米証券取引委員会(SEC)は25日、米複合企業スリーエム(3M)が海外腐敗行為防止法(FCPA)に違反した容疑を解決するために、650万ドル(約9億5千万円)以上を支払うことに同意したと発表した。3Mは業績向上を図るため、中国政府当局者に海外旅行を提供していたとされる。
FCPAは1977年に制定された法律で、ビジネスの獲得や維持のために外国公務員に賄賂を支払うことを禁じている。
SECによると、中国に拠点を置く3Mの完全子会社は2014年から2018年まで、会議やマーケティング活動に参加するという名目で、中国当局者の海外旅行、観光、娯楽活動を手配していた。こうした旅行は24回に上り、計100万ドル(約1億5千万円)近くが費やされていた。
観光地はロサンゼルスやナッシュビル、シドニーなどで、当局者の配偶者が参加することもあったという。
また、これらの旅行は中国当局者が出席するイベントに合わせて計画されていた。中国当局者11人が参加した3都市を巡る9日間のツアーでは、公式日程表が「教育イベント」で埋め尽くされていたものの、中国当局者がこうしたイベントに出席することはほとんどなかったという。
一方で、3Mは容疑の認否を明らかにせず、内部統制環境とコンプライアンス・プログラム強化などの改善策を講じるとした。
FCPAの事例
FCPAユニットのチーフであるチャールズ・カイン氏は、3Mの和解について「この問題は、不適切な内部会計管理がグローバルに事業を展開する企業にもたらす危険性を浮き彫りにした」とする声明を発表した。
中国では近年、他にもFCPAケースが発生している。
5月には、オランダを本拠地とする大手医療機器メーカー、フィリップスが中国での医療診断機器の販売の際に中国側に賄賂を渡した疑いを解決するために、6200万ドル(約90億5千万円)以上を支払うことに合意した。SECによると、フィリップスは合計で約4100万ドル(約59億9千万円)の利益を「不当に得ていた」という。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。