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トランプ大統領令 新たな相互関税 税率は10%から41%の範囲

2025/08/01
更新: 2025/08/01

7月31日、アメリカのトランプ大統領は、行政命令に署名し、世界68か国および欧州連合からの輸入品に対する「相互関税」の調整を命じた。新しい税率は、8月7日から適用される。ホワイトハウスは、この措置を通じて、アメリカが経済主権を回復し、長期にわたる物品貿易赤字によって、高まった国家安全保障上のリスクに対応する方針を示した。

行政命令では、トランプ大統領が「国際緊急経済権限法」などの法的根拠を明示し、恒常的な貿易不均衡を国家安全保障と経済に対する「異常かつ重大な脅威」と見なしたうえで、全国的な緊急事態の発動を宣言した。

命令書は、一部の外国パートナーが長年にわたりアメリカ製品に対して、不公正な関税や非関税障壁を設け、アメリカの製造業や輸出、重要なサプライチェーンに深刻な影響を及ぼしてきたと指摘した。そのため、連邦政府として「必要かつ適切」と判断し、追加的な課税措置を実施することとした。

一律10%課税を基本に、関税逃れには最大40%の追加税

行政命令は、特別の定めがない限り、すべての輸入品に対して一律10%の関税を課すと規定した。

欧州連合の製品に対しては、「差額調整」方式を採用し、既存の関税が15%未満であれば15%に引き上げ、15%以上であれば追加の課税は行わないこととなる。

さらに、第三国経由や転送によって関税を回避しようとする輸入品には、最大40%の懲罰的関税を課すと明記した。こうした回避行為に関連する国や施設については、定期的にリスト化して公表する方針である。関税の減免申請は一切受け付けないとした。

関税率は国ごとに10~41%の範囲で設定

行政命令によれば、各国の関税率は基本10%から最大41%まで広がっている。

シリアからの製品に対しては、最高の41%が適用され、ミャンマー、ラオス、スイスにも30%を超える高率の関税が設定された。

アメリカの同盟国である日本、韓国、英国に対しては、それぞれ15%、15%、10%の税率を設定した。台湾には20%、インドには25%、ベトナムには20%を課し、これらの国々を中税率帯に分類した。

カナダ製品に対しては35%の関税が課せられており、その根拠の一つとしてフェンタニルの密輸問題が挙げられた。

トランプ政権は、今回の税率設定について、各国との貿易不均衡や国家安全保障への影響、また両国間の協力姿勢を反映したものであり、将来的には二国間交渉に応じて、調整の可能性があると説明した。

メキシコに対し90日間の交渉猶予 25%は現状維持

7月31日、トランプ大統領は、メキシコ大統領クラウディア・シェインバウム氏との電話会談を実施し、メキシコに対して90日間の交渉期間を与えることを決定した。それに伴い、現行の25%関税は一時的に据え置くと発表した。先にトランプ大統領は、メキシコに対する関税を30%に引き上げる意向を示した。

シェインバウム大統領は会談後にSNSで声明を出し、「予定されていた税率引き上げを回避し、対話によって長期的な合意を目指す」と表明した。

トランプ大統領は会談について「非常に成果のあるものだった」と評価し、両国首脳間の相互理解が深まったことを強調した。このように「関税を交渉カードとして用いる」戦術は過去にも複数回採用されてきた。

新税率は8月7日発効 半年ごとに見直しへ

新しい関税は、8月7日午前0時1分から発効し、「米国関税率表(HTSUS)」に正式に組み込まれ、命令書では、商務省および米国通商代表部(USTR)が導入後の運用状況を監視し、6か月ごとに必要な追加措置や調整案を大統領に報告するよう定めた。報復措置や非協力的な対応が発生した場合にも柔軟に対応する方針である。

アメリカは、将来の交渉結果に基づいて、関税率を見直す権限を保持した。

各国関税一覧

◎高税率地域(30%以上)スイスなど

シリア:41%
ミャンマー:40%
ラオス:40%
スイス:39%
イラク:35%
セルビア:35%
アルジェリア:30%
ボスニア・ヘルツェゴビナ:30%
リビア:30%
南アフリカ:30%

◎中税率地域(15%~29%)台湾など

インド:25%
カザフスタン:25%
チュニジア:25%
ブルネイ:25%
モルドバ:25%
バングラデシュ:20%
スリランカ:20%
台湾:20%
ベトナム:20%
マレーシア:19%
インドネシア:19%
パキスタン:19%
フィリピン:19%
カンボジア:19%
ニカラグア:18%

◎低税率地域(10%~15%)日本など

アフガニスタン 15%
アンゴラ 15%
ボリビア 15%
ボツワナ 15%
カメルーン 15%
チャド 15%
コスタリカ 15%
コートジボワール 15%
コンゴ民主共和国 15%
エクアドル 15%
赤道ギニア 15%
フィジー 15%
ガーナ 15%
ガイアナ 15%
アイスランド 15%
イスラエル 15%
日本 15%
ヨルダン 15%
レソト 15%
リヒテンシュタイン 15%
マダガスカル 15%
マラウイ 15%
モーリシャス 15%
モザンビーク 15%
ナミビア 15%
ナウル 15%
ニュージーランド 15%
ナイジェリア 15%
北マケドニア 15%
ノルウェー 15%
パプアニューギニア 15%
トリニダード・トバゴ 15%
トルコ 15%
ウガンダ 15%
バヌアツ 15%
ベネズエラ 15%
ザンビア 15%
ジンバブエ 15%
イギリス 10%
ブラジル 10%
フォークランド諸島 10%

◎欧州連合特例

・従来関税が15%未満のEU製品:15%に引き上げ
・従来関税が15%以上のEU製品:追加課税なし

 

陳霆