法輪功についての報道、利益優先の国際メディアは及び腰=人権弁護士

2023/10/13
更新: 2023/10/13

カナダの著名弁護士は最近の講演で、国際的なメディアは中国共産党の法輪功迫害について積極的に取り上げていないと批判した。中国市場の経済的な利益を優先すれば、深刻な人権侵害の実態を国際社会に伝えることができないと警鐘を鳴らした。

大阪大学大学院国際公共政策研究科所管のシンクタンク「国際学術フォーラム(IAFOR)」は最近、カナダ勲章受賞の人権弁護士デービッド・マタス氏によるプレゼンテーションを公開。ジェノサイドと報道が与える影響要因を、3つの事例を比較して説明した。

ルワンダのツチ族虐殺やボスニアのムスリム迫害、そして中国共産党の法輪功学習者に対する強制的な臓器摘出「臓器狩り」についてだ。法輪功へのジェノサイドのみ、“現在進行形”であるとした。

1994年、ルワンダで発生したツチ族の虐殺は、わずか100日間で80万人以上が命を失ったとされる衝撃的な事件だ。この大量虐殺は、フツ族の過激派によってツチ族と穏健なフツ族に対して行われた。この事件は、民族間の対立と政治的な緊張が背景にあり、国際社会の介入が遅れたことも大きな問題として取り上げられた。

1992年から1995年にかけてのボスニア戦争中、セルビア人勢力によるボスニアのムスリムへの大規模な迫害があった。数十万人が殺害され、多くの集団墓が発見されている。この迫害は、セルビアの報道機関によるムスリムを悪魔化させるプロパガンダや、民族間対立が背景にあった。

法輪功(法輪大法とも)は1990年代、中国で始まった気功修煉法。中国共産党党員数を凌ぐほどの人気を誇り、恐れを抱いた共産党政権は1999年に活動を禁止した。以降、数多くの法輪功学習者が拘束され、拷問を受けたり、臓器強制摘出の対象となったりするなど、深刻な人権侵害が続いている。 

「法輪功に関する大量虐殺の報道は、特に中国政府の情報隠蔽やプロパガンダの影響を強く受けている。これにより、真実が歪められ、国際社会の関心が低くなっている」とマタス氏は指摘した 。

さらに、ジェノサイドの報道に影響を与える要因として、大量虐殺の進み方、加害者の隠蔽、目撃者の証言、ジェノサイドの方法、報道の立ち入りなど14つの要素を挙げた。その結果、少なくとも他の二つの例より法輪功迫害のほうが、加害側に有利な状況が生まれているとした。

例えば、ツチ族の犠牲者の証拠や証言は明確に発見されたが、法輪功のケースは刑務所や病院が閉鎖的であるため、海外の報道機関がアクセスできず、遺体は焼却されてしまう。ツチ族に対する加害者のイデオロギーに賛同する者は少ないが、法輪功の弾圧は共産党政権の情報統制やプロパガンダにより、ある程度の正当性が与えられている。

ボスニアのムスリム迫害には国際的な関心が高く、北大西洋条約機構(NATO)の介入や国際刑事裁判所での裁判が行われた。しかし、法輪功の迫害には国際機関の介入が見られない。

「マスメディアは、法輪功学習者が受けている人権侵害の実態を正確に伝える責任がある。しかし、多くは中国政府の圧力や経済的な影響を恐れ、報道に及び腰である」とマタス氏は批判した。

実際、多くの国際的な報道機関は、中国市場へのアクセスの維持や広告収入の確保のため、法輪功に対する人権侵害の報道に積極的ではない。これにより、人権侵害が進行中にもかかわらず、法輪功学習者たちの訴えが国際社会に届かない状況が続いているとした。

日本の安全保障、外交、中国の浸透工作について執筆しています。共著書に『中国臓器移植の真実』(集広舎)。