調査記者イーサン・ガットマン氏に聞く 臓器狩り問題、日本に期待される大きな役割 

2023/03/11
更新: 2023/03/12

中国当局を相手にするとき、日本と米国が力を合わせれば魔法が起きるーー。調査ジャーナリストのイーサン・ガットマン氏は自身の経験を踏まえ、興奮気味に語った。

生きたドナーから心臓や肺などの臓器を摘出する「臓器狩り」問題は現代中国の闇として知られている。共産党政権の脅威が各国で認識されはじめた今日こそ、日米が力を合わせてメスを入れる時が来たとガットマン氏は指摘した。

エポックタイムズは3月初旬、来日したガットマン氏に単独インタビューを行った。

ーー臓器狩り問題をめぐる世界の最新の動きについて。

米連邦議会では2月末、最新版の「臓器強制摘出停止法案」が下院の外交委員会で可決され、本会議でも通過するだろう。また、国際心肺移植学会は昨年末に、中国の移植外科医が論文を学会誌に掲載することを禁止したことだ。小さな動きではないかと思われるかもしれないが、非常に重要な動きだ。

さらに、私は医学学会の初日にスピーチすることとなった。25分の持ち時間で、私の意見を述べることができる、非常に素晴らしい機会だ。もちろん、私が何を話すか主催者たちは知っている。これは、医学会におけるちょっとした革命だ。

まだ表面化されてはいないと思うが、特に新型コロナウイルスのパンデミックでは、中国当局が嘘をつき、ウイルスの出どころについても嘘をついた。そのため、中国に対する不満が鬱積しており、彼らに対する信頼度はかなり低下している。

ーー東京で開かれた著書のサイン会や勉強会で意見交換した印象は。

日本は長らくこの問題を避けてきたように感じる。中国は日本の戦略的な競争相手であり、貿易の規模も大きいことから、理解できない話ではない。日本は最近、防衛予算をおよそ2倍に増やしたが、これは非常に重要なことで、世界にとって非常に有益だ。

ご存知の通り、戦略には軍事的圧力と経済的な圧力、そして倫理的な圧力、すなわち人権がある。これら一つひとつはイスの足のようで、3本揃って初めてイスは安定する。この話をするのは気が引けるが、中国への臓器移植ツーリズムにおいては、日本は韓国とドイツを差し置いて、おそらく世界で最も渡航者の多い国かもしれない。

ーー日本は米国と強固な同盟を結んでいる。米国の動きは日本にも波及するのか。

日本がアジアにおける米国の最も重要な同盟国であることに疑いの余地はない。私が北京で仕事をしていたときも、中国政府に圧力をかけたいときは、日本人に会いに行き、「この話に乗ってくれないか」と言ったものだ。すると不思議なことに、中国当局は引き下がった。にわかに信じがたい話かもしれないが、米国と日本が一緒になることは本当に魔法のようだ。

だからこそ日本に来たのだ。ここはある意味で最前線だ。日本がどう行動するかは本当に重要であり、台湾はこの点をよく理解している。台湾はすでに中国への移植ツーリズムを禁止するなど、いくつかの措置を講じている。もちろん完璧ではないが、彼らは一歩前に進んだ。実行に移したのだ。

日本は未だ手をこまねいているが、ある時点で本当の決断を迫られることになるだろう。日本はできるだけ早くこの問題に取り組むべきであり、先送りすることに意味があるとは思えない。最終的には、日本の医療施設と中国の医療施設がデカップリングしなければならないため、日本国内でもいくらかの痛みを伴うだろう。しかしこれは世界的な潮流だと思う。

中国の臓器狩り問題を暴く書籍『臓器収奪――消える人々』の著者イーサン・ガットマン氏は大紀元の取材を受けた。2023年3月6日撮影(藤野偉/大紀元)

ーー日本では臓器移植のブローカーが逮捕されたが、この出来事についてどのように思うか。

もっと中心的な問題を認識すべきだ。臓器狩りは中国の体制的な問題であり、マフィアやヤクザの問題とは違う。長い間、臓器狩りで暴利を貪ってきた国家政党(中国共産党)そのものが問題なのだ。これはつまり、街角で麻薬を売っていた末端の小さな売人を捕まえた、と言っているようなもの。それで問題は解決するはずもない。これが私の言いたいことだ。

例えば、台北市長の柯文哲氏は実際に生きた人間から臓器摘出を行ったことはないが、彼は臓器摘出に使われる技術を医者たちに教えていたのだ。生体臓器摘出の技術は法輪功学習者に使われ、ウイグル人にも使われ、事実、今日でも使われている。

ーー4月に医学会で講演を行うとのことだが、どのような内容を強調したいか。

それは私の人生で最も重要な25分になるだろう。臓器強制摘出の問題は、医療関係者の倫理基準に対する攻撃であり、彼らの名誉に関わることだ。もちろん、臓器移植が多くの人々に恩恵をもたらしていると信じているし、私の従兄弟のように臓器移植によって延命した人を複数人知っている。移植医療の分野に批判的というわけではなく、現実に起きている問題を伝えているのだ。

中国共産党は2015年に死刑囚からの臓器摘出を停止したと宣伝しているが、臓器狩り問題はいまだ続いている。そもそも中国の移植産業は法輪功学習者を用いて技術を学んだ。法輪功学習者で実験することで、臓器収奪に最適な年齢などを把握した。彼らは中国の至る所でそれを行っていた。そして法輪功学習者が拘束され刑を宣告されると、中国の武装警察と軍は管轄権をめぐってよく揉めていた。(法輪功学習者は)お金になるから、彼らは時に裁判官に賄賂を渡していた。

ウイグル人をめぐっては、共産党がより直接的に関与し始めた。強制収容所では、25歳から30歳の人々、平均すると28歳の年齢層の人々から臓器を摘出することとなっていた。正確には、年に3%、あるいは3.5%の人々から臓器が摘出された。これは私がカザフスタンで話を聞いた目撃者の言葉と驚くほど一致していた。彼らはカザフスタン人であり、迫害されていなかったため、嘘をつく理由はない。ただ彼らは事実を目で見て、耳で聞いていた。彼らは帰ってくると、「ああ、数人が消えた」と教えてくれた。

ーー印象に残っているインタビューは?

新疆ウイグル自治区の収容所から釈放された一人の女性について話したいと思う。彼女に対し、「人が連れて行かれたことを覚えているか」と聞くと、「ええ、覚えている」と答えた。3人の女性が、血液検査をした直後に姿を消したと言うのだ。

私はそこで「恥ずかしい質問で恐縮だが、その女性たちは性的に魅力的だったのか」と聞いた。彼女たちが性奴隷として連れて行かれたのではないかと考えたのだ。聞かれた女性は困惑し、「いいえ、こう言っていいかわからないけど、特に魅力的というわけではなかった」と答えた。続けて、彼女たちには何か共通点があるのかと尋ねると、「みんな健康的だった」と答えた。彼女は私の質問の意図を知らないため、プロパガンダではなく、真に自らの目で観察したことを話しているだろう。

そして忘れてほしくないのは、法輪功学習者もウイグル自治区で収容されていたのだ。驚いたことに、目撃者の中には「ああそうだ、我々のキャンプには法輪功学習者がいた」と言う人がいた。予想外のことに驚いた。ウイグルの収容所には法輪功学習者が収容されていたのだ。数はそれほど多くないようだが、彼らも新疆ウイグル自治区にいるという事実があるのだ。

ーーつまり彼らは輸送されて…。

おそらく、法輪功への迫害が始まったばかりの時期から、中国共産党はそうしていたのだろう。看守らはよく学習者に対し「言われた通りにやらないとタリム砂漠に送るぞ」と脅していたそうだ。タリム砂漠には少なくとも5万人を収容できる収容所があり、柵すらなかったという。乾燥した砂漠地帯では、収容所を出れば飢えと渇きで死んでしまう。

中国共産党は以前から法輪功学習者をそのように扱ってきたことが分かっているが、残念ながら、事実を究明することは簡単ではないだろう。中国共産党がハードルをますます高めているのだ。証人はほとんど出てこない。そのため、わずかな証言と衛星技術、そして場合によってはリークされた文書に頼っているのが現状だ。

イーサン・ガットマン

中国専門調査ジャーナリスト、共産主義犠牲者記念財団(VOC)上席研究員、中国での臓器移植濫用停止国際ネットワーク(ETAC)共同創設者。
天安門広場での迫害の始まりを目撃して以来、中国の元高官や医師、強制労働所の所⻑などに対し幅広く聞き取り調査を行い、法輪功迫害問題の追跡調査を行う。大手英字各紙(Wall Street Journal,National Review, World Affairsなど)への寄稿や、米議会、欧州議会、国連などで証言・報告する経験を持つ。2017年、ノーベル平和賞候補者に推薦。
著書に『臓器収奪―消える人々』(ワニブックス)、『中国臓器狩り』 (アスペクト、デービッド•マタス、デービッド•キルガーと共著)。

(つづく)

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
政治・安全保障担当記者。金融機関勤務を経て、エポックタイムズに入社。社会問題や国際報道も取り扱う。閣僚経験者や国会議員、学者、軍人、インフルエンサー、民主活動家などに対する取材経験を持つ。