アメリカ軍事 データ品質と「スティグマ(偏見)」が調査の課題

UFO現象の5%は「到底説明できない」=NASA

2023/06/12
更新: 2023/06/12

NASAによれば、目撃された未確認飛行物体(UFO)の2〜5%について、簡単には説明ができないという。

5月31日、NASAは、一般の人々がUFOと呼ぶ「未確認異常現象(UAP)」について議論するために、16人のメンバーからなるパネルディスカッションを開催した。

NASAは7月末までにUAPに関するレポートを発表する予定だ。それに先立つこの討論会では、天体物理学者のデビッド・スパーゲル氏が議論をリードした。 

UAPという用語は、正確には、陸や海、宇宙で目撃される説明のつかない事象に適用される。パネリストらによれば、これまで報告されたUAPはすべて、大気圏内の軍用機や民間航空機が飛行する高度で遭遇したものだという。

NASA研究担当副管理者のダン・エバンス氏は、パネルディスカッションの中で、「近年、空中事象のうち未確認のものについては、未確認異常現象(UAP)と呼ばれており、一般の人々、科学界、政府の注目を集めている」と述べた。

 「今こそ、これらの異常現象を厳格かつ科学的に精査することが、我々に課せられた責務だ」。

 現代のテクノロジーをはるかに凌駕する高速移動球形飛行物の極秘ビデオを政府が公開し、一般の関心が大幅に高まった後、2022年6月にNASAはUAP目撃に関する専用の調査を開始した。

その一例として、あるパネリストは、逆風の中マッハ2の速度で移動する飛行物のケースを取り上げた。

直近では、2022年に中東で目撃されたUAPが、驚くべきテクノロジーを示していた。この比較的低高度で素早く移動する球形の飛行物は、同類の多くの飛行物と同様に、今日のいかなる航空機にも類似していない。

米国防総省は、これまで民間企業が公開していた「未確認空中現象(UAP)」を映した3本のショートビデオを正式に公開した(米国防総省)

国家安全保障上の懸念

UAPは、国家安全保障上の懸念を引き起こしている。2021年にカリフォルニアでは、軍事基地の上に浮ぶV字型飛行物の隊列が報告された。

エバンス氏は「(UAPは)我々の空域の安全性についての懸念を高めている」と語った。「これらの事象が、空域の安全性に対して潜在的なリスクをもたらすものであるかどうかを判断するのは、この国の義務だ」。

同様の事象はさまざまな核軍事施設でも記録されている。未知の飛行物によって核弾頭が無効化されたという報告は、1960年代に遡る。当時、核実験中に10発の核弾頭が無効化されたことを空軍の調査が列挙したが、それについての説明はされていない。

この問題に関する調査を米国とNASAが行ったが、これらの事象の5%については「ありふれた」解釈では到底説明ができないと、パネリストのショーン・マクモロー氏は語った。マクモロー氏は、NASAアームストロング飛行研究センターのミッションサポート担当アソシエイト・ディレクターを務める 。

「本当に異常だと思われる事象の数は、報告された目撃情報のデータベース全体の、パーセンテージで言うと1桁代なので、おそらく2〜5%だ」とマクモロー氏は付け加えた。

同氏によれば、多くの目撃情報は「ありふれたもの」として説明できるという。一例として、パイロットのミスで民間機がUAPと誤認されたケースを挙げた。

「合理的にみて『異常』と表現できる特徴が残されているのは、UAPに関する報告のごく一部だけだ」とマクモロー氏は述べた。「報告された未確認物体の大部分には、容易に説明ができるありふれた情報の特徴が見て取れる。しかし、他のものはあまり簡単には説明できない」。

最近明らかになった中東の事例を引き合いに出し、マクモロー氏は「この事象は典型的な例であり、最も頻繁に遭遇している。我々は世界中でこれらを目にしている。興味深い飛行だ」と語った。

「報告やデータの大部分(現在は半分弱)は、丸い球体の円盤についてだ」。

NASAの専門家は、「これらの事象の本質を解明することはNASAの役割ではない」と述べ、説明はなかった。

一方でスパーゲル氏は、「NASAが独自の能力と民間機関としての役割を活かして果たすべき役割は、オープンで透明性の高い方法で科学界と交流していくことだ」と述べた。

同氏は、現時点では、「既存の蓄積されたデータと目撃者の報告だけでは、すべてのUAPの性質と起源について決定的な証拠を提供するのに不十分だ」と述べた。

UFOに対する「偏見」が課題

スパーゲル氏らは、現在のような限定された範囲のタスクでさえ、データ品質の問題とこの問題を取り巻く「スティグマ(偏見)」の両方の課題があると述べた。

「現行のUAPに関するデータ収集の在り方は体系的ではなく、さまざまな機関に断片化されている。科学的データ収集に使用される機器も、多くの場合較正されておらず、信頼性に問題がある」。

「そして、我々はこのデータを調査するに当たって、重要なバックグラウンドに直面している。民間航空機、米軍属、ドローン、気象・研究用気球、軍用機、電離層での現象が、これらの出来事のバックグラウンドにある」。

それに加えて、UAPの目撃報告を、多くの人々(民間人もパイロットも)が依然として不快に思っているかもしれないという課題がある。

エバンス氏、スパーゲル氏、NASA副管理者であるニコラ・フォックス氏はそれぞれ、UAPをめぐる「スティグマ(偏見)」が調査を難しくしている点を指摘した。

最近まで、UAPとUFOは陰謀論の領域として取り扱われてきた。今になって、政府がこの問題を真剣に受け止めるようになったからといって、そのスティグマが消えることはない。

パネリストの中には、科学的にこの問題を調査していることから、殺害予告などの脅迫を受けた人もいた。

フォックス氏は「この種のハラスメントは、UAP分野にさらなるスティグマを増長し、科学の進歩を著しく妨げ、他者の研究意欲をも妨げようとしている」と語った。

また、民間パイロットは、自身のキャリアや社会的イメージへの懸念から、UAPの目撃情報を伝えることに抵抗を感じていると、スパーゲル氏は指摘した。

「人々の間には、事象の報告についてのスティグマがある。そのスティグマを減らすためにNASAは積極的に努力してきたが、UAPの起源は不明なままだ。また、多くの事象が報告されないままになっている。スティグマを取り除き、高品質のデータを取得することを、NASAに第一にやって欲しい」。

この問題の調査はまだ始まったばかりであり、多くのことはまだ説明されていない。

スパーゲル氏は、事の本質上、たとえ、データやスティグマの問題に対処したとしても、「すべての目撃情報が説明されるという保証はない」と警告した。

ただし、説明されないままであっても、ごく一部の飛行物が示す高度な能力によって、このような目撃情報は私たちが宇宙で一人ぼっちではないことを示していると、多くの人が考えている。

他にも、中国軍やロシア軍の試作機ではないかと、より地球的な視点でこの機体を捉えている人もいる。

いずれにせよ、米国政府は、国家安全保障と技術的優位性に対する潜在的な脅威として、この問題をますます真剣に受け止めている。2022年、米国国防権限法(NDAA)はこの問題に対処し、そのような飛行物の目撃を報告する内部告発者を保護するための新しい制度を制定した。

エポックタイムズ記者。主に議会に関する報道を担当。