市場動向に影響を及ぼしているためである。
ベッセント財務長官は「FRBはもっと思い切った利下げを行うべきだ」と述べ、トランプ前大統領によるFRB批判についても「多くは正しかった」と語った。FRBの対応の遅れが問題だと強調している。
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