2019年以降、新しい銅鉱山に対して行われた550億ドルの投資のうち、半分は中国によるものだとウッド・マッケンジー社は報告している。さらに、中国は精錬や製造業への投資にも力を入れている。
ウッド・マッケンジー社によると、再生可能エネルギー向けの原材料の精錬と製造において、中国の投資は世界全体の97%を占めている。風力タービンやソーラーパネル、EV部品の製造に対する中国の投資は、世界総額の80%に達した。
国際エネルギー機関IEAによると、これらの鉱物のエネルギー部門での使用は2010年代半ばまではわずかだったが、再生可能エネルギーへの移行が加速する中、エネルギー生産は鉱物需要の最大の成長源となった。
IEAは今後20年間で、エネルギー産業は世界の銅や希土類元素の需要の40%以上、ニッケルやコバルトの需要の60~70%、リチウムの需要のほぼ90%を占めると予測している。EVと蓄電システムはすでにリチウムの最大の消費源となっている。また、2040年までにはステンレス鋼を上回り、ニッケルの最大の消費先になると見込まれている。
アメリカの再生可能エネルギー擁護の団体「アメリカン・クリーン・パワー(ACP)」が2024年5月に発表した分析によると、2024年の第1四半期には、アメリカの電力会社が太陽光発電、風力発電、および蓄電容量を合わせて5585メガワット(MW)増強し、前年同期比で28%増加したという。
同報告書では、「大規模な太陽光発電が100ギガワット(GW)の設置容量を超え、連邦海域で最初の洋上風力発電プロジェクトが132MWのクリーンで信頼性の高い電力を送電網に供給し始めた」と述べられている。
アメリカ、鉱業の助成と制約の狭間に立つ
IEAの報告によると、2023年、アメリカは化石燃料に投資する1ドルごとに、代替の「クリーン」エネルギーに1.40ドルを投資した。それでもなお、アメリカが鉱物資源に基づくエネルギーで自給自足を達成できるかという点については、多くの批判がある。特に、新たな鉱山開発や精錬所の建設に対する政治的な障壁は大きな課題としている。
「鉱物資源に頼るエネルギーへの移行は、地質的に不可能ではないが、政治的には不可能だ」と、エネルギー研究所(IER)のダン・キッシュ副社長は述べている。
全米鉱業協会(NMA)によると、環境への配慮のため、連邦政府所有の公有地の半分以上で新規の採掘作業が制限または禁止されている。特に、西部の一部の州では、土地の86%が連邦政府によって所有されており、これらの州はアメリカの金属生産の75%を占めている。ここには、銅、亜鉛、希土類などの主要な鉱物資源が含まれている。
6月、NMAはバイデン政権がアラスカの2800万エーカーにおける鉱山開発と掘削を禁止し、鉱山開発サイトへのアクセスを提供する「アンブラー・ロード・プロジェクト」をブロックしたことを批判した。このプロジェクトは既に必要な全ての承認を得ていた。
NMAのリッチ・ノーラン会長兼CEOは声明で、「(バイデン)政権が、重要な鉱物資源のサプライチェーンを確保するために必要なアメリカの資源へのアクセスを阻む一方で、海外のプロジェクトに投資していることは矛盾している」と述べた。
また、専門家たちは、中国以外で新たな精錬・製造インフラが建設される可能性は低いと指摘している。
ウッド・マッケンジーの報告によれば、低コストで大規模な中国の精錬・製造施設に対抗することは、西側企業にとって利用率の低さや運営コストの高さが課題となり、競争は厳しいという。
「すでに過剰供給の市場において、中国以外で助成を受けた新たな製造能力を構築する投資価値は低く、企業はコスト競争に陥ることを避けようとしている」と報告書は指摘している。
これらの要因は、アメリカ内の鉱物生産を支援する政府の取り組みに対して逆風となる可能性がある。2022年、エネルギー省(DOE)は、希土類元素や重要鉱物の採掘・精錬を支援するため、インフラ法に基づいて1億4千万ドルのプログラムを発表した。このプロジェクトは、廃棄物など既存の材料のリサイクルに焦点を当てる予定である。
リサイクルは、再生可能エネルギー向けの重要な供給を提供する手段として期待されている。テキサス州に拠点を置く、EDP Renewables社は、ソーラーパネルが寿命を迎える30年後には、その95%の部品がリサイクル可能であると主張している。また、「風力タービンの80~94%(重量比)は、鉄鋼や銅、アルミニウム、鉄など、リサイクルが容易な材料で構成されている」という。
また、アメリカは現在スクラップ銅の純輸出国であるが、ジョージア州に建設された新しい製錬施設では、このスクラップが国内向けに処理される予定だとウッド・マッケンジーの報告書は伝えている。
再生可能エネルギーへの移行 「進行していない」
アメリカのエネルギーや輸送システムを鉱物資源ベースに移行するための多くの取り組みにもかかわらず、批判者は「再生可能エネルギーへの移行は実際には進行していない」と指摘している。
エネルギーアナリストのマーク・ミルズ氏は、「アメリカと世界の電力網に風力や太陽光発電が追加されている一方で、化石燃料の消費も同時に増加している」と述べている。「移行というストーリーは、一方がもう一方を置き換えるという考えに基づいているが、それは現実には起きていない」と強調した。
エネルギー研究所(EI)、KPMG、カーニー社が共同執筆した2024年世界エネルギー統計レビューによると、世界の石油消費量は減速するどころか、2023年に1億バレルを超えて過去最高を記録し、石炭需要は2年連続で過去最高レベルに達した。
さらに、中国は再生可能エネルギーへの多額の投資にもかかわらず、決して「グリーンな経済」とは言えない。2024年版の「グローバル・エネルギー・モニター」の報告によると、中国は現在、世界で最も多くの石炭火力発電所を建設しており、世界の石炭火力容量は2015年以降11%増加し、2023年には史上最高の使用量に達した。特に中国がその3分の2を占めているという。
中国は現在、世界の発電用石炭消費量の約60%を占めている。
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