いったい何のために、そうするのか。全く理解に苦しむような光景である。
法律論はともかく、人間の尊厳を踏みにじるという意味においては、もはや「犯罪」と言ってもよい。
今月26日、四川省成都のある会社で「営業研修」が行われた。その際に、研修を受ける側とみられる複数の女性が、並んで交代しながら、椅子に座っている女性の頭にコップを使って水をかけている。
座って水をかけられている女性も、同じく研修を受ける側の一員であろうか。動画から想像するかぎり「成績不振の研修生に対し、見せしめのため、皆で懲罰を与えている」ようにも見えるが、その確認は得られない。
水をかける側の女性たちは、みな泣いていた。コップで水をかけた後、逃げ帰るように元の列へ戻って行く。その姿は「こんなこと本当はやりたくないのに、やらざるを得ない」という悲鳴そのものである。
その場面を捉えた動画がSNSに拡散され、物議を醸している。
企業側は「これは会社の内部活動であり、研修を受ける社員は自由意思で参加している。社員たちは、そのような自己奮励を必要としている」と主張している。
(動画はこちら)
この「水かけ事件」は多くの中国メディアが取り上げて報道しており、会社側の「自由意思による参加」という主張には批判が殺到している。
「自由意思で参加しているのなら、なぜ泣いている?」「参加しないとクビにされるから、仕方なく参加しているのがわからないのか。人を人として扱わない会社なんて、絶対潰れるぞ」といったコメントが相次いだ。
繰り返すが、この会社が何のためにそうするのか(させるのか)全く分からない。
ただ一つ、寄せられたコメントにもあったように、自由意思での参加といいながら「参加しないとクビにされる」という指摘は、まさに当たっているとみてよい。もちろん「命令に反して、水かけを拒否したらクビにされる」ことも確実であろう。
そう断言できる根拠は、苦悶の表情で、泣きながら同僚に水をかける彼女たちの「涙」である。
人として許されないことを強要されるのは理不尽以外の何ものでもないが、恐るべき就職難の現在、他の仕事へ転職できる当てはない。
この「研修」で彼女たちは、人間の良心を捨てろと言われているに等しい。
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