イスラム組織ハマスによるイスラエルへの突然の攻撃は、ロシアに続く新たな戦争を引き起こし、世界に衝撃を与えた。
専門家は、ロシアとウクライナの戦争が続く中、米国が世界の平和を守るためにさらなる助けの手を差し伸べることができるかどうかを憂慮している。特に中国共産党(中共)は、台湾の領有権をめぐって戦闘を繰り広げる危険性が高い。
10月7日早朝、ガザを拠点とする米国指定テロ組織ハマスが突如イスラエルに向けて数千発のロケット弾を発射し、その後、陸・海・空から総攻撃が行われた。ハマスのテロリストたちは女性や子供らをも攻撃し、多くのイスラエル軍兵士や民間人を人質として誘拐した。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はイスラエルは「戦争状態にある」と宣言。軍はハマスとの戦いに全力を挙げており、戦争は長期化する可能性が高いと強調した。
日本や米国、英国、EU、インド、ウクライナなど数十か国がイスラエルとの連帯を表明し、ハマスのテロ行為を非難している。一方、レバノン、イラン、カタール、クウェート、イラクはハマスに同調し、イスラエルに非があると主張している。
中国共産党の姿勢は興味深い。中国外務省は8日、市民を保護するために敵対行為を直ちにやめ、冷静さを保つよう関係当事者に呼びかけ「紛争を解決する根本的な方法は2国家解決策を実施し、独立したパレスチナ国家を樹立することにある」と述べた。
これに対して、在中国イスラエル大使館のユバル・ワクス副代表は反発し、中国はハマスに対して「より強い非難」を行うべきだと主張。「人々が殺害され、路上で虐殺されているとき、2国家解決を呼びかけている場合ではない」と非難した。
ロシアやサウジアラビア、エジプト、トルコも中国に類似の態度を示している。これらの国々は、すべての当事者が緊張のさらなる激化を避け、事態が制御不能になるのを防ぐために、すべての当事者が自制すべきだと述べた。
こうしたハマスによるイスラエルへの最も壊滅的なテロ攻撃に対して「冷静さを保つとか、自制するとか」を呼びかけることは無意味だと米国在住の中国政治専門家シー・シャン氏にエポックタイムズに語った。
「今この瞬間に『自制』を口にする国々は、裏で糸を引き、暗にハマスを支援している可能性が高い」
ハマスがイスラエルを攻撃する動機について、アントニー・ブリンケン米国務長官は、イスラエルとサウジアラビアの関係正常化を妨害する狙いがあると示唆した。
この中東の戦争がどこまで進行し、より広範囲に広がるかどうかはまだ不透明なままだとシー氏は言う。
しかし、国際秩序の擁護者であり、イスラエルの同盟国として、米国はただ座視するつもりはない。
「問題は、米国がそのために十分なエネルギーと資金を持っているかどうかだ」とシー氏は述べ、米国がロシアに対抗するためにウクライナに大規模な支援を提供していることに言及した。
中国共産党を警戒せよ
米国は「二つの戦争に同時に勝つ」という戦略を持っているが、その戦略的重心は中東にはない、とシー氏は言う。
8月9~18日まで、米海軍と米海兵隊は、欧州、大西洋、インド太平洋地域の22のタイムゾーンにまたがり、2万5千人の軍隊を動員した大規模な軍事演習を行った。
このタイムゾーンは、米国が大西洋ではロシアと、インド太平洋地域では中共と、2つの異なる地域での戦争に同時に備えていることを示唆している、とシー氏は言う。
米国艦隊総軍司令官のダリル・コードル大将は8月、「われわれは、世界的に力を投影する能力を維持しなければならない」と発言した。
中国共産党の習近平国家主席は、3期目の目標として「台湾統一」を掲げている。同党の攻撃的な姿勢に各国が警戒する中、バイデン米大統領は、中共が武力で台湾を侵略した場合、米国は台湾を防衛すると繰り返し発言している。
「中東での紛争が戦争に発展した場合、米国は同時に2つの戦争に対処できるとしても、3つめの戦争に対処できるのか? それはかなり困難なことだ」とシー氏は指摘した。
「この現状は中国がまさに望んでいる状況だと危惧している。だから、中共の些細な動きにも注意を払う必要がある。中共には要注意だ」
またシー氏はハマスの背後にいる勢力にも懸念を示した。同氏によれば、ハマスの激しいロケットとミサイル攻撃の背後にいるのは、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラを支援しているイランだという。ヒズボラはハマスを支配している。
中国共産党がイランと緊密な関係にあることから、同党がハマスのイスラエル攻撃に一役買っている可能性が高い、とシー氏は言う。
ハマスとは1987年に設立した宗教・政治組織で、多くの西側諸国がテロ組織と指定している。それでも中国共産党、ロシア、そしてほとんどのアラブ諸国は抵抗組織と呼んでいる。ハマスとイスラエルは、その政治的、宗教的主張や、国境をめぐって長い間対立してきた。
“金を燃やす”戦争
ロシアによるウクライナ侵攻から約20か月が過ぎた。しかし、その侵攻は止む気配がない。
キール世界経済研究所によると、米国議会は開戦以来、人道支援や財政支援、軍事支援などで750億ドル(約11兆円)以上の援助をウクライナに提供してきた。
米国議会内では、ウクライナへの援助の削減を求める声が上がっている。米連邦議会で新たな予算が成立しなかったため、政府閉鎖の危機に陥った。
下院がウクライナへの追加援助を省いた短期法案を僅差で可決したのは9月30日の深夜だった。一方、マッカーシー下院議長は、この法案に不満を持つ共和党内の少数派によって解任された。
ブリンケン米国務長官は9月24日、議会がキーウへの援助を打ち切れば、ウクライナは今秋の反攻で深刻な経済的・政治的打撃を受けると警告した。
米国と他の援助国は、ウクライナの公務員15万人と教職員50万人以上の給与のほか、ウクライナ政府支出の医療費や住宅補助なども支払っている。
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