世界中で血液不足が深刻化するなか、献血を推進する国際的な取り組みが強まっている。
特に世界保健機関(WHO)が定めた「世界献血者デー」に合わせて、献血の重要性を訴えるキャンペーンが展開されており、毎年6月14日は世界保健機関(WHO)が定める「世界献血者デー」となっている。
各国で「自発的かつ無償の献血」が呼びかけられるなか、中国共産党政府も保健衛生当局(国家衛生健康委員会)が国民に献血協力を要請した。
だが、その呼びかけが思わぬ波紋を広げた。「血を提供しても使わせてもらえない」「吸われるだけの制度」と、ネット上では怒りと揶揄が噴出したのだ。
SNSでは「吸血ヒル国家」「献血はタダ、輸血は高額」「献血はしても、使うときは拒否される」など、過去の献血者たちによる告発が相次いだ。
中には「以前は進んで献血していたが、家族の手術の際に血液がないと言われて断られた。それ以来、献血証は破り捨てた」と証言する市民も相次いだ。

こうした国民の不満の根底には、「献血しても実際にカンタンには使わせてくれない」という現実がある。
実際、2024年には山東省の男性が過去十数年にわたって13回・計4.9リットルの献血実績がありながら、同じ県内の別地域の病院で、手術を受ける妻のために血液を要請したところ、断られた。
また過去に献血した証明があっても、「その場で新たに誰かに献血させなければ輸血できない」という実態も相次いで告発された。
このような献血民ががっかりする事例が絶えないなか、制度の形骸化と運用の不透明さに対し、中国国内では「献血証は無意味」との声が広がった。
献血は「善意」で成り立つ公共の営み──日本でも血液確保は重要な課題だが、そこに「信頼」がなければ人は動かない。
結局、中国では血液が足りないだけでない。国家と市民の間に流れる「信頼」もまたひどく足りないのだ。
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