米国は世界第一位の軍事大国であり、中国は第三位だ。アメリカに追いつくためには、中国が一定の経済成長水準を維持せざるを得ない。しかし、景気の鈍化と少子高齢化への懸念が高まるなか、カーネギー財団は中国の長期的なGDP成長率は2~3%を超えないと予想している。
2022年7月26日に発表された『米海軍作戦部長ナビゲーション・プラン』は次のように指摘する。「世界は新しい戦争の時代に突入している。艦隊の規模だけではなく、テクノロジーとコンセプト、パートナー、そしてシステムを統合させた能力こそ、紛争の勝利を左右する」
世界の国々がインフレを抑制するために金利を引き上げるなか、中国中央銀行は逆に5年間の商業ローン金利と住宅ローン金利を引き下げ、停滞した経済を刺激しようとしている。中国の若年失業率は20.8%に達し、輸出の減少と債務の増大、経済成長の鈍化に直面している。同時に、人口の高齢化も進んでいる。 昨年、中国では死亡者数が出生者数を上回った。経済の鈍化と人口の高齢化を前に、中国共産党(中共)の軍事的野心は挫折する可能性がある。
中共指導者習近平氏のビジョンの第一部は、2035年までに軍隊の現代化を実現することだ。皮肉なことに、その時には、人口の30%が60歳以上になると予想されている。習近平氏のビジョンの第二部は、2049年までに中共の軍隊を「戦争して勝てる」世界一流の軍事組織に作り替えることだ。いっぽう、2050年には中国人口の52%が65歳以上になると予想されている。
軍事力は経済力と密接な関係がある。裕福な国は軍事にもっと多くの資金を使えるからだ。裕福な国ほど、次世代の兵器や技術開発の資金も潤沢になる。
現在、米国は多くの分野で中共を凌駕している。米国は世界GDPの20%を占めているが、中国は約15%に過ぎない。2022年、米国は軍事費に8770億ドル(約125兆4110億円)を費やしたが、中共は2920億ドル(約41兆7472億円)に過ぎない。冷戦終結以来、米国は19兆ドル(約2470兆円)を軍事費に費やしてきたのに対し、中共は3兆ドル(約390兆円)しかなかった。これらの支出により、米国は通信やコンピュータ、情報、監視偵察を含む技術的な優勢を獲得した。航空機や地上兵器、海洋兵器システムでも世界の先頭に立っている。
中共はアメリカに対抗するため、海軍の規模拡張を先に考えている。
現在、米国は11隻の空母を保有しているが、中共は2隻しかない。中共は米国よりも速いスピードで艦船を建造しており、今後2年以内に艦船数は400隻を超える見込みだ。中共海軍は米国よりも多くの艦船を保有することになるが、能力や火力に問題が生じると思われる。ほとんどの艦船は米国の艦船に及ばないからだ。
中共は200発の核弾頭を保有しており、この数は今後10年以内に倍増すると予想されている。しかし、米国は既に約4千発の核弾頭と1600発の戦略兵器を保有している。核弾頭1個あたりのコストは490万ドル(約6億3700万円)から840万ドル(約10億9200万円)の間であり、艦船のコストは約34億ドル(約4867億円)に達する。北京当局は軍隊の現代化に多額の資金を費やすことになるだろう。
同時に、米国には中共が到底手にすることができないいくつもの財産がある。ワシントンはNATOとAUKUS(米国、英国、豪州3か国の同盟)という地球上で最大かつ最も強力な軍事同盟のメンバーである一方、北京は北朝鮮とだけ防衛協定を結んでいる。米軍は世界41か国で516もの施設からなるネットワークを維持している。さらに、米軍は80か国以上に軍事基地を設置しており、その広範な影響力は他国を凌駕する。
米軍は作戦経験の面でも有利だ。米中双方が参戦した朝鮮戦争以降、米国はベトナム、アフガニスタン、イラクでの戦争に参加し、同時にパナマ、グレナダ、第一次湾岸戦争、コソボでは短期ではあるものの大規模な軍事作戦を行ってきた。米国はまた、ラテンアメリカ、アフリカ、アジア、そしてヨーロッパで数多くの小規模な作戦を執行してきた。いっぽう、中共はベトナムやインドとの小規模な衝突、海賊摘発や国連平和維持活動を除いて、ほとんど作戦経験がない。
人口高齢化及び経済の衰退に伴い、中共が軍事的に米国を凌駕するという目標を達成できるかどうか怪しくなっている。一部の専門家は、中共が台湾侵攻を遅らせているのは、軍事力において米国とその同盟国と対抗できるレベルにまだ至っていないからだと考えている。
しかし、軍事力を増強する間、中国の経済は減速し続け、人口は減少すると予想されている。一方、米国の軍事支出は年々中共を上回っており、北京当局がその格差を縮めることはますます難しくなっている。
習近平氏はこうした事実を知っているはずだ。問題なのは、中共が台湾に対して早急に行動するのか、それとも軍隊が最適な状態になるまで待とうとするのか、である。もう一つの問題は、そのような最適条件が果たして揃うのか否かである。
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