北海道釧路湿原国立公園周辺で進められている大規模な太陽光発電所(メガソーラー)の建設を巡り、事業者である「日本エコロジー」が建設計画の中止を行わない旨の見解書を市議会に提出していた。26日、エポックタイムズの釧路市への取材で分かった。
これに先立ち、釧路市議会の有志21人は15日付で日本エコロジーに対し、事業の中止を求める要望書を提出していた。市は現在、希少生物の安全確保や環境保全の観点から、ソーラーパネル建設を制限するための許可制条例案を9月の議会に提出する予定で、パブリックコメント(国民や住民から広く意見や情報を募り、それを考慮した上で最終的な意思決定を行う)を募集している。
釧路湿原は日本最大級の湿地帯で、タンチョウをはじめとする希少な動植物の生息地として知られる。
近年、再生可能エネルギーの推進を受けて市内で太陽光発電施設の建設が相次いでいるが、湿原の生態系や野生生物への影響が懸念されている。
こうした状況に対して、著名人からも懸念の声が上がっている。猛禽類医学研究所の齊藤慶輔氏は、環境省釧路湿原野生生物保護センター付近で進行中の建設現場を映した動画をX(旧Twitter)に投稿し、「一刻も早く工事を中断し、今年のタンチョウの営巣状況の把握や、今後の繁殖を確保するための保全対策(中止も含む)を行政・政治主導で実施すべき」と呼びかけた。
この投稿は大きな反響を呼び、閲覧数は1590万回を超えた。
また、アルピニストの野口健氏も20日までに「メガソーラーは犠牲があまりに大きすぎる」と投稿し、無所属で参院選に立候補したロックミュージシャンの世良公則氏は「地球環境に優しいどころか、取り返しのつかない状況」と現状を憂えた。
さらに、実業家の前澤友作氏やタレントのつるの剛士氏、俳優・モデルの冨永愛氏らも次々に疑義を示している。
こうした反発の一方で、釧路市も独自の対応を進めている。市は6月1日、太陽光発電施設の設置に対し、市としての方針を示す「ノーモア メガソーラー宣言」を発表している。
この宣言は、釧路湿原をはじめ市内の豊かな自然環境や希少動植物の生息地を守ることと、再生可能エネルギーの導入との調和を目的としている。鶴間秀典市長は5月30日の定例市長記者懇談会で、「自然環境との調和がなされない太陽光発電施設の設置は望まない」と明言した。
ただし、この宣言には法的拘束力はなく、実効性のある規制として条例化を進める方針だ。
条例が成立すれば、釧路市は再生可能エネルギーの推進と自然環境保護の両立を目指す先進的な事例として、全国的にも注目されることになる。
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