世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対し東京地裁が下した解散命令決定を巡り、「公平公正な裁判を求める有識者の会」は8月6日、都内で記者会見を開いた。
登壇した弁護士、学者、ジャーナリスト、他宗教の宗教者らは、一連の司法プロセスが世論や「空気」に迎合していると強く批判。証拠に基づかない事実認定や法解釈の危うさを指摘し、高等裁判所での公平な審理を強く求めた。
「これは法治国家の危機」 専門家が指摘する地裁決定の問題点
会見の冒頭、呼びかけ人代表の中山達樹弁護士は「我々は家庭連合(旧統一教会)の信者ではない。どんな団体であれ、法の支配に基づき公平な裁判が行われるべきだという信念で集まった」と会の趣旨を説明。その上で、3月の地裁決定について複数の法的な問題点を挙げた。
「解散の根拠とされた民事裁判は平均32年も前の古い事案が大半。これを認めれば多くの宗教法人が将来、解散対象になりかねない」と警鐘を鳴らし、近年の違法献金がほぼないにもかかわらず「潜在的な被害がある」と証拠に基づかない「推測」で不法行為を認定した点も「証拠裁判主義に反する」と断じた。
記者会見にビデオメッセージで参加した浜田聡元参院議員は、解散命令請求の根拠となった文科省の資料には「捏造の可能性」があり、浜田議員が参院議員時代に国会で質しても文科省は否定せず撤回していないと述べ、この資料を基にした決定に疑義を呈した。
また教団がコンプライアンス宣言をした2009年より前の古い事例を主な理由にすることは、民法では時効であり、またその後の教団の努力を無にするもので不当だと述べた。
解散請求の背景に「拉致監禁のからくり」
会見では特に、メディアでほとんど報じられない「拉致監禁」問題が、今回の解散請求の根幹にあるという衝撃的な指摘がなされた。
ノンフィクションライターの福田ますみ氏は、一般のイメージとは正反対の構図を告発した。
「拉致監禁とは、教団が信者を閉じ込めるのではなく、信者が家族の協力を得た脱会活動家らによって長期間にわたり物理的に拘束される行為を指す」と説明。この行為を「本当の洗脳だ」とし、こう続けた。
「解散命令の根拠になった元信者の証言の多くは、この拉致監禁によって脱会させられた人たちのものです。彼らは『奪い屋 [1]』や一部のキリスト教牧師らから、脱会の証として『古巣である家庭連合を訴えろ』と強要される。この構造によって、教団を相手取った裁判が作られてきた」
[1] 信者の脱会を目的に、家族と協力し監禁・説得する専門家
この証言を裏付けるように、キリスト教牧師の中川晴久氏は、自らの属するキリスト教会内部の問題として「家庭連合信者の拉致監禁に、約300名の牧師が関わっている」と衝撃的な数字を明かし、「拉致監禁されてしまった被害者の方々に、キリスト教会を代表してお詫びしたい」と頭を下げた。
イスラム評論家のフマユン・A・ムガール 氏は日本の裁判官は「良心に従って」真実を述べると宣誓することに触れ、裁判官には自らの良心に従って判決を下してほしいと述べた。
登壇者らは、こうした背景を持つ元信者の証言を、司法が検証もせずに鵜呑みにしていると強く批判。作られた「被害者」の証言が、解散命令という極めて重い司法判断の土台になっていることへの危機感をあらわにした。
「作られたイメージ」への反論相次ぐ
会見では、こうした「からくり」によって作られた教団イメージと実態との乖離を指摘する声も相次いだ。11年半の信者経験を持つ金沢大学の仲正昌樹教授は、「『地獄に落ちる』と脅して献金を強要するという話は、私の経験上、一般的ではない」と証言。「マインドコントロール」という言葉が一人歩きし、信者を主体性のない存在として描く風潮に疑問を呈した。
宗教界からの懸念「対岸の火事ではない」
この日の会見には、イスラム教や仏教の立場からも登壇者が参加し、信教の自由の危機を訴えた。仏教・金剛寺の水田真隆住職は、「当初は解散も当然だと思っていた」と率直に明かしつつ、「調べるうちに、これは対岸の火事ではないと気づいた。民法の不法行為が解散理由になるなら、明日は我が身だ」と全国の宗教者に警鐘を鳴らし、民法の不法行為を解散要件とするなら、全国のあらゆる宗教法人が解散対象になりかねないと問題視した。
同会は今後、国内外の有識者から集めた350筆以上の署名を高等裁判所に提出する予定だ。特定の団体への是非を超え、司法の独立と法の下の平等という、日本の民主主義の根幹が問われる審理の行方が注目される。
世界平和統一家庭連合からのコメント
世界平和統一家庭連合は本紙の取材に応じ、今回の記者会見について、法務局副局長の近藤徳茂氏の名で見解を表明した。
近藤氏は、まず有識者たちの勇気に対し「心から敬意を表する」とした上で、「著しい偏向報道に政権や司法までもが追随したのが最も恐ろしい」との有識者の指摘を全面的に支持した。近藤氏によれば、政権は報道の圧力に屈し、一夜にして法解釈を変更。その方針転換を司法までもが追認した。しかし、解釈を変更したところで、解散事由自体は実際には存在しなかったため、政権側は「捏造証拠まで提出した」と主張する。
さらに、近藤氏は裁判における出来事にも言及した。「法廷でそれ(捏造証拠)を暴いたところ、東京地裁は顕在化していない解散事由が『あるはずだ』との憶測によって解散命令を下した」とし、民主主義国家では到底許容されない決定だと強調した。
また、記者会見には主要な大手マスコミがテレビカメラを携えて出席したにもかかわらず、「どこも報道しようとしなかった」と説明。「未だ国民に真実は知らされていないままである」と、現状への強い懸念を示した。
近藤氏は一連の経緯について、引き続き正当性を主張し、社会に冷静な議論を呼びかけている。
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