Mr.ビーン:EVの蜜月時代は終わった

2023/07/02
更新: 2023/07/02

人気キャラクターの「Mr.ビーン」を演ずる俳優兼コメディアンが、環境上の利点に合点がいかないという理由から、電気自動車(EV)の購入を延期するようドライバーに呼びかけた。

電気工学の学位と修士号を持ち、長年、自動車愛好家であるローワン・アトキンソンは、「現在のEV技術は、価値よりも環境に有害である」と語った。

「EVとの蜜月関係は終わりに近づいていると感じている。それは悪いことではない。車の使用が生み出した深刻な環境問題を適切に対処するには、より幅広い選択肢を模索する必要があることを認識している」とアトキンソン氏は、ガーディアン紙に書いている。

彼は、自動車大手ボルボが発表した数字を指摘しながら、EVの製造過程で排出される温室効果ガスは、ガソリン車の製造時よりも70%多いことを明らかにした。

「どうして、そうなのか?」アトキンソンは言った。

「問題の所在は、ほぼすべてのEVに搭載されているリチウムイオン・バッテリーにある。このバッテリーは馬鹿々々しいほどに重く、製造するには膨大な量のエネルギーが必要であり、それらは10年程度しか使えないと推定されている」と。

「それは、車と気候危機との戦いをリードするためのハードウェアの不条理な選択だ」と彼は語った。

EVバッテリーというものは、製造過程がエネルギー集約的であるばかりか、バッテリーの寿命が尽きた後も業界に問題を引き起こしている。米国だけでも、現在から2030年までに600万個のEVバッテリーパックが廃棄物として排出され、スクラップの山になってしまうと予測されている。

アトキンソン氏は、技術開発が進められている全固体電池、水素燃料電池、合成燃料などの取り組みについて、長期的な解決策の可能性として指摘した。しかし、それらが主流になるまでには多くの時間が必要であると指摘した。

彼は、テクノロジーを超えたより大きな問題として、自動車の3年間リースというビジネスモデルがあると指摘した。つまり、車の所有者が3年という単位で新しい車に乗り換えるというものだ。

アトキンソン氏は、「3年乗った車がどれほど素晴らしい状態にあるかを考えると、このモデルは世界の天然資源の法外な浪費のようだ」と述べ、「車の所有者は、その代わりにより長く使用することを学べば、新車のニーズを著しく減らせるだろう」と述べた。

その他の解決策は、環境を心配する人々が単に運転を減らすことだ。「環境保護論者がかつて私に忠告した。『本当に車が必要なら中古車を買って、できるだけ使わないで』」と彼は書いている。
 

コメントは激しい反応を引き起こす

アトキンソン氏のコメントは、ワシントンポストを含むメディアの批判を引き起こした。

一部の専門家は、最近のエネルギーの専門知識が明らかに欠如しているとして、アトキンソン氏を嘲笑した。

また、カリフォルニア大学サンタバーバラ校の気候・エネルギー政策教授であるリア・ストークスは、「エネルギーの専門家でもない90年代の奇妙な英国有名人が、EVに関する誤った情報を@guardianで広めていることに好感を抱く。最高だ!」とツイッターした。

オランダのEV研究者であるオーク・ヘクストラは、アトキンソン氏が重要な事実を「つまみ食いしたのだ」と主張した。

「アトキンソン氏は、現在のバッテリーに対して不平を言っている。より性能の良いバッテリーの出現を期待し、その日を待っているのだ。しかし、既存バッテリーでも車の寿命ほどに使うことが出来、その間で排出されるCO2も3倍少ない(私の実際の研究分野なので、これについては確信している)」と彼はツイッターに書いた。
 

ガソリン車、ディーゼル車を禁止しようという世界的圧力

世界的にネットゼロを進める中で、先進国政府はガソリン車の販売禁止を打ち出している。アトキンソン氏のコメントは、そういう中で発信された。

英国は、2030年からガソリン車とディーゼル車の新車販売を禁止し、2035年からはハイブリッド車の禁止も検討している。首都ロンドンには超低排出ゾーンがあり、水素やバッテリー車以外の運転手に対して、一日12.50ポンドの料金を支払うことを強制する。

一方、米国では、カリフォルニア州大気資源局が連邦政府に圧力をかけ、2035年までにガソリン車とディーゼル車の新車販売禁止を承認させようとしている。

一方、首都キャンベラの本拠地であるオーストラリア首都特別地域の当局も、ロンドンのように、「ゼロエミッション」ゾーンを構築するために動いている。

実際、ACTの誓約は、世界最大都市グループC40によるグローバル協定に準じたもので、2025年からはゼロエミッション・バスのみが運行され、2030年までには都市内に「ゼロエミッション」ゾーンを構築するという。この誓約書は、オークランド、オースティン、ベルリン、ロンドン、ロサンゼルス、パリ、シアトル、バンクーバーなどの都市によって署名されている。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
シドニー在住のエポックタイムズ記者。豪州の国内政治、新型コロナ対応、豪中関係などの国政問題を専門とする。