ディーゼル車が動かない 韓国で物議醸す 中共の自動車用尿素輸出が保留 

2023/12/09
更新: 2023/12/12

最近、中共(中国共産党)は韓国への自動車用尿素水輸出の通関手続きを突然、保留した。輸入サプライチェーンを依然として中国に大きく依存している韓国で、自動車用尿素水の駆け込み購入が発生した。専門家によると、これが韓国に対する政治的脅威である可能性はあるが、韓国が対中依存を早急に脱却するのに役立つ可能性がある。

中共税関総署は11月30日、韓国大手企業への自動車用尿素水の輸出通関手続きを突然中止した。 問題の自動車用尿素水はすでに輸出検査を終えており、積荷の段階で保留となった。

自動車用尿素水(ディーゼル車排ガス処理液)は工業用尿素の一種で、蒸留水に尿素を溶かし、尿素濃度が32.5%にした尿素水溶液で、アドブルーという名称で知られ、排出ガスをクリーンにするのに必要不可欠なものだ。

大型トラックやバスなどのディーゼル車は、国の規制をクリアするため、アドブルーを使用するSCRシステムが広く採用されており、尿素水溶液で排出ガス中の窒素酸化物を除去し、無害化する。韓国には約1千万台のディーゼル車があり、そのうち200万台が貨物車だ。

アドブルーが枯渇するとディーゼル車の車両のエンジン性能が自動的に制限されるか、最悪の場合はエンジンが起動しなくなるなど走行に著しく悪影響がでる。

韓国政府によると、自動車用尿素水の輸出通関手続きの遅延は、中国国内の供給が逼迫しているためだとしている。

韓国政府は車用尿素水の国内在庫がまだ3か月分以上あるから、中国の動きは韓国の供給状況にほとんど影響を与えないだろうと述べている。しかし中国が2021年にアドブルーの韓国輸出を制限し、韓国はすでに「アドブルー不足」に直面していた。韓国政府は中国の措置が長期化する可能性を排除せず、解決策に取り組んでいる。

中国問題専門家・元首都師範大学準教授の李元華氏は12月7日、政治的要因とは関係ないという見方は、一部の韓国政治家の思い込みだと指摘した。同氏は、中国国内での尿素供給は逼迫しているが、中共は資源を武器にしてきたから、韓国への車用尿素水の輸出保留は、政治的要因である可能性を排除できないと考えた。

「韓国が米国や西側諸国に接近するという非常に断固とした姿勢をとっているにもかかわらず、韓国の生産サプライチェーンは完全に中国に依存している。中共はこのこと(韓国の中国依存)を韓国に思い出させ、脅したいと考えている」

韓国尿素水騒動再来の懸念

韓国関税庁によると、中国から輸入される工業用尿素の割合は、今年1月〜10月にかけて91.8%に急増した。

2021年の尿素水騒動後、韓国の大手企業は尿素の輸入先をカタールやベトナムなどに拡大したが、その後また中国に戻った。

韓国産業通商資源部は、輸入の多様化を図ってきたとしていたが、東南アジアで生産される尿素よりも安価で品質も良い中国への依存度を下げるのは困難だった。

大手のロッテ精密化学を除き、他の尿素輸入業者がすべて中小企業であることと相まって、価格や輸送コストなどの要因が、輸入業者の購入先の決定に大きな影響を及ぼしており、これらの事が購入先の多様化を達成する上での困難と見られている。

その一方で、11月17日、中国窒素肥料工業協会と中化化肥を含む12社が「国内市場への優先販売」を求めた。また、中国国内の情報によると、肥料関連の協会は11月に国内の尿素企業に輸出制限を提案したという。

これらの自動車用尿素の輸入制限が長期化し、尿素水騒動の再発を懸念する声が韓国で広がっている。消費者は市場で尿素を買おうと躍起になっており、一部のオンラインショップでは一時的に在庫がなくなり、一部のショップでは、買い占めを防ぐために尿素の販売制限を始めている。

韓国で車用尿素水のトップシェアを誇るロッテ精密化学の尿素「ユーロックス」は、公式モールでの1人当たりの購入上限個数を30日以内1個に設定した。

韓国政府は6日、中国からの輸入規制が長期化する場合、第三国から輸入する韓国企業の負担を軽減するための支援策を策定している。

また政府は、中国当局が尿素の通関手続きを停止したことに懸念を表明し、この問題が両国間のサプライチェーン協力に悪影響を及ぼす可能性を指摘した。またサプライチェーンにおける異常な動きを適時に共有するため、両国の産業部門がサプライチェーン対話チャネルを活性化するよう提案した。

メディアが批判

韓国の世論は、政府の輸入多様化対策の実施を不利だと批判し、政府と産業界に輸入サプライチェーンの多様化の促進を加速するよう促した。また、一部の韓国メディアは中国政府を批判している。

「中央日報」は社説で、「中共は米国や世界に対して自由貿易を強調している。中共もそのような発言の重みに見合った行動を取るべきだと述べている。尿素水輸出保留の状況を韓国に透明開示しなければ、中共は自由貿易の原則に違反したという批判を払拭できないだろう」と述べた

尿素だけの問題ではなく、半導体、バッテリー、電気自動車など、鉱物のサプライチェーンにおいて、韓国は依然として中国への依存度が高い。

李元華氏は、今回の尿素輸出保留は韓国にとってもう一つの教訓だったが、それは逆に、韓国に中共への依存の解除を加速させ、まだ中共に希望を持つことを断念させ、韓国社会の覚醒を促進させると考えている。

「中共を認識することによってのみ、われわれは貿易と経済政策を根本的に調整し、中共に支配されないようにすることができる」 と同氏は述べた。

吳歡心
張鐘元