1月6日をめぐる元FBI捜査官の告発…夢だった警察官から内部告発者に

2023/05/01
更新: 2023/05/02

この記事のポイント

  • 米連邦議会議事堂襲撃事件調査チームのメンバーだったFBI捜査官フレンド氏は、法執行を拒み解雇された
  • 事件をめぐり、FBIは国民の半分(共和党)が国内のテロリストであると思わせるような大袈裟な捜査をしている
  • フレンド氏は内部告発者としてFBIの課題を外部から訴えている

2021年1月6日、米大統領選結果に疑義を呈する一部共和党勢力によって連邦議会議事堂は襲撃され、警察官が殺害されるとった痛ましい事件が起きた。FBIは対テロ・タスクフォースを組んだが、その編成隊員であった若きFBI捜査官スティーブン・フレンド氏は指示を拒み、解雇された。

FBI捜査官という職業に強い誇りを抱いていた彼は、議事堂襲撃をめぐる捜査には政治色が強く「行き過ぎ」だと考えている。襲撃事件では一体何が起きていたのか。なぜFBIは対テロチームを組んだのか。エポックタイムズは撮影を通じて、当時の捜査側の視点を伺った。

FBI捜査官スティーブン・フレンド氏は上司に「異常な時代には異例の対応が要求される」と告げられた。

2021年1月6日、連邦議会議事堂で警察官を殺害する事件が発生した。フレンド氏はFBI特別捜査官でありながら「なぜ容疑者である暴徒を追い詰めようとしなかったのか」と、FBI上司に問われた。

フレンド氏は「1月6日の議会議事堂の暴力事件で起訴された者たちによって警察官が殺害されたわけではない」と答えた。

フレンド氏の質問を受けた上司は数秒沈黙した。「上司の頭の中には答えが浮かばないようだった」とエポックタイムズとのインタビューで述べた。

当時、アイオワ州からフロリダ州のFBIに異動して間もなかったフレンド氏は、1月6日の容疑者の扱いについて苦情申し立てを行っていた。事前に練られた強引な戦術について、いくつか情報の確認が必要だと感じていた。

フレンド氏は1月6日の軽犯罪容疑者の逮捕に戦術チームを組むというFBIの計画に疑念を抱いていた。まさに人生の分岐点だった。非暴力に対するこのような武力行使は憲法上の問題を引き起こすと考えていた。

私には就任宣誓がある

取材に応じる元FBI捜査官フレンド氏 (Paulio Shakespeare/The Epoch Times)

エポックタイムズが制作する1月6日ドキュメンタリーの撮影の際に、フレンド氏は「自分は就任宣誓を表明した」と語った。「逮捕状が裁判官の法的命令であることは承知しているが、自分には憲法を守るという宣誓がある」。

「訴訟手続きを踏むという規則から外れてしまえば、適正手続きのための修正第6条に違反する可能性がある」。

問題とされる逮捕者はすでにFBIと接触しており、捜査官から事情聴取を受けていた。計画には逮捕まで強力な手だてが取られていた。

「戦術チームを使わずに拘束する方法はいくらでもある。(戦術チームの行使は)実際に最大かつ最高レベルの取り締まりだ」。

フレンド氏は、「お前をチームメンバーにしておけない。明日は出勤する必要はない」と言われた。そして、職務離脱(AWOL)扱いとなり、直後にはセキュリティクリアランスが停止した。2022年9月19日に停職となり、収入はゼロになった。外部の仕事を探すことさえ許されなかった。

彼の信念が正に試されようとしていた。

この武力行使への異議は、フレンド氏のFBIに対する不安の始まりに過ぎなかった。フレンド氏は家族とともにフロリダへ引っ越していたが、それは自分にとって身近なテーマである人身売買の捜査に携わるためだった。未成年や若年成人の性的人身売買は、緊急の国家的危機として急速に注目されるようになっていた。

その任務の最中、フレンド氏は1月6日の容疑者を追跡調査する合同テロ・タスクフォース(JTTF:Joint Terrorism Task Force)に配置転換されることとなった。

JTTFはFBIの通常の事件管理プロトコルから逸脱していると非難した。国内テロが実際よりはるかに大きな問題であるかのような幻想を起こさせるために採用されたものだと感じていた。

「FBIは何百件もの事件(捜査)を全国に広げることを選択した」とフレンド氏は語る。「国内テロが全国的な脅威であるかのような印象を与えたが、彼らが喧伝する数字は実際、あの日のあの事件によるものだった」。

「FBIは国民の半分(訳註:共和党)が国内のテロリストであると思わせてきた。今のところそれに成功している」。

エポックタイムズはフレンド氏の事案についてFBIにコメントを求めたが、記事発表までに回答は得られなかった。

しかし、FBIはフレンド氏の近刊『True Blue: My Journey from Beat Cop to Suspended FBI Whistleblower(仮邦題 トゥルー・ブルー:警察官からFBI内部告発者になるまで』についていくつかの重大な懸念を表明した。

4月21日付でフレンド氏に送った電子メールの中で、FBIは彼の著書のうち、85ページから110ページのすべての内容を含む36ページを編集し直すよう要求した。修正の予定はないとフレンド氏は述べている。

FBI記録/情報発信セクションのチーフ代理であるジョセフ・E・ベンダー・ジュニア氏は、「あなたの原稿は出版前審査ポリシーの条件に従って審査され、情報の一部が開示制限領域に該当すると判断した」と書いた。

捜査ありき


フレンド氏は、1月6日の事件の容疑者のすべてが法廷に立つ前から罰せられたかのようで心を痛めているようだ、と語った。

「1月6日の事案でFBIの事情聴取を受ける多くの人々に、立件すべきものはない」「FBIは、携帯電話のGPS情報や顔認識ソフトもない匿名の情報をもとに容疑者探しをしているようだ。誰にとっても過度なストレスとなっている」。

2021年1月6日にエリプスで行われたトランプ前大統領の演説に参加し、その後、歩いて議事堂に向かったとされる一人の容疑者に、フレンド氏は聞き取りをした。その男は議事堂警察に入場できるかどうか尋ねたところ「OKだ」と言われていたという。

「彼は、赤いベルベットロープ以上には歩いて行かなかった」「彼は数分間ほど議事堂まで歩き、そして退出した。我々は彼に『何か持っていったか』と尋ねると、彼は申し訳なさそうに『議事堂の見学者のために用意されていた無料のパンフレットを記念品として持っていった』と話した」

「彼は法律事務所でこの話をしてくれた。また、すでに失職していたため、あれは人生最大の過ちであったとも話してくれた。彼が刑務所に入れられることはないだろうが、仮にあったとしても、おそらく最小限になるだろう」。

好ましくないシチュー


ほとんどのFBI捜査官が、1月6日事案を一部の個人の刑事事件と見なしていると、フレンド氏は語った。

「我々には、重箱の隅をつつくかのように調査して全員を捕まえようとする傾向を十分に認識している」「聞いていたのは、1月6日に起こった事件は『大事件』なので、FBIは、可能な限りすべての人を告発するつもりだ、ということだ」。

「それはリソースの配分を誤りであり、政治的意図とご都合主義が結びついたときに起こることだ」。

1月6日が米国の歴史上最悪の日であったと純粋に感じている確信的な信奉者がおり、また、4時間程度の騒動に過ぎないと考える人もいる。

「確信的な信奉者は、自分たちが正義の使命を担っていると感じている。また、この事件をFBIのキャリアの中で遭遇する最大で最重要な事件と捉える人もいる。昇進や褒賞などの望みがあるのなら、この事件に飛びつくのが得策かもしれない」。

「そのような動機付けがある上に確信的な信奉者がいれば、好ましくないシチューが出来上がってしまう」。

夢の職業

フレンド氏にとって、FBIの特別捜査官は夢の職業だった。ノートルダム大学での学位取得後、2009年に法執行機関への道を見いだした。2014年にFBIに入局するまでの4年間、ジョージア州サバンナとプーラーで宣誓警察官として働いた。彼は、ネブラスカ州北東部のインディアン居留地での暴力犯罪を7年間捜査した後、デイトナビーチに転勤し、子供を狙った犯罪を捜査するようになった。

「ずっとやりたかったことだし、8年間、やり遂げることができた。本当にいい仕事をしたと思っている。…自分は立つ鳥跡を濁さずと言ったタイプの人間だし、決してトラブルメーカーといわれるようなものではない」。

フレンド氏は、警察の仕事に政治を持ち込まないようにしていたと語る。しかし、2023年初頭、ワシントンの政治が彼を求めてやってきた。

彼は2023年2月、連邦政府の兵器化に関する下院特別小委員会の書き起こしのインタビューに招待された。フレンド氏は証言の日にその局を辞め、議会の前で自由に自分の懸念を話すことができるようにした。

フレンド氏によれば、共和党の多数派は彼の申し立てとFBIへの懸念表明を受け入れた。しかし民主党の少数派は300ページにも及ぶ報告書を作成し、その中から自分たちに都合の良い箇所を選んで、彼らに友好的なメディアにリークした後、非難を浴びせたという。報告書は、証拠を示すのではなく「陰謀論」に過ぎないと非難した。

マイクドロップ


停職したため、フレンド氏はそれまでFBIから貰っていた6桁の給与を失ったが、元トランプ補佐官でエポックタイムズTVのパーソナリティであるカシュ・パテル氏が主宰する慈善団体から5000ドルの俸給を受け取った。このため彼にはペテン師ではないかという容疑がかけられた。

ある民主党の弁護士が、フレンド氏にヘルメットと防護服を着た1月6日の容疑者の写真を見せ、「あの日、何か楽しいことをしようとしてあそこに行った人のように見えるか?」と尋ねた、とフレンド氏は振り返る。

「冴えない顔してるね」と委員会で述べた。「あの日、その男はまずいことをしたのだろう。彼はおそらくそのことで逮捕され、起訴されるべきだった。しかし、FBIが彼の公民権を侵害したために裁判に負けたとしたら、(皮肉をこめて)本当に残念なことだね」。

議会でフレンド氏が勝利を収めた瞬間(マイクドロップ)だったと振り返った。

「公開の公聴会の場で話せればよかったのに」「あの時、私は本当に誇らしく思った」。

フレンド氏は、FBIの内部告発者であるカイル・セラフィン氏やギャレット・オボイル氏、そしてジョージ・ヒル氏と共に、兵器化小委員会での公開証言の場に戻ってくることを望んでいる。

フレンド氏は、7月にポストヒル・プレスから自分の経験をまとめた本を出版する予定だ。彼はCenter for Renewing America(米国を再生するためのセンター)でアナリストとして新しい仕事を始めており、すでに 『Top 10 Systemic Issues Within the FBI (仮邦題 FBI内の制度的問題トップ10)』というタイトルの記事を発表した。

フレンド氏は、停職になる数日前に弁護士と話をするなど、FBIから円満退社できるよう最善を尽くしたと語った。「FBIはあなたの職場復帰を許さないが、それを受け入れたのか」と弁護士に尋ねられたとき、私は「はい」と決意表明した。

彼は続けた。「この弁護士の質問は、多くの内部告発者のクライアントが抱えている課題である。復職を希望したとしても、それが実現しないことを覚悟する必要がある」。

大紀元記者。2021年1月6日の連邦議事堂侵入事件とその後の影響、およびウィスコンシン州のニュース全般を中心に担当している。2022年には、1月6日の事件に関する大紀元の特別調査報道『あの日、米議会議事堂で何が起こったのか(The Real Story of Jan.6)』の制作に携わった。40年近くジャーナリストとして活躍している。