令和7年7月8日、厚生労働省で福岡資麿大臣による定例記者会見が行われた。この会見では、新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆるコロナ後遺症)や、ワクチン接種後の副反応、さらに帯状疱疹の増加とその帯状疱疹ワクチン定期接種化に関する質疑が交わされた。
記者からは、コロナ後遺症や帯状疱疹の症例が増加する中で、それらの多くが新型コロナワクチンの副反応である可能性を否定できないとの指摘があった。また、高知大学医学部皮膚科学講座の佐野栄紀特任教授らの研究チームが2024年4月に発表した論文についても言及があった。この論文は、mRNAワクチン由来のスパイクタンパク質が長期にわたり皮膚障害に関与する可能性を示唆し、成人水痘や帯状疱疹などの皮膚病変から検出されるスパイクタンパク質が、コロナウイルス由来かワクチン由来かを区別できる技術について報告している。
佐野教授らの研究によれば、mRNAワクチン由来のスパイクタンパク質はウイルス核タンパク質を含まず、免疫組織学的染色によって判別可能であるとされている。実際、ワクチン接種後に皮膚症状が長期にわたり続いた患者の皮膚組織から、スパイクタンパク質が検出された例も報告されている。この発見は、コロナ後遺症とワクチン副反応を科学的に区別する新たな手段となる可能性がある。
これに対し福岡大臣は、個別の論文についての具体的な評価は控えるとしつつも、今回指摘された論文については、スパイクタンパク質が皮膚障害の原因であるかどうかは更なる検討が必要であるとの著者の見解も踏まえていると述べた。その上で、スパイクタンパク質の残存と副反応の可能性を示唆する知見については、ワクチンの安全性評価の観点から、今回の論文も含めて多様な知見を収集し、重大な疾病の発生の有無にかかわらず専門家の意見を聞いた上で検討を進める方針を示した。
また、コロナ後遺症とワクチン後遺症を見分ける技術が確立すれば、より正確な治療につながるとの記者の問いに対しても、福岡大臣は「様々な論文が出ている状況であり、専門家の意見を伺った上で検討を進める」と繰り返し、今後も科学的知見の収集と評価を続ける考えを明らかにした。
なお、現時点でコロナ後遺症とワクチン副反応を完全に区別する技術は確立されていない。佐野教授らの研究も、スパイクタンパク質の検出が皮膚障害の直接的な原因であるかは今後の研究課題としている。一方、国内外の規制当局や専門家によると、ワクチン接種後の副反応や長期的な健康影響については継続的な監視と評価が行われており、現時点でワクチンがコロナ後遺症の主因であるとの科学的根拠は示されていない。
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