今月27日、中国の李克強前首相が「心臓発作により急死した」と中国官製メディアが報じた。享年68歳であった。

あまりに突然なその死をめぐって、数々の疑惑が浮かび上がっている。その一方、ネット上では流行歌「可惜不是你（あなたでないのが惜しい）」を投稿する人が相次いだ。

その後、この歌は「再び」当局の検閲対象となった。いま中国のネット監視部門は、このラブソングをネット上から血眼になって削除している。

検閲対象にされた理由は、中国人には「言わずと知れたこと」である。つまり、題名と歌詞にある「可惜不是你」の部分が「亡くなった人が（習近平でなくて）李克強だったのが惜しい」と読めるからだ。

マレーシア出身の女性歌手・梁静茹さんがうたう「可惜不是你」は、歌のタイトルと歌詞にある「あなたでないのが惜しい」のフレーズのせいで、昨年末に中国の江沢民元国家主席（96歳）が死去した際にも、同様の理由で検閲対象になった。そのため、今回は「再び」なのだ。

もちろんこの歌は、まったく政治性のない流行歌である。しかし、その歌詞と題名のせいで、SNS上では歌のトピックスごと削除されたり、音楽プラットフォームから存在を抹殺されるなど、なんとも理不尽な「とばっちり」を受けてきた。

昨年7月に、日本の安倍晋三元首相が凶弾に倒れた後も、関連投稿には「あなたでないのが惜しい」「あの人だったらいいのに」というコメントが多く寄せられた。

ここで言う「あなた」や「あの人」も、同じく習近平国家主席を暗示したものとされている。