「数十台の車両が突然できた巨大な穴のなかに落ちた。落下した車両は衝突した瞬間爆発し炎上した。車内にいたその搭乗者たちは脱出する間もなく火の海に飲み込まれていった」
「もし今回の事故が殺人者だとしたら、炎上したEVは凶器だ……」(生還者より)
1日未明、中国広東省梅州市にある「梅龍高速道路」で、路面の一部が崩落する事故があった。翌日「死者48人、負傷者30人」と当局が死傷者数を更新して以来、続報はない。
ネット上では「当局の管理不行き届きや手抜工事」を非難する声が殺到するなか、「実際の死傷者数はもっと多いのではないか」という憶測も流れている。
生存者が語る「人間地獄」
崩落事故発生の3日後、事故で家族3人を失った生還者の兄である李さんは、弟自身が携帯に留めた「人間地獄」の画像と文章を公開した。李さんは、亡くなった家族のため、「正義と納得のいく説明」を当局に求めている。
以下は李さんが語る、その弟(生還者)の回想の翻訳である。
「車を走らせていたら突然、高速道路がなくなった。自分たちの車はそのまま2階の高さ位はある深い穴のなかに落ちた。その穴のなかには、すでに何台も車があった」
「穴に落ちた後、私は意識がはっきりとしていたが、車内にいた同乗者は全員意識を失っていた」
「後から落ちてきたあるEVは自分たちの車の上に衝突し、一瞬で炎上した。その車は自分の車のすぐそばに落ちたんだ」
「車内にいたその搭乗者たちは脱出する間もなく火の海に飲み込まれていった。自分は燃え盛る車から1メートルは離れていたが、それでも火傷を負った」
「穴に落ちた後、息子を安全な場所へ移動させた後、妻や実母、義理の母親を助けに車に戻ろうとしたが、火は燃え広がり、どうすることも出来なかった。自分はただただ、愛する家族の名前を叫ぶことしかできなかった」
「息子を運んでいる間も、車が次々と落下してきてはぶつかる音をはっきりと聞いた」
「息子を抱いたまま、必死に高速道路をよじ登った。振り返ってみると、背後の穴の中は火の海と化していた。あの巨大な火の穴はまるで人間地獄そのものだった」
「命からがら、助け出したのは2歳半の息子だけ。息子は今もICUに入院している」
「もし今回の事故が殺人者だとしたら、炎上したEV車は凶器だ。この凶器がなかったら、この事故の犠牲者は半数以下に減るだろう」
「EV車はどんどん性能が良くなり、賢くなっている。しかし、一方では基本的な安全性がおろそかになっている。今生、絶対にEVは買わない、息子も孫の代も絶対に買わせない。
「EV車の安全性といったメーカ側の責任もあるが、事故発生後の現地当局の対応が遅すぎる」と李さんは非難している。
「事故発生直後、家族は弟からの電話を受けて、近くの高速道路の職員に事故のことについて尋ねたが、その職員は『何の通知も受けていない』と話した。もしあの時、心優しい人たちが車を止めて、命をかけて穴へ続く道を塞いでくれなかったら、穴に落ちた車は23台どころでは、なかったに違いない」
「衝突した瞬間に発火した」という李さんの投稿はSNSで注目され、EVの安全性をめぐる懸念が再度広がった。
情報封鎖
崩落事故直後、事故関連トピックスは一度は中国SNSウェイボー(微博)のホットリサーチ1位入りしていたが、その後はなぜか事故より20日も前に起きた「ゲーマーの自殺」の話題がトレンド1位になり、その事態が何日も続いている。
この不可解な事態に、「高速道路崩落事故から世論の注目度を奪い、目を逸らすため当局がまたもトレンド順位の操作を行ったのではないか」と疑う声が多く上がっている。
EVの安全性、現地当局の管理不行き届き、高速道路の手抜き工事などの非難のほか、中共当局が行っている情報封鎖についても話題になっている。
以下にSNSでの一部コメントを羅列する。
「事故から何日も経つのに、救助された人がメディアの取材に応じているところを見ていない」
「救助された家族は全員、変なことを言わないよう口止めをする『工作チーム』が割り当てられるだろう」
「みんな口を封じられたんだ。いつもこのパターンだ。大事件が起きるたび、当事者やその家族が自由に発言できたためしはない」
「以前、地元で今回の事故より小さい事故が起きたが、その時は被害者家族同士が交流できないよう、家族全員ホテルに閉じ込められた。そしてどの家族にも騒ぎを起こさないよう見張りの要員が付けられていた」
「この事故に関しては、当局が許したメディアしか取材できないんだ。EV車の発火が犠牲者数を増やしたのに、それも、情報封鎖されるわけだ」
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