訪日観光客の急増で、日本各地のホテルや空港、観光地が新たな問題に直面している。2025年6月の訪日外国人は約337万人に達し、6月として過去最高を記録。上半期でも最速で2千万人を突破し、中国や韓国、米国など多くの国から観光客が押し寄せている。こうした背景もあり、受け入れ現場では新たな「副作用」が浮かび上がっている。
観光客が日本で購入した「戦利品」を手に入れるため、より大きなスーツケースを買い求め、不要になった古いかばんを街頭や宿泊施設に置き去りにするケースが相次いでいるのだ。
大阪・ミナミの繁華街では、にぎわう通りの片隅に放置されたスーツケースが目立つようになった。市民からは「中に何が入っているのか分からず怖い」との声も上がる。
大阪市中心部のホテルでは、1日に3~4個ものスーツケースが客室に残されることがあり、ホテル側は遺失物として3か月間保管するが、ほとんどが引き取り手のないまま終わる。最終的には業者が費用を負担するしかなく、大阪市では大型ごみとして処理する場合、1個につき200円が必要となる。このホテルはかつて「1個500円で代わりに処理可能」と案内したが利用はほとんどなく、昨年だけで処理費用は約30万円に上ったという。
空港でも事態は深刻化している。成田空港では2024年度に放置されたスーツケースを1073件確認し、コロナ前の2019年度に比べ倍以上に増加。関西空港も同様の傾向を示し、不審物扱いで安全確認が必要となるため、業務への負担が一層大きくなっている。
大阪観光局が6~7月に実施した調査によれば、宿泊業者の8割以上が「放置スーツケースは深刻な問題」と回答した。観光局幹部は「ごみの増加も含め観光公害は深刻だが、現状では観光客のマナーに頼らざるを得ない」と苦悩をにじませる。
爆買いの陰で放置されるスーツケースは、都市と観光の共存に新たな課題を突きつけている。

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