「予告なしのダム放水で、家も農地も失った」 絶望の末、自殺する被災民も=中国 黒竜江

2023/08/21
更新: 2023/08/22

「予告なしのダム放水で、私たちの小さな町が水没した。これは天災ではない。人禍だ」

黒竜江省ハルビン市の県級市のひとつ尚志市(しょうしし)に属する小さな町の住民、陳敏徳(仮名)さんは16日、エポックタイムズの取材を受けた際に、こう訴えた。

陳さんの住む町は最近の洪水災害の被害を受けて、完全に水没した。町民の全てが被災者となった現在、家や全財産を失った衝撃から立ち直れず、絶望の末に自殺する人もいるという。

災害発生後、地元政府に何度も救援を求めたが、政府側は被災民のための住宅手配はおろか、全く何もしなかったという。

陳さんの住む町では、今月4日夜にダム放水が行われたが、陳さんも、また市内の別の集合住宅に住む陳さんの姉も「避難通告は一切受けていない」という。

「水がどんどん増えたころになって、やっと人々は洪水が来たことを知った。しかし、その時には何も持ち出すことが出来ずに、体一つで逃げ出すしかなかった」

「私が生まれてから40年以上経つが、こんなに多くの水を見たことがない。今回、町を襲った洪水は降雨と何の関係もない。全てダム放水のせいだ」と陳さんは語った。

現在、水は引いたが、残されたのは、あまりにも無残な廃墟となった町である。被災した人々は、住む場所がない。

水に浸かった家屋は、人が住むことはできない。そのため、なんとか住む場所を手配してもらおうと被災民は連日のように政府に求めているが、政府側は全く対応しようとしない。

こうした政府の不作為は、被災の重圧に耐えられず40代の女性がビルから飛び降り自殺をした後、ようやく動きだした。しかし、地元政府がしたことは、被災した村民にわずかな米や食用油、インスタントラーメンを数パック渡したくらいである。住む所の手配は、しなかったという。

「彼ら(政府)はいつもこんな調子だよ。何か起きたら、少しだけ食べものを与えて、あしらおうとする。すべては外部に見せるためにやっているに過ぎない、本当に被災した人たちは、何ももらえない。国からの補助金が一体どこに消えたのか、知りたいよ」

政府の不作為に、陳さんは怒りを露わにした。

尚志市は、320万畝(21万ヘクタール)以上の耕地面積をもつ「農業大市」で、水稲、大豆、トウモロコシを盛んに生産している。しかし、今回の洪水で広大な農地が「一面の海」と化した。その多くが、収穫目前の時期であった。

今回の洪水では、尚志市だけでなく、黒竜江省内のハルビン市や牡丹江市など多くの地域でも被害を出した。

中国米の最高級ブランドといわれる「五常大米(五常米)」は、日本で言えば「魚沼産コシヒカリ」に相当する良質米だ。その五常米の産地である黒竜江省五常市も深刻な被害を受けた。収穫目前であった稲田は完全に水没し、壊滅状態になった。

(2023年8月6日、浸水する黒竜江省ハルビン市の尚志市)

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。