英国の女性権利活動家、NZのトランス活動家らが入国禁止を要求するも裁判所が却下

2023/03/27
更新: 2023/03/27

ニュージーランド高等裁判所は、英国の女性権利活動家のポージー・パーカーことケリー=ジェイ・キーン=ミンシャル氏に対する入国禁止要求を却下した。

先週、オーストラリア全土で彼女が開催した「女性に話をさせよう(Let Women Speak)」集会が、LGBT+支持者からの激しいカウンター・プロテストに直面したことを受けて、ニュージーランド移民局はキーン氏を入国させるための要件を検討していた。

22日、ニュージーランド移民局はキーン氏の入国を許可した。

これを受け、「ジェンダー・マイノリティーズ・アオテアロア(Gender Minorities Aotearoa)」、「インサイドアウト(InsideOUT)」、「オークランドプライド(Auckland Pride)」などのニュージーランドのトランス活動家団体は、キーン氏の入国を禁止する仮処分命令を求め、マイケル・ウッド移民相と法廷で争った。

彼らは、キーン氏がトランスジェンダーにとって脅威であると主張していた。「ジェンダー・マイノリティーズ・アオテアロア」の広報担当者アヒ・ウィ・ホンギ氏は声明で次のように述べている。

「移民相の不作為が、私たちのコミュニティを危険にさらしている。私たちは言論の自由に反対しているわけではなく、公共の秩序やトランスジェンダーの人々の安全に対する端的な脅威に反対している」

ニュージーランドの移民法第16条によると、移民相は裁量権を持ち、安全保障上の合理的な脅威やリスクがある場合には他国から来た人を入国させないことができる。

ウッド移民相は、「キーン氏には二度とニュージーランドに足を踏み入れないでもらいたい。彼女の見解はとても不快だ」と述べたものの、彼女の事例は移民法第16条の権限が適用される基準を満たしていないと報告した。

技術的な理由で拒否

デイビッド・ゲンダル判事は、「市民活動家団体の主張に同情するが、主に技術的および手続き上の理由により、この申請は受理されない」と述べた。

また彼は、キーン氏に代理人を立てる機会がなかった事実にも困惑していた。

トランス活動家団体側は、自分たちの申請が却下されたことに「とてもがっかりした」という。さらに彼らは、「明日、私たちはポージー・パーカーに対してカウンター・プロテストを行って自分たちの価値観を示し、トランスフォビア(トランスジェンダーに対する嫌悪)と戦う」と述べた。

一方、第三者として法廷審理の仲介が認められた「ニュージーランド言論の自由連合」は、法廷の決定を歓迎した。

同連合CEOのジョナサン・エイリング氏は、「寛容と討論能力と言論の自由を重んじる国にとって、これが唯一の正しい結果だった」と述べた。

「言論の自由連合は、ケリー=ジェイと彼女を入国させたい人々の発言権にはっきりと関心があったため、この申請に介入した。私たちが参加しなかった場合、ケリー=ジェイの言論の自由は適切に聞き入れられなかっただろうと確信している」

「申請者は、彼女が公共の秩序に対する脅威であると提出書類の中で主張していたが、指摘されたのはすべて彼女の意見のなかの表現の部分だ。移民相が彼女の入国を拒否する事実上の根拠がないのは明らかで、移民相の決定は正当に支持される」

「キーン氏は自身の発言権を保持することができ、彼女の意見に反対する人々も自分たちの考えを主張する機会がある」とエイリング氏は述べる。

「検閲ではなく、寛容で民主的な社会において期待されるようなカウンター・プロテストで、彼らは意見を主張できる」

カウンター・プロテストが脇に追いやった女性の権利

キーン氏が明かしたところによると、彼女がニュージーランド行きの飛行機に搭乗する数時間前、「オーストラリアで広まった嘘」のせいで、彼女を守るために雇われたセキュリティ企業が急きょ引き上げたという。

その嘘とは「彼女のサポーターがネオナチと連携している」というものだったという。実際には、メルボルンでの彼女のイベントにネオナチらが乱入しただけで、女性権利活動家らとは何の関係もなかった。

「極右主義を信じ、自分たちをナチと呼ぶ男性たちに、女性の権利に関心があるとは思わない。こんなことを言うのも馬鹿げてる」とキーン氏はラジオ・ニュージーランドに語った。

「女性たちが権利のために立ち上がる時、女性も男性も、非常に不快なことを私たちに言う」

「私はただ男性に女性のスペースに入って欲しくないだけで、娘に安全にスポーツをして欲しいだけ。それが本当にそんなにひどいこと?」

キーン氏の「女性に話をさせよう」集会は、ホバート、メルボルン、キャンベラなど豪州の各地でカウンター・プロテストの抵抗に遭った。

キャンベラでは、元オーストラリア緑の党のリディア・ソープ上院議員がキーン氏のスピーチを妨害しようとし、警察官に引き倒された。

彼女は、「あなたたちは歓迎されていない」と繰り返し叫んだのち、男性2人にブロックされ、その後警察官によって地面に引き倒された。それから彼女は這い上がって、カウンター・プロテストの集団の方に歩いて行った。

事件後、ソープ議員は「その人にはそこにいる資格がないと言っただけで、警察にこてんぱんにやられた」と主張した。

ソープ議員は、報道陣に対して「キーン氏の入国を許した人々が恥を知るべき」と述べ、キーン氏を「あんな物」呼ばわりで非難した。

「彼らは人種差別主義者であり、同性愛嫌悪者であり、人々の生活を破壊している」とソープ議員は主張した。

そのイベントでは、数人のスピーカーが自らの安全を理由に辞退している。

シドニーを拠点とする記者。オーストラリアとニュージーランドの国内時事を担当。