イタリアのアントニオ・タヤーニ外相は2日、同国が参加する中国主導の広域経済圏構想「一帯一路」から離脱する可能性を示唆した。「期待された成果が得られなかった」と強調した。
タヤーニ氏はイタリア北部のチェルノッビオで経済フォーラムに出席し「一帯一路では私たちが期待した経済的利益を得られなかった」と強調。「このプロジェクトへの参加を継続するかどうかは、イタリア議会が評価した上で決定する」と明らかにした。
タヤーニ氏は「昨年のイタリアの対中輸出額は165億ユーロ(2兆6000億円)にとどまったが、(一帯一路に参加していない)フランスとドイツはそれぞれ230億ユーロ(約3兆6200億円)、1070億ユーロ(16兆8500億円)に達した」と指摘した。
かつて欧州議会議長を務めたタヤーニ氏は「イタリアのメッセージは非常に明確だ」と述べ、「我々は中国と協力したいが、公平な競争の場を持つことが重要だ」と強調した。
中国は2013年、自国とアジアやヨーロッパを繋ぐ、経済ベルトを構築するという大構想を打ちあげた。これまで専門家らは「一帯一路は中国共産党が地政学的な力と経済的な影響力を拡大するための手段に過ぎない」と批判の声を上げてきた。
イタリアは主要7か国(G7)の中で唯一、一帯一路に参加している国だ。イタリアが一帯一路を脱退する場合、中国に大きな打撃を与えると分析される。
意思決定の期限
イタリアは、5年目を迎える12月22日までに参加更新の可否を決定しなければならない。それまでに離脱の表明をしなければ、自動的に5年更新される。
タヤーニ氏は、イタリアがいつ決断を下すかは明らかにしなかったが、イタリア政府高官が一帯一路を公然と批判したのは今回が初めてではない。
7月、イタリアのクロゼット国防相は「4年前のイタリアの一帯一路参加決定は即興的でお粗末な行動だった」と発言した。クロゼット氏は、中国の対イタリア輸出が増加したいっぽう、イタリアの対中輸出は増加しなかったと指摘した。
その上で、「私たちはこれまで中国に大量のオレンジを輸出してきたが、中国はわずか3年間でイタリアへの輸出を3倍に増やした。最もばかばかしいのは、一帯一路に参加していないフランスが中国に数百億ドル相当の飛行機を売ったということだ」と付け加えた。
メローニ首相も7月にバイデン米大統領とホワイトハウスで会談した際に「イタリアはG7の中で唯一、一帯一路に参加しているが、G7諸国の中で中国との貿易量が最も多い国ではない」と指摘した。
「ルールがない自由貿易が私たちの問題を解決すると同時に、非民主的なシステムを民主化できると考えていた。しかし、今や中国はより強くなり、私たちはサプライチェーンをコントロールできなくなった。だから再考しなければならない」
一帯一路参加をめぐる論争は依然として続く
イタリアが2019年に一帯一路に参加した際、イタリア内外から懸念の声が上がった。専門からは「3大陸を横断する貿易ルートでインフラは中国の資金支援を受けている。これにより発展途上国が負債を背負うと同時に、中国が地政学的、軍事的影響力を拡大する」と警告した。
欧州連合(EU)執行委員会も戦略報告書を発表し、中国を「競争相手」と規定し、中国との関係をEUレベルでリセットして、距離を置くべきだと判断した。EUの2つのエンジンであるドイツとフランスも「イタリアが間違った道を進んでいる」とし、「イタリアの一帯一路への参加はイタリアの国益にも合致せず、物議を醸す中国のプロジェクトに正当性を与える役割をしただけ」とした。
イタリア当時のサルヴィーニ副首相兼内務大臣も、一帯一路に反対の意を表明し、「中国に自由市場は存在しない」と公然と構想を批判した。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。