中国・北京市の裁判所は、アステラス製薬に勤務する60代の日本人男性社員に対し、スパイ活動の罪で懲役3年6か月の実刑判決を言い渡し、男性は28日の控訴期限までに控訴せず、判決が確定した。この男性は2023年3月、勤務任期を終え帰国のために北京空港に向かう途中、中国当局に拘束されていた。
判決内容によると、男性は日本の情報機関の依頼を受けて中国に関する情報を提供し、報酬を得ていたとされる。裁判では罪を認めたことから判決を下した。中国の裁判は二審制だが、男性が控訴を行わなかったため一審判決がそのまま確定となる。日本大使館によれば、未決勾留期間も刑期に含まれ、男性は服役することになった。
この問題は日中間の懸案事項のひとつとなっており、日本政府は引き続き拘束された邦人の早期釈放を中国政府に申し入れている。判決確定を受け、駐中国日本大使館は「拘束中の邦人の早期釈放を強く求めるとともに、今後とも邦人保護の観点からできる限りの支援を行っていく」としている。
一方、産経新聞によると関西経済連合会の松本正義会長(住友電気工業会長)は28日の記者会見で、本件について「本当にスパイ行為をしたのかどうか私には分からない」と述べる一方、「外国のルールを守るべきであり、『郷に入っては郷に従え』だ」と発言した。
中国における反スパイ法は2014年に施行されているが、適用範囲は明記されておらず、撤退を検討する企業の割合も増えている。同法施行後、アステラス製薬の男性を含め複数の日本人が拘束・有罪判決を受けている。
有罪判決を受けても具体的な内容など詳細については明らかにされていない部分が多い。
日本政府は今後も外交ルートを通じて拘束者の早期釈放を求める考えを示しているが、中国側は自国法に基づく厳格な対応を続ける姿勢を崩していない。
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