共和候補乱立、次期米大統領の座を「全員が狙っているわけではない」=専門家

2023/06/24
更新: 2023/06/23

2024年の共和党大統領候補指名争いに加わる立候補者が増えるにつれ、立候補した動機について様々な憶測が飛び交っている。候補者全員が2025年1月に大統領執務室に座ることができると本当に信じているのだろうか。それとも別の思惑があるのか。

現在2024年共和党大統領候補の指名レースは、世論調査で圧倒的なリードを維持しているトランプ前大統領を他のライバル候補らが追っている状況だ。

トランプ氏寄りのコンサルタント、アレックス・ブルースウィッツ氏は、先月25日のエポックタイムズのインタビューで、ティム・スコット上院議員(共和党)の立候補について「彼の頭の中、彼のコンサルタントの頭の中には、(勝利への)道筋がある」と語った。

しかしやはり、政治家はエゴが小さくない。エポックタイムズの取材に応じた関係者によると、ライバル候補には大統領選での当選以外に別の狙いがあるという。

共和党の政治コンサルタントで、ジョン・ケネディ上院議員(共和党)や他の共和党政治家の下での勤務経験がある、自称「ネバー・トランパー(反トランプ派)」のジェームズ・ハートマン氏は15日、エポックタイムズのインタビューで、「もし彼ら全員が合法的に当選できると信じているなら、明らかに妄想に陥っている」と述べた。

サイバーセキュリティの専門家で、2人の共和党副大統領の伝記を執筆したチャールズ・デンヤー氏は14日、エポックタイムズのインタビューで「政治とは立ち位置が重要であり、共和党候補者の大多数は、自分たちに指名獲得のチャンスはないとはっきり分かっている。彼らは間違いなくナンバー2の枠を狙っている」との見方を示した。

著名なジャーナリストのウィリアム・バイク氏も12日、エポックタイムズのインタビューで「共和党の候補者は皆、大統領候補の指名を得るためにレースに参加していると言っているが、そうではない」と述べた。

共和党知事協会及び民主党知事協会のメンバー、リチャード・ゴードン氏は14日、エポックタイムズのインタビューで、「各候補者は、狭き門ではあるが勝利への道筋を見出そうとする。しかし、彼らのほとんどは、副大統領への指名、閣僚への就任に大喜びするだろう」と答えた。

またデンヤー氏は「初期の予備選挙で好成績を残しておけば、当選者は他の候補者の選挙での生存能力に注目できる。ティム・スコット、エイサ・ハッチンソン、ニッキー・ヘイリーら各氏は、わずかな資金と知名度で副大統領や閣僚に選ばれる可能性を求めて、希望に満ちた電話をかけている」と述べた。

スコット氏とヘイリー氏については、地元サウスカロライナ州での予備選が試金石となる可能性がある。

2024年の大統領選を語る上で、両氏の名前は副大統領候補としてよく登場する。いっぽうで、ニュージャージー州のクリス・クリスティ前知事などの名前は出てこない。

背景には、クリスティ氏らがトランプ氏へのけん制発言が目立っているということにあるかもしれないが、これは共和党のリンジー・グラハム上院議員を輩出したサウスカロライナ州では珍しくない風潮である。トランプ政権時代を過去のものとしたい共和党の幹部らは、マケイン家やブッシュ家の外交スタンスへの回帰を切望している可能性もある。

ゴードン氏は、少なくとも一部の候補者は「ポスト・トランプ時代の共和党を見据え、その中で自身のポジションを切り開きたいと考えているのではないか」との考えを示した。

人口統計から見る候補乱立の要因

共和党候補者が乱立している状況について、人口統計学から要因を探る。

米国は数十年以内に現在のマイノリティ’(少数派)がマジョリティ(多数派)になる勢いだ。米国南部の国境を越える不法移民の流入が、この勢いに拍車をかけている。西欧やカナダ、その他の国々でみられる移民増加を要因とした人口動態の変化と同様の現象が起きている。

一部地域で民主党離れがみられるものの、米国の非白人有権者の民主党への支持率は依然高い。

このため、共和党は非白人有権者を惹きつけるために非白人候補を擁立する必要がある。

インド系のヘイリー氏とアフリカ系米国人のスコット氏は、「多様性、公平性、包括性(DEI)」のイニシアチブへの批判をする政党にとって、現在数が膨らむマジョリティからの票集めの面にチェックを入れている。

マイアミ市長のフランシス・スアレス氏も、大統領選挙への立候補を表明している。スアレス氏は共和党候補で唯一のヒスパニック系だ。

「スアレス市長は、もしこれほど長く就任していれば、特にフロリダ州、そして全米のラテン系有権者の間で、予備選挙の有権者の行動に興味深い影響を与える可能性があると思う」とハートマン氏はエポックタイムズに語った。

トランプ支持者の中には、スアレス氏らはトランプ氏の支持層への分断を図るエスタブリッシュメント戦略の一環との見方もある。

トランプ前大統領補佐官のピーター・ナバロ氏は、ツイッターで「本音:ネバートランプ・カルテルが見えざる手だ。彼らは、フロリダにおけるトランプ氏の大規模なキューバ系/ラテン系からの支持層を流出させることを期待して、この操り人形を支持している。キリスト教徒を切り刻む操り人形のペンス氏。サウスカロライナ州予備選序盤でトランプ氏の勢いを止めるスコット氏」と他の候補者を批判した。

人種と性別

また共和党候補者の名簿に女性を入れなければならないというプレッシャーもあるかもしれない。

「トランプ氏に近い」匿名の情報筋を引用して、今年3月に米ニュースサイトの「アクシオス」が報じたところによると、トランプ氏の副大統領候補はヘンリー氏、前アリゾナ州知事候補のカリ・レーク氏、アーカンソー州のサラ・サンダース知事、サウスダコタ州のクリスティ・ノーム知事の女性4人が有力だという。

トランプ陣営のスティーブン・チャン報道官はこの報道を否定。「トランプ氏が何をしようとしているのか知っていると思い込んでる人は重大な誤解をしており、『潜在的な』副大統領候補のご機嫌を取ろうとしている」とした。

バイク氏はエポックタイムズに対し、人口統計上の計算が共和・民主党の政治的戦略の指針になっていると語った。具体例として、イリノイ州のJ・B・プリツカー知事(民主党)とバージニア州のグレン・ヤングキン知事(共和党)が、それぞれ黒人女性副知事候補のジュリアナ・ストラットン氏とウィンサム・シアーズ氏を「ランニング・メート」(副大統領候補)として指名する予定であることを挙げた。

また、バイク氏はバイデン大統領がカマラ・ハリス氏を副大統領に指名したことにも言及。2020年、バイデン氏は「ランニング・メート」に女性を起用すると明言した。また黒人女性を最高裁判事に指名すると宣言し、スティーブン・ブレイヤーの後任に現最高裁判事のケタンジ・ブラウン・ジャクソン氏を選んだ。

この点から見れば、米国政治の未来は一段と人種差別化が進んでいるように見える。

バイク氏は、「トランプとペンスは、最後の白人男性だけの大統領―副大統領になるかもしれない」と述べ、そのうえで「両党とも、大統領候補には白人男性、副大統領候補には女性かマイノリティ、あるいはその両方が選ばれることになるだろう」とした。

大統領の座を本気で狙っているのは誰か

良きにつけ悪しきにつけ、一部の候補者は他の候補者よりも真剣に受け止められている。

例えば、ショーン・スパイサー元米大統領報道官は、クリス・クリスティ前ニュージャージー州知事を「神風候補」と呼び、「トランプ氏への意地悪なツイートが原因で彼を嫌いな人たちは、ドナルド・トランプに対して意地悪な人物を好きになるのだろうか」と語った。

エポックタイムズの取材に応じた人の中には、クリスティに対してもっと好意的な見方をする人もいた。クリスティは大統領以下のポストではなく、実際に大統領の座を狙っている人物だとみられる。

ハートマン氏は、「クリスティ州知事は真剣な候補者だと思うが、指名獲得に必要なほどの勢いはないだろう」と語った。

バイク氏は、クリスティー氏をデサンティス氏、ハッチンソン氏、ペンス前副大統領と並んで、「副大統領や閣僚ではなく、間違いなく大統領に立候補している人物で、彼らは勝つか立ち去るかのどちらかだ」と分析。「特にクリスティとハッチンソンはトランプ批判によりすでにこれを証明している」とした。

いっぽう、大統領選に立候補を表明している実業家のヴィヴェック・ラマスワミ氏については、内部関係者のコメンテーターたちからはそれほど真剣に受け止められていなかった。

デンヤー氏は、「ヴィヴェク氏は、自分自身と自分のブランドをアピールするために出馬しているだけであり、彼が真の保守派であることは間違いないが、彼の戦略は、自由意志で何百万ドルも使えるという理由で主要な政治選挙に飛び込む他の無数の候補者と何ら変わらない」との見方を示した。

またバイク氏は、ラマスワミ氏について「副大統領になるほどの知名度がない」とし、小規模な候補だと指摘した。

ハートマン氏は「ラマスワミ氏は大統領執務室への正当な狙いはない。とりわけ、選挙権年齢を25歳に引き上げるという彼の発言は、投票に行く若い有権者を他の候補者への投票に押し出してしまっている」と述べた。

トランプ氏の法廷闘争からロバート・F・ケネディ・ジュニア氏という「異色」な候補者まで、2024年の特殊な状況が、異例の候補者に思いがけないチャンスを開く可能性はある。

しかし、候補者指名争いの大枠はすでに決まっているという。

デンヤー氏は、「トランプ氏かデサンティス氏のどちらかだ。両者とも莫大な軍資金を持っており、それを最後の一銭まで使い果たし、候補者指名に向けた血みどろの進展の中でどちらかが勝利することになるだろう」とエポックタイムズに語った。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
エポック・タイムズ記者。国政を担当し、エネルギーと環境にも焦点を当てている。核融合エネルギーや ESG から、バイデンの機密文書や国際的な保守政治まで、あらゆることについて書いている。米国シカゴ拠点に活動。