バイデン大統領は11月28日、記者団に対し、トランプ次期大統領がカナダとメキシコに対する関税を課す計画について、「考え直してほしい。逆効果だと思う」と述べた。関税が両国とアメリカの関係を損なう可能性があるとしている。
28日にナンタケットの消防署を訪問した際、バイデン氏は地政学的な観点からも、トランプ氏がカナダとメキシコへの関税を見直すべきだと強調した。
「アメリカは太平洋、大西洋、そしてメキシコとカナダという2つの同盟国に囲まれている特異な地理的状況にある。こうした関係を壊すことは避けるべきだ。現在の関係は良好だと考えている」。
また、不法移民の問題について「やるべきことはまだ多い」としながらも、最近数か月で国境の安全状況が改善し、不法越境者の数が「「トランプ政権時代と比べて大幅に減った」と述べた。
一方、トランプ次期大統領は25日、就任直後にカナダとメキシコからのすべての輸入品に25%の関税を課す大統領令を発令する意向を表明した。
同氏は、両国がアメリカへのフェンタニルや不法移民の流入を防ぐために十分な措置を講じていないと非難。また、中国にも追加関税を課す計画を明らかにし、中国が中国製フェンタニルの密輸を阻止するという約束を破ったと批判した。
これに対し、中国、カナダ、メキシコの当局者は、トランプ氏の提案した関税が経済に悪影響を及ぼす可能性があると警告した。
カナダの公共安全大臣は、国境警備を強化し、越境する麻薬密輸への取り締まりを一層強化することを約束した。
トランプ氏はメキシコ大統領が南の国境への不法移民の流入を阻止すると約束したと述べた。ワシントンの中国大使館の報道官はBBCに対し、中国がフェンタニルをアメリカに流入させることを意図的に容認している事実はないと否定した。
アメリカ税関・国境警備局の最新データによると、不法越境者の摘発件数は2024年9月に14万4666件となり、これはトランプ政権下で最多だった2019年5月の14万4116件に近い数字だ。
しかし、年間統計では、バイデン政権下での取り締まり件数は約1080万件に達し、トランプ政権下の約300万件を大きく上回っている。この数字には、摘発を免れた「逃亡者」の数は含まれておらず、一部の推計では、過去4年間にアメリカに不法入国した移民の総数が2千万人を超える可能性がある。
トランプ氏は1期目の任期中、関税を交渉戦術として活用し、アメリカに不利益をもたらすと感じた貿易協定の再交渉を迫った。2018年には中国に対して関税を課し、2020年に一部関税の引き下げと引き換えに、中国がアメリカ製品の購入を増やすという貿易協定を締結した。
また、2018年、カナダとメキシコに対しては、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を促すために鉄鋼とアルミニウムに関税を課した。2019年の米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)締結後に、その関税を撤廃した。
現在、トランプ氏の最近の関税脅かしは、アメリカへの不法移民や致死性の薬物の流入を阻止するなど同氏の政策目標に沿った行動を各国に促すための交渉戦術だと見られている
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