広東省で流行するチクングニア熱をめぐり、地方政府がまたしても過剰な防疫に突っ走った。
患者の多くは軽症であるにもかかわらず、当局は村全体に草むしりを命じ、家庭菜園や花壇をコンクリートで固め、農家のビニールハウスまで撤去。極めつけは下水道の穴に網戸用ネットを張るという荒唐無稽な作戦である。

こうした「防疫」は市民生活を直撃している。茂名市(もめい-し)では村民全員に一斉除草と強制採血が行われた。雑貨店主の陳さんは「消毒のにおいが強すぎて自宅では料理もできず、地域の百数十世帯が外食に追いやられた。花や草も一掃されたため、町は疫病地域のようだ」と嘆いた。

さらに仏山市(ぶつざん-し)では、防蚊ネットで塞がれた下水道が豪雨時に排水を妨げ、市街地が冠水。結果的に、かえって蚊が繁殖しやすい環境をつくってしまうという皮肉な結末に、市民からは怒りとあきれ声が噴き出した。

専門家からも批判の声が相次ぐ。北京の公衆衛生学者・呉氏は「蚊の駆除に必要なのは排水改善であって、草むしりや下水道への網ではない」と切り捨て、「地方のいわゆる『専門家』たちは一体何をやっているのか」と首をかしげた。
そんな中、現場では防疫要員が噴霧器で白煙をまき散らし、町中が煙に包まれて目もまともに開けていられない有様となった。住民は「蚊より先に自分たちが倒れそうだ」と真顔で皮肉を口にする。

ネット上では「ゼロコロナ政策の焼き直しだ」「官僚の知恵は幼稚園児以下」との嘲笑が飛び交うが、書き込みはすぐ削除。それでも皮肉は止まらず、「蚊撲滅プロジェクトでGDPが伸びる。壊して作り直せば数字は増える」とブラックジョークまで広がっている。
(「蚊駆除作戦」で噴霧された白煙に包まれる町、2025年8月、広東省)
外から見れば滑稽な光景かもしれない。だが現地の人々にとっては、笑えない現実であり、人々の暮らしに重くのしかかっている。
なお、チクングニア熱は主に蚊によって人に感染する。患者の多くは軽症で、主な症状は発熱、関節痛、皮疹だ。現時点で有効な特効薬やワクチンは存在しない。そのため、外部では当局の過剰な防疫措置に疑問が持たれている。
(夜空に浮かぶ「蚊予防スローガン」。ビル壁面に「蚊取り線香をつけよ」「外出時は防護を」の文字=広東省仏山市、2025年8月)
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