【プレミアム報道】中国共産党、“謎の肺炎“を隠蔽 「何一つ信用できない」米議員ら批判

2023/12/07
更新: 2023/12/07

4年前の新型コロナウイルスを彷彿とさせる感染症が再び中国本土で蔓延し、国民は先の読めない状況を前に、無力感にさいなまれている。子供を中心に“謎の肺炎”が感染拡大するなか、大勢の患者が病院に押し寄せている。

病院の待合室や廊下は患者で埋め尽くされ、待ち時間が12時間を超えることも珍しくない。ある北京市民は1800番台の番号札の写真をシェアした。つまり、この患者の前に1800人以上の患者が診察を待っていることを示している。

北から南まで、子供たちの呼吸器疾患による入院が急増しているため、教室は閉鎖され、保健当局は体調不良を感じた教師や生徒たちに自宅待機を呼びかけるアナウンスを次々と発表している。

「クラスの全員が咳き込んでいて、先生が何を言っているのか聞こえないほどだ」。陳と名乗る男性は、北京に住む小学生の娘から聞いた話をエポックタイムズに語った。

3年前と同様に、中国共産党(中共)はこの感染症のリスクを否定し、世界保健機関(WHO)に対し「通常とは異なる、あるいは新しい病原体」ではないと報告している。

中共は、10月中旬に呼吸器監視システムをアップグレードしたことが、今回の感染者増加の原因であるとし、既存の病院設備で十分対応可能だと主張した。

2022年12月20日、中国広東省東莞市にある東莞人民病院の発熱クリニックで診察を待つ患者たち (VCG/VCG via Getty Images)

しかし、国際保健機関や疾病対策予防センター(CDC)が鵜呑みにしている中共当局の説明に納得できる人はほとんどいないだろう。

11月29日の記者会見で、WHOは「中国の状況をフォローアップ」し、この種の新感染症に対処する「世界中の医療能力」を評価していると述べた。

微生物学者であり、ウォルター・リード米陸軍研究所ウイルス病研究室の元室長であるショーン・リン(林曉旭)氏は、WHOが中共政権の情報に依拠していることに不満を表明。「中国(共産党)政府のデータなど信用できるわけがない」とエポックタイムズに語った。

2019年秋、“謎の肺炎”が流行していると、武漢の医師たちが告発した。しかし、中共政府がこのウイルスがヒトからヒトへと感染するリスクを認めるまで3週間近くかかった。その間に、当局は発言した医療関係者を叱責し、市民ジャーナリストを逮捕し、記者の口を封じ、自国のイメージを損なうあらゆるコロナ関連の情報をネット上から一掃した。

多くの米議員、特に共和党議員は、同じことが今中国で起こっていると見ている。

モーガン・グリフィス下院議員は11月30日、CDCに中国での感染拡大を調査するよう求める書簡に署名した翌日、エポックタイムズの姉妹メディア、新唐人にこう語った。

「中国共産党は情報を提供しないうえ、面子も潰したくない。だから多くの人が命を失っている」

外科医であるグレッグ・マーフィー下院議員も「中国は新たなパンデミックの発端であると思われないよう、様々な策を講じている」と警鐘を鳴らした。

「中国共産党の言うことは、何一つ信用できない。同じ過ちを繰り返してはならない」

急速に広がる病原体

昨年の12月、中共当局は厳しい行動制限を伴う「ゼロコロナ」政策を突然、解除した。その後の約3週間で推定数億人が感染し、病院と火葬場は瞬く間に収容人数を超過した。

今回の肺炎は子供たちの間で流行している。中国全土の主要な小児科病院は、ここ数週間で毎日1万人の患者を診察しているという。

中国東北部の天津小児病院は、1日の患者数1万3171人を記録するなど、天津全域で同様の状況が繰り返されている。また、吉林大学第二病院のスタッフによれば、同病院の1週間の予約はすでにいっぱいだという。

2022年12月22日、中国北京の火葬場で入場を待つ柩車(STF/AFP via Getty Images)

病院によっては待合室が超満員となり、子供たちとその家族は病院の門の外に並ばなければならない状況だ。テント、キャンプ用ベッド、折りたたみ椅子、毛布がすべて使用され、点滴治療が必要な患者は、待機中に点滴を自己投与するためにハンガーや吊りフックを持参した。

また、中国のソーシャルメディア微博には体調不良を訴える投稿が増えている。南部の湖南省に住む小学校の教師は「クラス全員が体調不良で学校を休んだ」と状況を明らかにした。その教師も、頭が割れるような高熱、手の震え、耳鳴り、鋭い肺の痛みを伴う乾いた咳が一晩続いたという。

不利なデータを隠蔽し続ける中共当局が発表する数字でさえ、その悲惨さを物語っている。11月26日までの1週間で、北京だけで7万2千人以上の感染が報告された。

2023年1月30日、中国河南省鄭州市の鄭州大学第一附属病院で診察を待つ人々 (VCG/VCG via Getty Images)

こうした急増する謎の肺炎に対し、米議員らも注意の眼差しを向けている。共和党の上院議員5人は1日、バイデン大統領に書簡を送り、病気の危険性を調査するため、米中間の渡航を制限するよう求めた。

「今すぐ渡航を禁止すれば、我が国を死や閉鎖、義務化、そしてさらなる感染拡大から救うことができる」と上院議員らは書いた。

大流行を軽視

中共のメディアはこの1か月間、この集団感染は冬季に流行する一般的な呼吸器系病原体に過ぎず、パニックに陥る必要はないと国民に呼びかけてきた。

党機関紙の人民日報は、マイコプラズマ肺炎は「予防可能で制御可能」であると報じ、事態を軽視している。これは中国での新型コロナウイルス感染症の流行が国際的な不安を呼び始めた2020年1月に政権が使っていた文言だ。

これについて、ウイルス学者のリン氏は、マイコプラズマに焦点を当てたのは、誤解を招き、注意をそらすための意図的な措置の可能性があると指摘する。

「中国共産党は、国内の感染症流行を国際社会に再び疑われることを避けたがっている」と同氏は述べ、一般的な病原体だと強調するのは「政治的理由」からだと述べた。

この病気がマイコプラズマ肺炎だとする中共当局の説明には、複数の疑問が残る。

CDCによれば、マイコプラズマは通常、飛沫感染によって広がり、短時間の接触では感染しない。また、この感染症は症状が軽度なため、中国のCDCウェブサイトの59種類の届出疾患にすら入っていない。

感染症アナリストのドン・ユホン氏も、新型コロナウイルス感染症とは異なり、マイコプラズマは、最近中国の子供たちを悩ませている「白肺」(炎症によってレントゲンに肺が白く写る症状)を引き起こすことはないと指摘した。

2020年3月5日、中国湖北省武漢市に設置されたコロナ患者のための臨時病院で、患者のCTスキャンを見る医師 (STR/AFP via Getty Images)

これまでの呼吸器疾患が流行する季節においても、現在のような流行の規模はかつてみられなかった。安徽省小児病院の医師によれば、深刻な肺合併症を持つ子供たちに対して毎日平均50件の「肺洗浄」処置が行われており、これは通常の1日あたり約10件から大幅に増加していると中国国内メディアは報じている。

さらに、マイコプラズマ肺炎に対する従来の治療法はあまり効果がないようだ。ある発病した小児科医師はエポックタイムズに対し、「マイコプラズマ肺炎に対するさまざまな薬を服用したが、どれも効果がなかった」と述べている。

リン氏は、このウイルス性肺炎は新型コロナウイルスによるものである可能性が高いと推測している。「他の呼吸器病原体が上部呼吸器の防御機構を破壊し、それにより新型コロナウイルスが容易に侵入した可能性がある」との見解を示している。

また、この感染症は子供を中心に感染したが、大人にも広がりつつあると警告した。

検閲

中共の党首、習近平は、海外からの訪問者を不安にさせないように、感染症の流行の深刻さを隠蔽し、コロナウイルスの変異が原因でないと主張するよう当局者に命じた。この情報は、北京の中南海と中国軍の中央党指導部に近い内部告発者がエポックタイムズに提供したものである。

内部告発者によると、国営メディアは子供向けの健康アドバイスのみを宣伝し、大人への言及は禁止されているという。東北部吉林省のある女性は、息子が白肺の症状を示し、マイコプラズマ肺炎と診断されたが、知人の医師から実際は新型コロナウイルスが主な原因だと聞かされた。

「コロナウイルスは変異しており、検査では検出できない。政府はこの件について話すことを許さない」と彼女は述べた。

これは、2022年12月にCOVIDが猛威を振るった際に、政権がとった戦略と同じだ。中共政府は新型コロナウイルスによる死亡を分類する基準を微調整し、新型コロナウイルスや呼吸不全で死亡した人のみを数え、基礎疾患のある人は除外した。

2023年4月28日、中国の北京大興国際空港の利用客 (JADE GAO/AFP via Getty Images)

複数の医師を含む死亡診断書の発行に関わった人々も、中共当局から新型コロナに触れないよう命じられたとエポックタイムズ語った。

また地域によっては、病気のことを公言することさえタブーとされている。北京と天津の少なくとも2人の親がエポックタイムズに語ったところによると、教師は「他の人に悪影響を与える」ことを恐れて、学校のチャットグループで子供の病気のことに触れないよう親に指示しているという。「つまり、すべて国家機密扱いなのです」と親たちは明かした。

リン氏は、3年にわたる大流行が示したように、現在の科学的知識が未来を予測するには不十分であると述べている。「自然の力の前では謙虚になる必要があり、従来の公衆衛生観点を超えて、社会の問題とその根本的な解決方法を考える時期が来ている」

繰り返す歴史

中国伝統気功、法輪功の創始者・李洪志氏も8月、ウイルスの標的は中国共産党と、党に盲従し党を擁護する人々であるとエポックタイムズに語った。

李洪志氏は2020年3月、『理性』という文章のなかで、人類社会の道徳が低下している状況では疫病などの災厄は避けられないとし、「実は、疫病そのものは人心、道徳が退廃し業力が大きくなった人に狙いを定めています」と述べた。

また同氏は「中共邪党を遠ざけ、邪党を支持しないことです」と忠告した。

オンタリオ州の漢方医であるジョナサン・リウ氏は、現在の中国の状況を、疫病が人口を減少させ、統制を弱めた歴代王朝の衰退期になぞらえた。後漢王朝の最後の30年間には疫病が2~3年ごとに発生し、大規模な反乱や軍閥間の戦闘が繰り広げられた。

王朝が崩壊する3年前に起こった疫病では、氏族ごとに人々が死に絶え、事実上すべての家庭が喪に服したと、当時の三大将軍の一人の息子であり、詩人の曹植の著書に記されている。

「中国の伝統文化は天人合一を強調している」とリウ氏。「道徳的に堕落すれば災難が起こる。古代人はこれを因果応報と見てきた」

近年、中国はパンデミックだけでなく、干ばつや大洪水による食糧危機に直面している。観光業の低迷、不動産セクターの混乱、海外からの投資流出などにより、経済が低迷し、若者の失業率が政治的リスクを引き起こしている。

中共は、その100年以上の歴史で暴力と欺瞞を駆使し、血なまぐさい政治闘争と人権弾圧で何千万人もの命を奪ってきた。

中国共産党は1999年7月20日、中国伝統気功の法輪功への弾圧を開始した。多くの国内の法輪功学習者は不当に拘束・拷問され、命を落としている (明慧ネット)

中共は監視技術を導入し、オンラインおよびオフラインで異論の声を消去してきたが、国民に対する統制は弱まりつつある。2022年11月、一連の抗議行動で、ロックダウンにうんざりした中国全土の若者が街頭に繰り出し、初めて党の崩壊を訴えた。

ロジャー・ウィリアムズ米下院議員は、このような動きは単に象徴的なものに収まらないと考えている。

「これは国民の意思の表れだ。人は世界中のどこにいても自分の生活を望み、選択肢を持ちたいと思っている。それが、彼らが中国の体制に対して立ち向かう理由だ」

Eva Fu
エポックタイムズのライター。ニューヨークを拠点に、米国政治、米中関係、信教の自由、人権問題について執筆を行う。