今月11日、中国・上海の「上海浦東発展銀行」の前で、待遇の改善を求める従業員が座り込みのストライキを行った。座り込みの様子や、集まった抗議者を警察が強制的に排除する様子を映した複数の画像がSNSで拡散され、物議を醸している。
SNSによると、ストライキに発展した原因は「月給が、もとの2万元(約38万円)から6260元(約12万円)に大幅カットされたためだ」という。いっぽう銀行側は、声明のなかで「ネット上で拡散されている複数の写真は、それぞれ別の件だ」と主張している。
すでに「火の車」になった銀行
銀行側によると「減給されたと訴えるのは子会社の職員だ。減給された原因は、本人の業績悪化にある」としたうえで、話し合いの結果、該当者は銀行の決定に納得を示しているという。
また、それとは別に、銀行前に集まった抗議者たちは「業務委託をめぐる待遇に不満を持つ関連会社の職員」であり、こちらの件は現在「交渉中」だという。
これに関連する話題は、同日のウェイボー(微博)の人気話題の1位にランクインした。しかし翌日(12日)に中国のネットで関連話題を検索しても、すでに検閲が入ったらしく、銀行側が出す公式声明以外の「当局と異なる声」は、ほとんどヒットしない状態になっていた。
同行は、すでに昨年の従業員給与を、その前年より15%近くも削減するなどしており、子会社も含めて、業績悪化が指摘されていた。
預けた預金が「消える」ことも
世界的な金融危機のなか、中国では地方財政の悪化で不良債権リスクも高まっており、中国の銀行セクターを巡る悲観論は、前例のない水準に達している。
中国の銀行をめぐっては「銀行に預けていたはずの定期預金が消える」という事態も、実際に起きている。にわかには信じがたいことだが、中国では近年、それが実際に多発していることを中国国内メディアも複数の被害例を挙げて報じている。
こうした「預金の蒸発」に加えて、預金を引き出す際に「各種の理由をつけられて拒否される」といったケースを訴える投稿が、SNS上では大量に見られる。
中国の銀行は「預金者保護をしない」
大手銀行の管理職が預金者の預金を横領した事件では、実際の裁判によって、横領した犯人である被告に懲役刑を言い渡したものの「銀行側に賠償責任はない」という判決が下り、預金者への補償が全く置き去りにされたケースもある。
それと同様の案件で、なかには裁判所から銀行側に対して「預金者へ全額弁償せよ」との命令が下ったケースもある。しかし、それでも銀行は預金者への補償をしぶり、部分補償には応じるものの、交渉を一方的に打ち切るなどして全額支払いを拒むケースが明らかになっている。
河南省の複数の地方銀行に至っては、一般預金者の預金を、突如として「全額凍結」する事件が起きている。
庶民が懸命に働いてためた預金が突然引き出せなくなるなど「ありえないことが平然と起きる」のが、今の中国の銀行だ。
そういった銀行関係の不祥事について、中国当局は、ネット上にあふれる不正暴露や当局批判への検閲を強めている。
そのため被害者は声を上げられず、自腹で旅費をかけて北京の陳情局に出向くものの、地元政府が手をまわした集団による容赦ない強制排除を受けているのが実情である。
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