このごろ、雲南省でデングウイルスによる感染症「デング熱」が急拡大している。
病院は感染した患者で大混雑し、現地の市民によると「何人も死者が出ている」とのこと。しかし当局は、新たな疫病が発生していることについて隠蔽しており、いかなる感染状況の公表も行っていない。
中国官製メディアによると、雲南省弥勒市では「媒介生物(ヒトに病原を伝播するベクター)」の殺虫消毒作業を18日間(8月29日~9月15日)にわたって行っている最中だ。しかし報道では、この殺虫消毒作業を行う理由について一切言及されていない。
殺虫消毒を行う理由について、エポックタイムズの取材に応じた弥勒市民の李さんは、「デング熱の感染拡大のためだ」と明かした。現在、市内は連日、消毒作業をおこなう白煙でいっぱいだという。
いっぽう雲南省当局は、今回のデング熱の感染拡大について、感染者数や死亡者数などの情報を一切公表していない。雲南省の衛生当局の公式サイトにあるデング熱関連の情報といえば、現在のところ「テング熱の予防法」に関する記事が2本あるだけだ。
雲南省シーサンパンナ(西双版納)タイ族自治州景洪市の「第一人民医院」の医療スタッフは9月1日、エポックタイムズの取材に応じ、次のようにコメントした。
「デング熱のため、病院にくる患者は毎日100人から200人はいる。そのため病床が足りず、こちらでは入院を断るほど混雑している。しかし、若い人でも死亡することがあるため、デング熱に感染したら病院での治療は必須だ」
デング熱に感染し、現在は回復した地元市民の王さんによると、「私の周りの多くの人たちが(私と)同じようにデング熱に感染している。私が知っているだけでも、2歳の子供と60代の高齢者2人がすでに亡くなっている」という。
王さんはデング熱にかかってからの半月の間、発熱、頭痛、嘔吐、下痢などの症状が出た。その後になると、体じゅうに「かゆみを伴う発疹」が出て苦しんだという。
「本当に辛かった。今はなんとか治ったが、体は衰弱しきっており、歩くだけでふらふらする。しかも脳と口が連携してくれないせいか、ろれつが回らず、うまく話せない。新型コロナより大変だ」。王さんはそう述べて、自身の体験を振り返った。
地元市民の劉さんの場合は、家族全員(3人)がデング熱に感染した。劉さんは「特に今年は感染状況が深刻だ。空港(シーサンパンナ・ガサ空港)付近が最も感染が深刻な地域になっている。病院行ったら、ほとんどの来院者がデング熱感染だった」と明かしている。
デング熱は、蚊に刺されることによってデングウイルスに感染する疾患で、急な発熱から発症し、発疹、頭痛、関節痛、吐き気や嘔吐などの症状が見られる。ほとんどの感染者は1~2週間で好転するが、一部の感染者は重症化し、死亡するケースもある。
現在のところ、デング熱に対する特効薬はなく、治療は症状に応じた対症療法が基本。 脱水予防として、経口による水分補給や点滴での補液が重要となる。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。