都市の喧騒とストレスに疲れた若者たちが、週末になると鍬(くわ)を手に畑へ向かった──中国・上海郊市外で今、土地を借りて野菜を育てる「レンタル菜園」が静かなブームだ。
目的は食料確保ではなく、癒やしと自己回復で、その背景には、都市生活に対する根深い倦怠感があるという。
化学系企業に勤める32歳の小周(しょう・しゅう)さんは、上海市郊外にある100㎡の畑を年間約2千元(約4万円)で借り、ナスやキュウリ、スイカなどを育てている。週に何度も畑に通い、成長した野菜を収穫する生活は、いまや彼の日常の癒やしだという。「たくさん収穫して自分では食べきれない」という贅沢なお悩みをお持ちのようだが、耕しの日常をSNSでシェアする彼は満面の笑みだ。
27歳のエンジニア・小梁(しょう・りょう)さんは、家族と共に「地主生活」を満喫中。娘の名前を冠した60㎡の畑(年額6千元/約12万円)で汗を流す週末は、自然とのふれあいと親子の絆を深める貴重な時間だという。農場では他の利用者たちとの交流も楽しみ、「自分の畑で採れた野菜を誰かに分けるのもまた喜び」と語る。
ただし、この“癒やし農園”が万人向けというわけではない。地代に加え、種や肥料、交通費、さらには代行の管理費も発生する。実際、安くない年会費や各種コストを前に「ちょっと高いので、続けられるかわからない」と躊躇する声も聞かれた。
とくに、農業経験のない都市住民にとっては、体力的にきついため、「長続きしにくい趣味」との指摘もある。「市場として、大きく成長することは難しい」と一部専門家は分析する。
それでも、金銭的な合理性ではなく「心の価値」を求めて、畑を耕す若者たちがいる。週末に土と触れ合い、手を動かし、静けさの中で自分を取り戻す──その姿は、現代の「豊かさ」とは何かを、静かに問いかけた。
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