新型コロナウイルスの流行に伴い、イベルメクチンとヒドロキシクロロキンの処方がパンデミック前の水準を大幅に上回ったことが、最新の研究で明らかになった。
米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)などの研究チームが2月20日に発表したニュースリリースによると、コロナの流行中にイベルメクチンとヒドロキシクロロキンの処方が大幅に増加し、処方件数は約300万件に達し、総額2億7200万ドル(約408億円)に上ったことが明らかになった。
研究によると「米国の薬局におけるイベルメクチンの調剤はパンデミック前より1000パーセント(10倍)近く増加した」という。
この研究は医学誌 Health Affairs に掲載された。特に65歳以上の高齢者の使用率は、18〜64歳の成人と比べて3倍高かったという。
処方の推移
- ヒドロキシクロロキンの処方は2020年3月に急増し、パンデミック前の133%に達した。
- 研究者らは、イベルメクチンの使用が2020年から2021年にかけて劇的に増加したと指摘した。2021年8月にはパンデミック前の10倍以上に。
- その後、ファイザーの「パクスロビド」などのコロナ専用治療薬の普及に伴い、両薬の処方は93%減少した。この減少は2022年3月1日から2023年6月30日の間に起きたと研究者らは指摘した。
さらに研究では、イベルメクチンの使用率が経済的に困難な地域で高く、特にアメリカ南部で顕著だったことも明らかになった。しかし、研究チームは、コロナ治療薬の入手困難さだけでは、これらの地域差を十分に説明できないと指摘している。
政策とFDAの対応
本研究の責任著者であるUCLAのジョン・マフィ氏は「科学機関への不信感や誤情報の広がりに対処するため、政策改革が急務」と述べた。具体的には「政府による業界の不当な影響を排除し、科学的不確実性に関する透明性を高め、新薬の臨床試験に公的資金を確保することが必要」だと指摘した。
アメリカ食品医薬品局(FDA)は、イベルメクチンをコロナ治療薬として承認しておらず、使用を推奨していない。また、FDAには動物用イベルメクチンを服用した事例が複数報告されていると明かした。寄生虫薬として承認されるイベルメクチンがコロナに有効であることを示唆する証拠は受け取っていないと述べた。
しかし、一部の研究では、イベルメクチンがコロナの治療において一定の効果を示し、死亡率の「大幅な減少」につながったとする結果が報告されている。
ヒドロキシクロロキンについても、FDAは2020年に緊急使用許可を撤回し、病院や臨床試験以外での使用を推奨しないと警告を発した。
科学的な見解の相違
FDAは両薬の使用を推奨していないものの、一部の研究ではイベルメクチンやヒドロキシクロロキンのCOVID-19に対する有効性を示唆する結果も報告されている。例えば、ある研究では「イベルメクチンの服用によりCOVID-19による死亡率が大幅に低下した」とする結果が示された。
2020年半ばに発表された研究の中には、ヒドロキシクロロキンが米国の死亡率を低下させたとするものもある。また、初期の調査ではその有効性を評価する結果が示されていた。
研究の概要と資金提供
UCLAの研究チームは、コロナウイルスの流行初期3年間における処方件数と医療費を分析した。対象は、全米の8100万人の保険加入者に及ぶ。この研究は、コモンウェルス財団および米国立衛生研究所(NIH)からの資金提供を受けている。
この研究結果は、ロバート・F・ケネディ・ジュニア氏が米厚生長官に就任した直後に発表された。
ケネディ氏は以前、FDAはイベルメクチンなどの「多くの低価格」医薬品やジェネリック医薬品に対して偏見を持っていると批判し、製薬企業がFDAの意思決定に影響を及ぼしている可能性を指摘していた。
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