およそ1年ぶりとなる米バイデン大統領と中国共産党党首・習近平との会談を前に、両首脳ともカリフォルニア州サンフランシスコに到着した。

APEC会場付近の道路には金網のフェンスが張りめぐらされ、厳重な警備が敷かれている。

習のサンフランシスコ到着に合わせて、六四天安門事件当時の学生リーダーで、今も米国で民主運動を続ける組織「人道主義中国」の代表・周鋒鎖氏とそのチームは「END CCP（打倒中共）」などと書かれた巨大な横断幕をチャーター機を使って空に掲げ、習近平を「出迎えた」。
 

歓迎チームは「雇われたサクラ」

空からの抗議に加え、各抗議団体は車によるデモも行った。抗議車両はチャイナタウンのほかAPEC会場、中共領事館の前を通過。抗議者たちは「打倒共産党」「フリー・チャイナ」などのスローガンを叫びながら、車のクラクションを鳴らすなどして中国共産党への抗議の意を表した。

習近平が宿泊するホテルの前やホテルまでの沿道では、中共領事館が手配した「サクラ役者」による「歓迎ムード」が演出されている。

そのいっぽう、中国の民主活動家や人権活動家など、多くの団体も習近平を「熱烈に出迎え」ている。

この「抗議チーム「と「歓迎チーム」との間では対峙が続き、一時は殴り合いにまで発展するなど騒然となった。

「中国人への迫害を止めよ！」

習近平が宿泊するホテルの外には、中共に迫害されて亡くなった父親の写真を手に持って抗議をする黒竜江省からの陳情民・賈敬偉さんの姿があった。

賈さんが掲げるプラカードは、決して自身とその親族が受けた被害を告発するだけでない。

「黒竜江省の賈敬偉は訴える。中国人への迫害を止めよ（黒竜江省賈敬偉呼吁,結束対中国人迫害！）」。

つまり、この勇気ある中国人女性は、堂々と本名を名乗り、迫害を受ける全ての中国人のために、ただ一人、声を上げて訴えているのだ。

習近平よ、聞こえるか！（習近平、你聴着了吗）。彼女の声は、サンフランシスコの街に響き渡り、天にも届く力量をもつものだった。

また「China has concentration camps（中国には強制収容所がある）」と書かれたプラカードを掲げて、街頭を練り歩く男性も見られた。

この「concentration camps（強制収容所）」とは、ナチス・ドイツのアウシュビッツ収容所などと同義語の言葉である。

（黒竜江省からの陳情民・賈敬偉さん。「習近平よ、聞こえるか！」と、天にも届くような声で中共の非道を訴えた）

中共の非道を象徴する「鉄の鎖の女性」も登場

抗議活動の現場には、中国の悲惨な現状を象徴する「鉄の鎖の女性」まで現れた。

「鉄の鎖の女性」事件を紹介する中国語と英語の巨大パネルのそばには、首に鉄のチェーンを巻かれた女性が立っている。パネルには、こう書かれていた。

「2022年1月、中国江蘇省豊県のドアもないぼろ小屋のなかで、鉄のチェーンを首に巻かれてつながれる女性を映した動画がネットに流出した。彼女は24年もの間、虐待され、何度も人身売買をされた。精神疾患を患いながらも8人の子供を産まされた」

「彼女の身に起きた非人道的な苦難は、世論に衝撃を与えた。しかし、さらに驚くことに、中国にはこのような女性がまだ大勢いるのだ。彼女たちの苦難は、全て中国共産党と習近平による統治がもたらしたのだ！」

高智晟氏の妻・耿和さんも参加

中共に抗議する民衆のなかには、「中国の良心」と呼ばれる人権弁護士の高智晟氏の妻・耿和さんの姿もあった。

耿和さんは、中共に拉致されて以来、最後に消息が確認されてから6年間も行方不明になっている夫・高智晟氏の顔写真入りの看板を掲げて抗議をし、習近平と中共当局に対して、夫の行方について明らかにするよう求めた。