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オバマケア税額控除に大規模不正 巨額損失指摘 =米政府監査院

2025/12/05
更新: 2025/12/05

患者保護並びに医療費負担適正化法(Patient Protection and Affordable Care Act、PPACA:通称オバマケア)に関する分析により、米国納税者に数十億ドル規模の損失を与えている可能性のある大規模な詐欺が明らかになったと、政府監査院(Government Accountability Office、GAO)が12月3日に公表した報告書で述べた。

この制度では、連邦政府がオバマケア加入者のために、保険会社へ毎月の保険料を補助する「前払い保険料税額控除(APTC)」を支払っている。2024年のプラン年度では、前払い保険料税額控除の総額は約1,240億ドルに達し、これはおよそ1,950万人分の加入者に対して支払われた計算になる。

GAOの報告書は、本人なりすましを含む社会保障番号(SSN)の不正利用事例を特定した。

GAOの分析では、2023年のプラン年度に、政府からの保険料補助(前払い保険料税額控除=APTC)を受けながら、365日を超える適用日数が記録されたSSNが2万9,000件以上確認された。つまり、1つのSSNを複数の加入者が使っていた疑いがあるということである。

報告書によれば、2023年に最も悪用されたSSNは、125件以上の保険契約に使われ、合計で2万6,000日分(71年以上)分の補助付きの保険適用を受けていた。

2024年のプラン年度では、GAOは366日を超える保険適用のあるSSNを約6万6,000件特定した。

GAOは「この過剰使用は、本人なりすましや合成ID詐欺、さらにはデータ入力ミスによって発生し得る」と述べている。

報告書はまた、死亡した人物のSSNが利益取得に使われていた事実も明らかにした。

2023年のプラン年度では、APTCを受け取っていたSSNのうち5万8,000件以上が社会保障局の死亡データと一致した。

GAOはこのうち2万6,000件を分析し、メディケア・メディケイドサービスセンター(CMS)が9,400万ドル以上のAPTCを支払っていたと推計した。

12月3日の声明で、下院歳入委員会はGAOの調査について、「偽の身元情報、不正SSN、死亡者のSSNを使ってオバマケア補助金を取得できる大規模で体系的な欠陥」を示していると指摘した。

これは、本来なら補助を受けられない人にまで税金が支払われる無駄を生むだけでなく、一般の利用者にも思わぬ負担を強いる結果になる。医療機関へのアクセスが難しくなったり、自己負担額が高くなったりする原因にもなると指摘した。

声明はまた、2023年には税額調整の証拠がないまま、210億ドルの補助金が支払われており、識別可能なSSN保有者のために支払われたAPTC全体の3分の1に相当すると強調した。

下院歳入委員長のジェイソン・スミス議員(共和党・ミズーリ州)は、「GAOの報告書は、民主党の政策に守られた欠陥だらけの制度が、身元詐欺を通じて数百億ドルもの税金を保険会社に流し、その結果として国民の医療費を押し上げていることを示す決定的な証拠だ」と述べた。

「詐欺のせいで患者は診療拒否や治療遅延、費用増大に直面している。無駄な制度を放置せず、これ以上の被害を防ぐ行動が必要だ」とも述べた。

 

詐欺リスク

GAOは、加入時の審査が詐欺リスクにどれほど対処できているかについても検証した。調査員は20件の架空の身元を作成し、連邦マーケットプレイスを通じて個人向け医療保険の偽の申請を提出した。

GAOは、このうち4件の架空身元で2024年10月に申請を行った。

報告書によれば、「連邦マーケットプレイスは、架空の4名全員に対し、2024年11月〜12月の完全補助付き保険を承認した。4名分のAPTC支払額は月額合計2,350ドル程度であった」という。

分析では、連邦マーケットプレイスにおける身元確認の抜け穴が確認された。

4件のうち2件はHealthCare.gov経由だった。両申請は最初のオンライン本人確認で失敗したものの、架空の身分証明書提出後、審査を通過した。

残り2件は保険代理人による提出で、GAOが提供した無効なSSNにもかかわらず、連邦マーケットプレイスのコールセンターを通じて申請が通ったと報告書は述べている。

GAOはまた、2025年プラン年度に向け、20件すべての架空身元で保険加入申請を行った。マーケットプレイスは当初19件を承認し、2025年9月時点で18件が有効なまま残っていた。

報告書は「これら18件の加入者に対して保険会社に支払われたAPTCは、月額合計1万ドルを超えている」と指摘した。

「これら架空の加入者は全加入者に一般化できるものではないが、加入審査の弱点を示唆するものである」と報告は述べた。

 

直接給付

GAO報告書は、民主党が12月末に失効する強化版のオバマケア税額控除の延長を推し進める中で公表された。

ハキーム・ジェフリーズ下院民主党院内総務(ニューヨーク州)は12月1日の記者会見で、「連邦議会が動かなければ、数千万人の米国民が医療費の劇的な増加に直面する」と述べ、民主党は3年間の補助延長を支持しているとした。

同日、ジェフリーズ氏は連邦議会議員に宛てた別の書簡の中で、共和党が「医療保険制度改革法の税額控除の延長」を拒否したことで医療危機が迫っていると批判した。

トランプ大統領は11月8日のトゥルース・ソーシャルへの投稿で、保険会社を補助する代わりに、低所得・中所得の米国民に直接2,000ドルを給付する案に言及した。これにより国民が自分で保険を選べるようになると述べた。

投稿では「保険会社への補助をやめて国民に直接支給すれば、オバマケアは次第に立ちゆかなくなり、いずれ消滅させられる」と述べている。

11月14日、記者団に対しトランプ氏は、ホワイトハウスがこの案について議員と協議しており、「一部の民主党議員とも個人的に話した」と述べた。

英語大紀元記者。担当は経済と国際。