分析 石破茂首相 対外政策ではバランス重視か

2024/10/02
更新: 2024/10/02

元防衛大臣である石破茂氏が首相に就任した。専門家は石破氏がバランスの取れた国際政策を進めつつ、中国共産党(中共)に対抗する地域連携を強化する可能性が高いと考えている。

また、自民党総裁選で石破氏が5回目の挑戦で勝利を収めたことは、日本の政治家たちが中道的なリーダーを求めていることを示していると指摘している。

9月27日に行われた自民党総裁選には9人が出馬。石破氏は1回目の投票で2位となり、決選投票で勝利を収めた。世論調査でリードしていた元環境相の小泉進次郎氏は3位で決選投票には進めなかった。1回目の投票で首位に立っていた中国共産党に強硬な安倍晋三元首相の後継者と見られていた高市早苗経済安保相は、決選投票で石破氏に敗れた。

産経新聞元台北支局長である矢板明夫氏は大紀元に対し、石破氏の勝利は彼の穏健な外交政策が有権者に支持されたことを示していると語った。

矢板氏は、衆議院選挙を控える中、石破氏の中道的な立場が国会の中間層の票を集め、自民党が再び連立政権を樹立することを容易にする可能性があると指摘している。

自衛隊の役割強化を支持 集団的自衛権行使にも前向き

台湾の輔仁大学日本・東アジア研究センター所長の何思慎氏も大紀元に対し、石破氏の穏健なアプローチは自民党に議員間の支持基盤を広げるより良い方法を提供すると語った。

矢板氏によれば、石破氏の防衛力強化の主張は軍事拡張主義と誤解されるべきではないという。

石破氏は長年、日本の安全保障体制を強化し、地域の平和を維持するため、オーストラリアや韓国と同盟を組み、英国やフランスなどの欧州諸国との安全保障関係を拡大する「アジア版NATO」の創設を主張してきた。

ワシントンのシンクタンク、ハドソン研究所が9月18日に提出した論文で発表した。「今日のウクライナは明日のアジアだ、ロシアを中国に、ウクライナを台湾に置き換えると、アジアにNATOのような集団的自衛体制がないということは、相互防衛の義務がないため、戦争が勃発する可能性が高いことを意味する」と述べている

「このような状況下では、西側同盟国が中国を抑止するためには、アジア版NATOの創設が不可欠だ」

アメリカ東アジア・太平洋担当国務次官補であるダニエル・クリテンブリンク氏はワシントンに拠点を置く別のシンクタンク、スティムソン・センターで9月17日に開かれたイベントで、「アジア版NATO」のアプローチは「時期尚早」だと述べた。

しかし、石破氏は決意を固めていた。

石破氏は当選後、9月27日に記者会見を開き、日本を守るための総合的な体制を構築する計画を発表した。同氏は、ロシア軍機の日本領空侵犯や中共の調査船の日本領海侵入など、9月に起きた最近の事件への対応の緊急性を強調した。

同氏は、日本の抑止力と対処能力を向上させるには、日本に「対処能力を与えなければならない」と述べ、日米、米韓、米比の同盟枠組みの「有機的な統合」を提案した。

何思慎氏は、石破氏が長年主張してきた安全保障や憲法改正に関する見解についても評価しており、特に自衛隊の防衛機能を憲法に正式に明記するという彼の提案を「現実的で合理的」と称賛している。

日本の自衛隊は、第二次世界大戦後の憲法に基づき、防御を主眼とする組織であり、日本の主権を守り、地域の安定を確保している。石破氏は、自衛隊が集団的自衛権を行使し、日本や同盟国を防衛することが、国の存続が脅かされた場合に認められるべきだと考えている。

9月27日の記者会見でも、石破氏はアメリカに自衛隊の訓練基地を造ることは「極めて有効だ」と述べた。

矢板氏は、決選投票で石破氏と争った高市氏と石破氏を比較し、「防衛に関しては、石破氏の方が高市氏よりも安定しており、予測可能性が高い」と評価した。

また、「日米関係や日本と周辺国との関係においても、石破氏はより慎重で、予想外の動きをする可能性は低い」と述べた。

インド太平洋戦略と対中政策

何氏も、石破氏は外交政策や日本の安全保障に関する戦略において比較的安定しており、「インド太平洋地域やアメリカにとって驚きや問題を引き起こすことはない」と評価。さらに、「石破氏が日本の防衛能力強化を支持することは、拡張主義として捉えるべきではなく、インド太平洋地域の変化する安全保障環境への対応だ」と述べている。

8月に台湾を訪問した際、石破氏は抑止力の必要性を強調したものの、台湾への日本の軍事的関与については具体的な公約を避けた。

石破氏は他の候補者と比較して、対中政策において「ハト派」と見なされているが、矢板氏は「石破氏は中国や韓国を挑発しないよう、慎重な対応を一貫して主張している」と述べた。

一方で高市氏は台湾との強力な同盟を築く可能性があり、その結果、中国との対立が激化する懸念があるという。

矢板氏は、石破氏を「親中派」には分類していない。「実際、石破氏が提案している『アジア版NATO』は中国(中共)を対抗勢力として位置づけている」と指摘している。

 

Jon Sun
Olivia Li
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