オピニオン 0と1でできた脆弱な世界はハッカーの一撃で滅ぶ?

私たちのデジタルシステムはどれほど脆弱なのか?

2024/06/27
更新: 2024/06/27

論評

アメリカの自動車ディーラーの多くが先週、大規模なサイバー攻撃に見舞われた。CDK社が開発したソフトウェアが完全に無効化され、購入や処理の統合プロセス全体に影響を及ぼした。販売者は、販売、ローン、保険、登録などの処理ができなくなった。この攻撃は突然発生し、二日半続いた後に復旧したが、その後再び停止した。

自動車ディーラーはどのように対処したか? 彼らはすべての手続きを紙に書き出し、システムが復旧した後にプロセスを完了することを約束した。現在、システムは復旧し、すべてが正常に戻ったように見えるが、この経験は警告サインである。これらのシステムは、通常想定されるよりもはるかに脆弱であり、ちょっとしたハッキングで現代社会を停止させるのに十分であるということが分かった。これは非常に警戒すべき事実だ。

問題は、30年前に私たちが思い描いた技術革命が徐々にますます中央集権化され、重複やバックアップの少ない脆弱な旧式の電力網に依存するようになったことだ。産業ごとにソフトウェアも中央集権化されている。どのシステムでも単一障害点が故障すれば、全体が停止してしまう可能性があるということだ。

古代から21世紀に至るまで続いたアナログの世界には、この問題はなかった。アナログの世界はより耐久性があり、物理的に固定されており、人間の手で修理可能で、理解しやすく、管理しやすかった。あらゆるものがデジタル化されるようになったことで、全体の脆弱性をもたらした。私たちはそれを今になってようやく発見した。

これは産業全体だけでなく、個人にも影響を及ぼす問題となった。私の友人は最近、車に戻ったところ、iPadが熱でくしゃくしゃになってしまったことに気づいた。同じ日に、彼のノートパソコンの画面が上下に割れてしまった。おそらく物理的な衝撃のためだった。運が悪かったが、突然、その友人の生活は急停止してしまった。

解決策はいつもあるが、それには突然の出費が伴い、何日も待たなければならないことが多い。そして古いデータを取り戻すには、ハッキングや情報漏えいに脆弱な独自のクラウド上の単一アカウントにアクセスする必要がある。これが私たち全員が生きている現実だ。私たちは、新しいおもちゃでできるあらゆる洒落たことに目を奪われ、興奮するが、システム全体が技術的な不測の事態に対して、どれほど脆弱であるかには、かなり無頓着だ。

私はかつて、インターネットは永遠であり、過去の何よりも耐久性があると信じていたが、それが間違いだったことに気づいた。検索エンジンはますます利害関係者の優先事項に基づいてキュレーション(情報を集めて整理すること)され、サイトは放置されて、古いコードで消えていく。そのため、たった5年前に重要だったリンクやサイトが何百万も消えてしまったのだ。

長い間記事を書いてきた人なら、このことを知っているだろう。10年前に書いた記事を見つけてリンクを試してみると、ほとんどが無効になっている。つまり、かつて作家が主張を裏付けるために使用した方法が、今では全く機能しなくなっている。そしてこれは、ほんの短期間のうちに起こったことである。世界的なインターネットでは、蜘蛛の巣の糸が嵐で壊れるのと同じように、ほんの少しのストレスで崩れてしまう。

これにより驚くべき事実が判明する。1920年代や1930年代、または1880年代に書かれた記事を掘り起こす方が、1995年以降にオンラインに投稿された記事を見つけるよりも簡単だという現実がある。実際、インターネットは永遠ではない。それは一時的で、薄く、儚く、変わりやすく、新しいものに置き換わり続けるのだ。つまり、デジタルテクノロジーによって、ある現実を別の現実に絶えず置き換えることが可能になるということであり、これは驚くべきことだ。

数年前、私はある会社のために約300本の記事と30冊の本の序文を書いた。その会社が永遠に存続すると思っていたが、収益性基準を満たすことができず、取り壊された。

私は、インフラ全体があるドメインから別のドメインに切り替わり、そのドメインには何も引き継がれず、本が保存されていたすべてのアカウントが、ある瞬間から次の瞬間にかけて突然削除されるのを、驚きながら見ていた。私の2年分の仕事が突然消えてしまったのだ。これは悪意によるものではなく、ビジネスの現実というものだった。

私はこれに憤慨しているわけではない。それはただのビジネスだ。さらに、同じことが何百万、何十億もの他のコンテンツにも起こっている。今日存在していたものが明日には消えてしまうのだ。これがデジタル世界の本質だ。私たちは出版と情報配信のコスト削減に驚嘆してきたが、実際には、ポケットに節約した分を、他の方法で支払っていることが分かったのだ。そしてそれらを、二度と見られないかもしれないという現実に慄くばかりだ。

確かに、Archive.orgのような優れたサービスを利用してウェブ上のコンテンツを保存する方法もあるが、この一つのサービスだけですべてを支えることはできない。それに使い方も非常に難しい。自分が何を探しているのかを正確に知っていなければ、見つけることはできないし、それでも、当たり外れはある。

私たちみんな、物理的な図書館を放棄し、電子書籍リーダーに置き換えたことを、後悔する日が来るかもしれない。私たちは現代化し、生活を改善し、物理的な動きやすさを向上させたと信じてきた。しかし、誰も本のある決まった場所を、動かせることなんて、楽しんではいなかった。しかし今では、学習と知恵へのアクセスが非常にかたより依存していることが分かってきた。それが一瞬で取り除かれ消えてしまう可能性があるというのは恐ろしい考えだろう。

すべての現代生活が非常に薄い基盤に依存している。いつでも壊れる可能性があり、現実を一瞬で変えることができるということだ。古いアナログ時代を原始的だと見なすが、それは全く真実ではないかもしれない。大量に壊れることがなく、人間の手で修理できるシステムに頼る方がはるかに賢明だったかもしれない。

多くの人々は、太陽フレアがインターネットを一瞬でダウンさせる可能性を心配している。それは正当な懸念だ。しかし、本当の脅威ははるかに切迫していて現実的だ。それは、どのシステムでもハッキングされ、どのセクターでも破壊される可能性があるということだ。自動車販売、不動産管理、配送システム、銀行・金融、支払い処理など、あらゆる分野のあらゆるシステムがハッキングされ、侵害される可能性があるということは、すべてが今日ここにあっても、明日にはなくなる可能性があるということだ。

これらのシステムは、すべて冗長性(システムが停止することなく継続的に稼働し続けられる状態)を備えていると主張しているが、その保証はない。実際に試されるまで、それが本当に機能するかどうかは分からない。冗長性は単なる経営スローガンかもしれないが、本当に機能することはほとんどないのではないか?

実際、過去数十年にわたって構築されたもののうち、真剣なストレステストが行われたものはほとんどない。私たちはただ突き進み、デジタル化を進めてきただけだが、すべてが永遠にうまくいくという保証はないということを、無視してきたのが今の現実なのだ。

もし悪夢のシナリオが現実になるとしたら、誰が生き残るだろうか? アーミッシュ(伝統的な再洗礼派キリスト教の教会集団)、メノナイト(キリスト教アナバプテスト教派)、田舎の家族経営の農場、そしてデジタル化を完全に受け入れなかった他の小さなコミュニティだろう。産業革命以来の知識をすべて捨て去り、全世界を突然 1 と 0 でできたはかない世界に変えてしまったのは間違いだったのかもしれない。

 

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
ブラウンストーン・インスティテュートの創設者。著書に「右翼の集団主義」(Right-Wing Collectivism: The Other Threat to Liberty)がある。