面接の後に告げる「給与は募集要項の半額」 若者を苦しめる中国就職事情

2023/11/12
更新: 2023/11/14

景気の低迷による「史上空前の就職難」が大きな社会問題になっている中国で、この頃、あるSNS投稿が物議を醸している。

中国でも最難関といわれる大学の大学院で修士号を取得し、今年卒業した学生がいる。彼は就職活動に臨み、ある会社を志望して面接試験を受けた。面接の感触は、わるくなかった。内定を得られただろうと安心していたところ、会社側から思わぬことが知らされた。

募集要項には、確かに基本給5千元~7千元(約10万~14.5万円)と記されていた。しかし、面接の後に、学生へ提示された給与の額は「月3400元(約7万円)」だったのである。

彼は、その会社への就職を強く志望している。しかし、仮に内定を得たとしても、面接後に「給料はこれだ」と半額ほどの数字を提示されたら、困惑するのも無理はない。

まして今は、極端なほどの「買い手市場」である。就職を希望する学生側の立場があまりにも弱いため、採用側から「給料は半額」などと後から告げられても、どうにもならないだろう。

「嫌なら辞退しろ。代わりは、いくらでもいる」と言われればおしまいである。困惑する彼がこの後、どのような結論を出したかは伝えられていない。

この学生は、実際「僕は、中国のなかで最も入学が難しい『985工程』に選ばれている大学をでた新卒修士だ。それなのに、この給料だなんて。普段のアルバイトでも、これより収入は多いはずだ」と、改めて提示された金額に不満をもったようだ。

これに対して、ネット上では「何を言う。就職できるだけでも、ありがたく思え」といったコメントが殺到した。エリート意識の強いこの学生の要求には、いくぶん冷ややかな世間の反応が寄せられたようだが、中国における就職難の実態が改めて浮き彫りになったとも言える。

なお、学生のいう「985工程」とは、中国教育部が1998年5月に定めたプログラムで、大学における研究活動の質を国際レベルに引き上げるため、211校の重点大学のなかで特に選抜された「39校」に国家が優先して投資していくものである。その点では、この学生がいうように「最難関の大学」といって間違いではない。

この学生が応募した企業の求人サイトには、応募条件として「修士号以上の学歴、および学術論文発表の経験を持つこと」が条件だった。この学生は、その条件をクリアしている。また、募集要項に書かれた月給は「5千元~7千元(約10万~14.5万円)」だった。

しかし、実際、面接後に提示されたのは3400元(約7万円)だ。それを学生に告げたとき、企業の採用担当者は「いまどき修士号をもつ人間など、街にあふれかえっている」と話したという。

これに関連する投稿には、「確かに今、高学歴者は、あふれかえっている」といった現状肯定型のコメントから、学歴に偏重しすぎる中国の現状を批判するように「学歴など関係ない。就職に関しては、社会の需要と供給(のバランス)こそ根本的な問題だ」など鋭い指摘が寄せられた。

なかでも圧倒的に多かったのは、今の世相を反映するように「えり好みをしている場合か。仕事にありつけるだけで、幸せだと思え」など、この学生に対する厳しいコメントであった。

中国の大学生や大学院生にとって「卒業は失業」とも言われるほどの就職難である。ともかく、失業するよりも「何とか職を得て、生命を維持することが最優先になっている」と言ってよい。この苦難が、いつまで続くのか。その答えは、誰も知らない。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。