なぜアップルのCEOの中国訪問がアップルに利益をもたらさなかったのか

2024/03/29
更新: 2024/03/29

アップルCEOティム・クック中国訪問で目指すものとは? 旧式の企業外交戦略の効果とその限界に迫る 

最近、アップルのティム・クックCEOが目立った中国訪問で注目を集めた。彼はこの訪問を通じて、アップル製品の中国市場での拡大を目指している。しかし、政策分析専門家は、クック氏が時代遅れの企業外交戦略に依存していると指摘した。この戦略は、現在の中国の状況では効果がないという。 

「Longview Global」のマネージングディレクターであり、シニアポリシーアナリストのデワードリック・マクニール氏は、3月27日にCNBCニュース専門放送局が、近年、多くのアメリカ企業のCEOが中国訪問を重ね、支持と拠点を求めていると述べた。クック氏のような中国市場への注力は、過去の企業外交戦略の影響を信じているアメリカの大企業の典型的な例であるいう。 

「効果は期待できません。それは古い戦略の繰り返しです」とマクニール氏は批判する。 

彼によると、長年にわたり、外国企業が中国市場での成長を目指す戦略は、「直接現地に赴き、敬意を表し、大規模な投資を約束する」ことであった。これにより、市場参入と製造の獲得を目指していた。 

過去の成功例としてボーイング社が挙げられる。中国がボーイングの航空機を必要としていた時代、同社のCEOは中国共産党と頻繁に接触し、多くの注文を得た。特に2011年、ボーイングの当時のCEOの訪中は、多数の契約成立につながり、中国での長期的なビジネス関係と取引促進において、経営トップの積極的な関与の重要性を強調出来たという。 

また、フォルクスワーゲンは1980年代初めに中国市場に進出し、初の合弁企業を設立した。これらの利益は、当時CEOの早期からの関与がもたらした結果を示すものである。 

マクニール氏は、現在の経済戦略は時代遅れになっていると警告した。中国共産党との経済的な競争が激化し、地政学的な緊張が高まる中、技術競争や世界経済の構造変化に伴い、従来のアプローチがもはや効果的ではないと指摘する。この方針を維持する経営者は、特に習近平政権の下で、中国共産党との取引において、利益の減少リスクに直面する。

 ティム・クック氏の北京訪問は、旧式の企業外交戦略を、依然として採用している。クック氏は、中国共産党の高官が主催する「中国発展フォーラム」に出席し、中国における投資拡大と研究開発施設の増設を約束した。さらに、同国での「Vision Pro」ヘッドセットの発売計画を公表した。

 

企業成長のため中国共産党トップとの交流時代の終焉

 マクニール氏は、クアルコムを含むテクノロジー企業が、中国で増加規制や罰金といった問題に直面しているにも関わらず、相互訪問や接触交流が頻繁に行われている現状を指摘する。これにより、企業外交の限界が浮き彫りになっている。テクノロジー業界でこの転換点は既に訪れている。例えば2010年にグーグルが中国市場から撤退した事件は、同社のCEOが中国共産党政府と接触後に起こったことだ。中国の厳しい規制環境の下でのビジネス運営の難しさと、CEOの外交戦略の限界を示している。 

特にFacebookの事例は示唆に富んでいる。MetaのCEOであるマーク・ザッカーバーグ氏は、中国共産党への好意や中国文化、ビジネス慣習への深い理解を示す。そのため、中国語を学習し公の場で使用したり、北京の天安門広場でジョギングするなど、様々な努力をしてきた。これらはすべて、中国市場への進出を目指す戦略の一部であったが、結果的にFacebookは中国でアクセスが禁止されたままである。 

マクニール氏は、アップルのCEOティム・クック氏が試みる戦略も、長期的な成果に繋がらないと指摘する。クック氏は典型的な企業外交を行っているが、中国共産党が西側のテクノロジーや企業に対して懸念を抱き、国内企業による置き換えを目指している現状が問題となっている。 

マクニール氏はさらに、「フォルクスワーゲンやボーイングのような企業は、CEOの中国訪問戦略を始めてから状況は変わったが、これらの戦略が外国企業に与える長期的な利益は限定的だ」と述べている。 

 

昨年の中国訪問でクック氏が得たものは? 

ティム・クック氏は近年、中国への訪問を重ね、アップルの同国市場で拡大を図っている。昨年3月に北京で開催された「中国発展高層フォーラム」に出席し、北京と長きにわたる協力関係を讃えた。

 しかし、中国共産党の外国企業への圧力と国内企業支援のための民族主義をあおる姿勢は変わらない。クック氏の努力もその動向を変えるには至らなかった。昨年9月クック氏の訪問後数か月で、アメリカのメディアは中国共産党が政府機関や国有企業にiPhoneの使用禁止を指示したと報じた。12月には、過去数か月で少なくとも8つの省庁と国有企業が、従業員に国産ブランドへの切り替えを促したとの情報が流れた。

 この3月、全国人民代表大会と中国人民政治協商会議の期間に、iPhoneの使用が制限されていることを確認した。10人以上の参加者は自らが使用するのは中国ブランドであると明かした。

 中国共産党のシンクタンクで働く郭氏は、昨年末にオフィスでiPhoneの使用停止指令を受けたことを明かしている。

 クック氏の努力にも関わらず、アップルの中国市場の売上は減少傾向にある。公式統計によると、今年2月、アップルのiPhone出荷量は前年同期比で約33%減少し、中国市場で需要が減少している。

 マクニール氏は、中国の現状下で外国企業が従来の戦略に固執することは、適応力の不足と、変化を過小評価するリスクに直面すると指摘している。中国を訪れるCEOたちは、将来の成長を確保しつつ、機会と淘汰が共存する現実を理解し、戦略を見直す必要がある。戦略的関係を深め、市場のリスクを低減しつつ、多角化を図ることが求められている。

張婷