今月2日午後9時前、広東省汕頭市の街中で高級車を乗り回す男が交差点で信号待ちをしていたバイクに追突した後、バイクに乗っていた男性に暴力を振るっていたことがわかった。
ネット上に出回った暴力を振るう様子を捉えた動画のなかには、すでに地面に倒れて動かない男性をヘルメットで殴るなど容赦ない暴力の男性の姿があった。その後男性は、そそくさとその場を離れた。
被害者家族によると、この日、交差点で信号待ちしていた被害者の男性は、後ろからやってきたベンツ車に追突され、被害者男性はそのまま地面に倒れた。
ベンツ車から降りてきた運転手の男は謝罪をする意など皆無で、被害者男性に暴力を振るい始めた。被害男性は当初交差点にいたが、殴られて道端に追いつめられたという。
動画のなかには、ベンツ車の前に倒れた電動バイクも映っていた。
この動画と共に、被害者家族による「犯人逮捕につながる情報提供を求める」投稿が中国のSNSで拡散され、ネットユーザーらの怒りに火を付けた。
「警察には通報したが、事件当時、現場を通過した車のドライブレコーダーの映像および市民の撮影映像などの提供をお願いします」と被害者家族は訴えている。
「自分でぶつけておいて逆に暴力振るうなんて、なんて世の中になってしまったことか」
「ヘルメット使って相手の頭に向かって殴るなど、故意殺人だ」
「暴力男は正気のさたでない。しかし、このままだとベンツ男は金持ってるだろうから、この件は金で解決されそうだ。ホットな話題でも時間経てば注目されなくなる、そうなればこの件はうやむやにして済まされるだけだろう、いつもこのパターンだ」といった嘆きの声もあがった。
現地警察によると、暴力を振るった後に逃走した加害者の蔡(男、41歳)は現在、刑事拘留されているという。
言行を慎み「薄氷の上を歩くように」
中国では近年、暴走車がわざと人混みへ突っ込むなど「社会への報復」を意図したとみられるような凶悪事件も含め、中国社会の邪気がもたらす悲劇は、ほとんど毎日起きている。
言わば、中国社会全体が、真っ黒な邪気に満ちているのだ。この邪気を、中国語では「戻気(リーチー)」と呼ぶ。
華人圏のSNSには「今の中国社会は邪気が満ちている。人と衝突を起こすな」といった趣旨の動画はSNS上に様々なバージョンのものがある。
どれも「あなたの相手や周囲の誰かが精神的に突然キレて凶悪犯に豹変しないよう、あなたが十分注意しなさい」と呼びかける内容で、下記にその一部内容を紹介する。
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「今の社会では、邪気が強すぎる人はあまりに多いのです。そうなった原因はさまざまです。失業した、破産した、住宅ローンの支払いを中止した(購入した住宅の建築工事がストップしたので、もう諦める)などなどで、人々はますます憂鬱になり、不安になっています。なかには精神的に崩壊寸前の人も少なくないでしょう」
「だから、あなたの言葉や行動1つが、ラクダの背骨を折る最後のワラ(ある物事が、耐えることのできる限度を超えてしまうきっかけとなった物事を意味する表現)になりかねないのです。あなたの周りにいるそのような人たちが、どんな極端なことをしだすか、あなたには、全く予想不可能なのです」
「ですから、外へ出た時は、できるだけ我慢して、対立を激化させないように、冷静になることが必要です。物事は往々にして、我われが掌握できる範囲の内にはありません。自分の命は一つしかないのです」
「いかなる人の前でも、またどんな場面であっても、決して人前で自慢話をしないように。今の社会は、多くの人が心の奥に吐き出せぬ怒りを抱えています。あなたの心無いちょっとした言動、ひいては友好的ではない視線一つさえも、誰かを刺激しかねません」
「警備員、宅配業者、食事デリバリースタッフなどに対しては、本当に礼儀正しく、笑顔で接してあげなければなりません。なぜならば、彼らは職業の性質上、この社会で多くのストレスを受けているからです。ラクダの背骨を折る最後のワラにならないように。さもなければ、彼らの不満や怒りはすべてあなたに向けられかねません」
「車を運転するときや列に並ぶ時は、割り込みをしない。公共の場で電話しない。大きな声でしゃべらない。誰かにぶつかった時は、すぐに謝る。エレベーターに乗る時も(先を争わず)できるだけ後ろに立つ。言行を慎み、薄氷の上を歩くときのように緊迫した心持ちでいることです」
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いずれも「人との争いを起こさないようにする心得」だという。正常な社会であれば当然のマナーや常識ではあるが、今の中国においては「焼け石に水」の感は否めない。
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