トランプ次期大統領が米大統領選で勝利したことで、トランプ氏に対する複数の刑事訴訟に大きな影響が及ぶことは必至。連邦レベルの訴訟は停止または打ち切りとなる可能性が高い一方、州レベルの訴訟は継続される可能性もある。
米連邦議会襲撃事件と機密文書持ち出し事件についての訴訟を担当するジャック・スミス特別検察官について、トランプ氏は以前から自身が大統領に就任したら、「2秒で解任する」と発言している。大統領は司法省トップに命じて特別検察官を解任できる権限を有している。
無論、特別検察官の解任は、司法の独立性に対する干渉と見なされ、議会および野党からの反発を招く恐れもある。
米国の保守系シンクタンク「ヘリテージ財団」のジョン・マルコム副会長は、エポックタイムズに「彼らはすでに起訴状の却下に向けて動いている」「彼らにできることは、三権分立を根拠に起訴状の却下を補填することだけだろう」と語った。
米司法省は、現職大統領の起訴は憲法上の権限を侵害し、行政機能を妨げる可能性があるとして、現職大統領を刑事訴追しないという長年の方針を示している。
オバマ政権時の司法省に勤務していたネアマ・ラフマニ元連邦検察官は、スミス氏は自ら訴えを取り下げるべきだとエポックタイムズに語った。トランプ氏は来年1月の大統領就任式まで、公判前のすべての手続きの停止を要求することも可能だという。
フロリダ州にあるトランプ氏の邸宅「マール・ア・ラーゴ」に機密文書を持ち込んだ件では、フロリダ州連邦地裁のアイリーン・キャノン判事が今夏、スミス特別検察官の任命について、議会が明確な権限を与えておらず違憲だとして、スミス氏によるトランプ氏の訴追を棄却した。
キャノン判事は、トランプ第一次政権のときに指名された。
キャノン判事のほかにも、最高裁の保守派判事クラレンス・トーマス氏も、在任中に行った公的行為について刑事訴追の免責をトランプ氏は享受できると述べている。
トランプ氏は、この2つの意見を引用して、首都ワシントンの連邦地裁で訴訟を指揮するタニヤ・チュトカン判事に米連邦議会襲撃事件の訴訟を却下するよう求めている。
米連邦議会襲撃事件と機密文書持ち出し事件の訴訟が打ち切りになる可能性は非常に高い。
ラフマニ元連邦検察官は、エポックタイムズに対し「キャノン判事は大統領免責に基づき、いずれにせよこの訴訟を却下できる」と語った。
米連邦議会襲撃事件の訴訟と同様、フロリダの機密文書事件も、スミス氏が現在キャノン判事の判決に対する上訴を求めている第11巡回区連邦控訴裁判所から棄却される可能性が高い。
「特別弁護士ではなく、特別検察官のスミス氏は司法省の規則に従わなければならない。トランプ氏に対する訴訟を続けたくても続けられない」とマルコム氏は述べた。
不倫口止め料をめぐる訴訟
ニューヨーク州地裁の陪審は5月末、トランプ氏に対し、業務記録改ざんの34件の罪状すべてで有罪評決を下した。34の罪状は軽微な重罪に分類されたにもかかわらず、懲役刑の可能性がある。この件について、「ヘリテージ財団」のマルコム副会長らが控訴審で逆転する可能性があると推測し、激しい法的精査に直面した。
裁判を指揮していたニューヨーク州最高裁のファン・メルチャン判事は、大統領選挙への影響を避けるため、当初の9月18日に予定されていた量刑の言い渡しを11月26日に延期する決定を下していたが、今後さらに延長させる可能性がある。
メルシャン判事は、大統領免責をめぐるトランプ氏の主張について、まだ裁定を下していない。判決は近日中に出される予定だ。
9月、メルチャン判事はポルノ女優のストーミー・ダニエルズさんへの支払いは「行政権の範囲外の私的、非公式な行為であった 」と考えていると述べた。
専門家は以前、エポックタイムズに対し、憲法の優越条項によりトランプ氏が在職中に服役することはできないだろうとの認識を示している。
トランプ氏の裁判結果を左右するのが、憲法に規定されている最高法規条項だ。
マルコム氏は6日、エポック・タイムズに「最高法規条項は、州が大統領の職務遂行能力を妨げることはできないと明言しており、……大統領は刑務所から国を運営するために必要なことをすることはできない」と語った。
最高法規条項とは、アメリカ合衆国憲法第6条第2項に規定されている条項で、連邦法が州法よりも優位であることを定めている。
「シークレットサービスは刑務所での彼の安全を保証することはできないだろうから、たとえ有罪判決が支持されたとしても、彼は刑務所の独房の中を見ることはない」
一方、ラフマニ氏は最高法規条項がそのような法的効力を持つかどうかについて疑問視し、「我々は未知の法的領域にいる 」と指摘しつつ、ラフマニ氏はトランプ氏に犯罪歴がないことを考えれば、トランプ氏に罰金を科される可能性が高いが、実刑判決を下すことは「適切ではない」と述べた。
12日、ニューヨーク州の裁判所は大統領選で勝利したトランプ次期大統領に有罪評決が出ている不倫口止め料を巡る会計不正処理事件について、裁判手続きを今月19日まで停止すると決定した。
ジョージア州選挙介入に関する訴訟
トランプ氏と同様、米南部ジョージア州で同氏を起訴した検察官も今月再選を果たした。フルトン郡のファニ・ウィリス地区検事がトランプ氏に対する訴追を継続できる可能性は低い。
この訴訟の審理は12月初旬に予定されており、ジョージア州最高裁に提出される可能性もある。しかし、ジョージア州でトランプ氏を追及し続けることは、米憲法と抵触する可能性がある。
マルコム氏は、最高法規条項がウィリス検事による訴追継続の試みを遮断する可能性が高いとしながらも、州検察が米大統領に対して訴追を継続するという問題は 「前代未聞の問題 」だと述べ、訴追の難しさを指摘した。
一方、ジョージア州の刑事弁護人キース・ジョンソン氏はエポックタイムズに「州検察官が現職大統領を起訴することを妨げるものは何もない」と語った。
マルコム氏は、時効が成立しなくても、この事件が「保留」されたり、停滞したりする可能性があることを指摘し、トランプ氏が2期目の任期を終えた後も訴追が継続される可能性を残した。
「もし彼女が起訴を棄却し、時効が成立した後に再び彼を起訴しようとしたら、彼女は運が悪かったことになる」「しかし、もし彼が時効内に起訴され、その事件が基本的に凍結されるのであれば、時効の問題は生じない」と説明した。
トランプ氏に対する訴追継続を国民がどれだけ支持するかも疑問だ。
ラフマニ氏は「トランプが圧勝したことで、国民はトランプが公職にふさわしくない重罪人であることを説得されなかったと私は考えている」と語った。
マルコム氏は、今回の米大統領選について「トランプ氏に対する訴追に対する一種の国民投票と見ている」「多くの人々が、トランプは政治的に訴追されたのだと感じたと思う」と述べた。
トランプ氏に批判的なウィリアム・バー元司法長官も同様に、検察はトランプ氏に対する訴追を取り下げるべきだと述べた。バー氏はトランプ第一次政権時代に司法長官を務めた人物だ。
バー氏は米報道局FOXニュースに「米国民はトランプ氏に評決を下し、今後4年間の国のリーダーに彼を選んだ」「ガーランド司法長官と州検察は、国民の決定を尊重し、トランプ氏に対する訴えを今すぐ却下すべきだと思う」と語った。
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