ドイツ国籍をもつ華人(中国系ドイツ人)が旅行で中国へ行ったところ、空港で中国の公安警察によって不当に拘束され、尋問される事件が起きていたことがドイツメディアの報道で明らかになった。現在、ドイツ当局は調査に乗り出している。
ドイツのメディア「Correctiv(コレクティブ)」は7月8日、この事件について報じた。その少し前に、ある中国系ドイツ人が旅行で中国を訪れた。ところが空港に到着すると、待ち構えていた現地警察によって個室に連行され、そこで数時間にわたる尋問か行われたという。
現地警察は、ただの旅行者であるこの華人に対し、どこから入手したのか(その華人が)ドイツで中国共産党に反対する活動に参加した際の「証拠写真」を突き付けて、こう強要した。
「他の抗議者の名前など、あなたが知っている情報を(我われに)提供しなさい」
空港でいきなり拘束されたこの華人は、数時間にわたって取り調べを受けた。ついに精神的限界に達し、抗議者の仲間2人の情報を告げた後ようやく解放されたという。中国の警察官はこの華人に対し、「今後も中国側に情報提供を続けるよう」求めた。
ドイツに帰国後、この華人は自身の中国での経験をメディアに打ち明け、事件が明るみになった。
「Correctiv」によると、ドイツの国家安全部門が現在この件に介入しているという。ドイツ外務省による声明のなかに「外国籍を取得した華人に対して、中国が国際法を遵守しない事例は過去にあった」とする記述があった。今回の中国警察による「外国籍人」に対する扱いも、国際法に抵触する可能性がある。
海外で人権擁護イベントや中国共産党に反対する活動に参加したことがある中国人留学生や華人のなかには「いま帰国したら、どんな目に遭うかわからない」という理由で、身の危険を感じ、帰国をためらう人も多い。
国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)が2021年6月に発表した「彼らは私たちの恐怖を理解していない_中国の越境弾圧が豪州の大学の学問の自由を脅かす」と題された報告書のなかで、「豪州の大学には中国からの監視が蔓延しており、近年は、さらに強まっている」と指摘した。
同報告書が引用した、ある中国人留学生の言葉はこうである。「私は(中共の検閲に引っかからないように)自己検閲をしなければならない。これが私たちが直面している現実だ。私は豪州に来た。しかし、依然として自由ではない」
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