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中国 数百万人を巻き込んだ投機狂乱の結末

中国で「プーアル茶」バブル崩壊 値崩れ8割超 愛好家も壊滅的損失

2025/09/16
更新: 2025/09/16

プーアル茶は時を経るごとに風味が変化する。三年ごとに小さな移ろいを見せ、五年で大きく変わる。その熟成の妙こそ、人々を魅了してきた最大の魅力である。しかし今、その中国のプーアル茶市場が未曾有の危機に直面している。

高級茶葉の象徴とされた大益(だいえき)ブランドをはじめ、名だたる銘柄がピーク時から八割以上も値を下げた。かつて「一片茶葉一克金(茶葉は金と等しい価値)」とまで称され、投資対象として脚光を浴びた逸品は、いまや「倉庫に山積みでも買い手なし」という惨状へと転じている。

代表的な事例として、大益(だいえき)の「軒轅」シリーズの茶餅(円盤状に成形したプーアル茶、約15キロ)は、2017年に約112万円で取引され、2021年には約3000万円まで急騰した。しかし今年6月には約620万円へと急落している。銘柄や価格帯を問わずプーアル茶は概ね八割以上の下落を記録し、市場では数千億元、すなわち数兆円規模の価値が事実上一夜にして蒸発しました。

 

イメージ画像。2007年3月19日、北京で行われた儀式で、雲南省普洱市(ふじ-し/ プーアル茶の産地)の代表と故宮博物院の管理官が百年物のプーアル茶(重さ約2.5キロ、当時の評価額200万元=約3,000万円)の受け渡しに臨んだ。(China Photos/Getty Images)

 

さらに衝撃的なのは実際の被害者である。2018年に「軒轅」を1枚8万元(約130万円)で50枚購入するため、2軒の自宅を抵当に入れた愛好家の李さんの場合、現在の市場価格は1.2万元(約25万円)にまで下落した。損失は300万元超(約6,200万円)、借金は700万元(約1億4,000万円)を超える。李さんは「仲間は逃げるか自殺した。私は最後まで耐えているだけだ」と絶望を語っている。

市場を映す鏡といわれた広東省・芳村(ほうそん)茶葉市場の衰退は鮮明である。かつては店を借りるだけで500万元(約1億円)を要し、店を構えること自体が困難なほどの熱気を誇った。しかし今では「タダでも借り手がつかない」とまでいわれ、9割の店舗が閉鎖に追い込まれた。東莞市茶商協会の統計によれば、今年上半期だけで広東省東莞では623の茶葉店が廃業し、6万8千人のコレクターが在庫を処分して市場から撤退した。ピーク時から実に7割が姿を消した計算になる。

専門家はその背景に、中国経済の低迷と消費者の節約志向を指摘する。必需品ではない高級茶はまず切り捨てられ、さらに供給過剰と投機熱の反動が重なった結果、価格は大暴落を余儀なくされた。

業界関係者によれば、「東莞に眠る民間のプーアル茶だけで40万トンあり、30年かけても消費しきれない」とされ、過剰な蓄積が市場を圧迫する現実が浮き彫りとなっている。

その影響は上場企業にも及ぶ。プーアル茶業界で初めて上場した「瀾滄古茶」は、2024年に3億800万元の純損失を計上し、2025年上半期も赤字が続いた。事業の先行きは暗い。

とどまることを知らぬ高騰によって膨らんだ茶葉バブルの崩壊は、富豪や投資家だけでなく、庶民の住宅ローンや生活基盤までも巻き込んだ。かつては財テクの象徴だったプーアル茶が、いまや「負債の象徴」に変わり、中国経済全体の縮図として国内外の注視を集めている。

 

イメージ画像。プーアル茶。(Shutterstock)
李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!