米ホワイトハウスのケビン・ハセット国家経済会議(NEC)委員長は4月6日、アメリカが4月上旬に発表した大規模な関税措置に関し、50か国以上が協議の開始を申し入れていることを明らかにした。これらの国々は、関税の対象や影響について調整を図ることを目的としているという。
ハセット氏は同日放送のABCニュース番組で、「50か国以上が新たな関税措置について、大統領との交渉を求めて接触してきている」と述べ、「自国が負担する関税の大きさを理解しているからだ」と説明した。
どの国が協議に入ったかは明かされていないが、トランプ前大統領は4月4日、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」にて、ベトナムの最高指導者がアメリカへの関税を完全に撤廃する方針を伝えてきたと投稿している。
トランプ氏は4月2日、すべての貿易相手国に対し最低10%の関税を課す方針を発表。さらに、およそ60か国に対しては、アメリカが受けている関税水準の半分に相当するより高い税率を課すとしている。これらの措置は4月9日から発効予定だ。
なお、カナダとメキシコはすでに発表済みの25%の関税が適用されているため、今回の新たな関税措置の対象からは除外された。これらの関税は、不法移民やフェンタニルの密輸対策として導入されたもの。
タイのセーター首相は4月3日、アメリカとの関税協議に前向きな姿勢を示し、「アメリカとの貿易のバランスを公平にするため、できるだけ早期に協議を行いたい」と述べた。また、タイはサプライチェーンを信頼できる友好国にシフトする「フレンド・ショアリング」政策の一環として、アメリカのパートナー国になる用意があるとした。
英国のキア・スターマー首相も同日、アメリカによる英国への関税が10%にとどまったことに触れ、「他国に比べれば有利な立場にある」とし、「冷静かつ落ち着いて対応する」と記者団に語った。
台湾の頼清徳総統は4月6日、アメリカとの交渉において「ゼロ関税」を出発点とする用意があると表明。報復措置ではなく、貿易障壁の撤廃とアメリカへの投資拡大によって協力関係を強化すると述べた。
またハセット氏は同番組内で、「雇用統計が非常に好調であり、関税政策がアメリカの雇用創出に寄与している可能性がある」と指摘。「市場予想を50%上回る内容だった。これで2か月連続の好結果だ」と述べた。
さらに、トランプ政権の発足以降、自動車産業で約1万人の新規雇用が生まれたとした上で、「一部の工場では夜間シフトを追加するなど、生産体制を強化しているとの情報もある」と明かした。
関税による消費者への影響については、「供給と需要のバランスにより、輸出企業が価格を下げる可能性が高く、消費者への打撃は限定的だ」との見方を示した。
また、「もし本当に消費者がすべての負担をしているのなら、なぜ各国がここまで強く反発するのか説明がつかない」と述べ、各国の動きこそが関税の実質的効果を示していると主張した。
ハセット氏はさらに、中国が2000年にWTOに加盟して以降の15年間で、アメリカの実質所得が累計約1200ドル減少したことに触れ、「安価な輸入品がアメリカ人の生活を豊かにするという考えは現実に反していた」と指摘した。
「物価が下がった分以上に賃金が下がり、結果として実質所得は減少した」として、トランプ政権の強硬な関税政策の根拠を説明した。
今回の関税発表を受けて、アメリカ株式市場は大幅に下落。4月3日と4日の2日間で、ダウ平均は合計約4000ドル下落。ナスダック総合指数は5.82%、S&P500は5.97%と、それぞれ大きく値を下げた。
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