もしあなたが10年間、毎年欠かさず健康診断を受け「異常なし」と告げられ続けた末に、突然「末期がん」と診断されたらどうするだろうか。中国・北京の女性弁護士が直面した現実は、民間健診機関への信頼を根底から揺るがしている。
主人公は北京の弁護士・張暁玲氏。中国の三大民間健診企業の一つ「愛康国賓」で10年にわたり健診を受け、結果はいずれも「異常なし」だった。ところが2024年、別の病院で再検査を受けた際、腎がんの骨転移による末期と診断されたのである。
複数の専門家に相談した張氏は「もし早期に発見していれば、ここまで悪化しなかった」と知り、「愛康国賓」の誤診・見落としを疑った。7月4日には自ら弁護士として通知書を送り、検査標本や技術の合法性を示す証明書、検査担当者の資格証明などの提出を正式に求めた。

この事件は複数のメディアで報じられ、張氏の訴えをきっかけに「健診では異常なしだったのに、その直後に大きな腫瘍が見つかった」との体験談が相次いで寄せられた。こうした声は、民間健診機関が急速に拡大する一方で、検査精度や医師の専門性をめぐる不信が改めて浮き彫りとなったことを示している。
一方「愛康国賓」は逆に張氏を名誉毀損で提訴し、裁判所も立件。これに対し張氏は「歓迎する。むしろ起訴を望んでいる」と応じ、全国から1万人規模の「被害」事例を集め、20人の弁護士による支援チームを組織して、業界全体の誤診や見落とし問題に対する公益訴訟を正式に起こす方針を明らかにした。

世論の注目が集まる中、7月30日の会見で同社の会長兼CEO・張黎剛氏は「たった数百元(約1万円前後)の健診で全ての病気が見つかると思うのか」と発言。この発言が火に油を注ぎ、SNSでは「健康診断の存在意義を否定した」と批判が殺到し、企業の冷淡な姿勢に反発が広がった。
なお「愛康国賓」は中国国内に広く拠点を展開しているが、日本での事業展開については不明である。ただし2021年に「中日大健康医療オンラインフォーラム」に参加した記録があり、日本との交流の痕跡はみられるものの、それが本格的な進出を意味するかどうかは分からない。

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