先月28日ボスニア・ヘルツェゴヴィナで開催されたアイスホッケー世界選手権で、またもや中国国歌の代わりに香港民主化デモのテーマソング「香港に栄光あれ(願栄光帰香港)」が流れるハプニングが起きた。
この日、予選リーグ3-B組の試合で香港チームはイランと対戦し、11対1でイランに快勝した。試合後、本来なら勝利した香港チームの国歌として「義勇軍進行曲(中国国歌)」が流れるはずだったが、はじめの約10秒間「香港に栄光あれ」が流れた。この間違いは選手らの指摘によってストップされ、主催側は謝罪した。
今回だけではない取り違え「もはや確信犯か?」
スポーツ競技会など公の場で、香港デモのテーマソングが国歌と「間違えて」流されるハプニングは今回が初めてではない。過去8カ月で「主催側のミスなどで、実に5回も同じハプニングが起きている」と報じたメディアもある。
こうなると、もはやハプニングと言えず「取り違えが起きるたびに報道されて話題になっている。明らかに確信犯だ」と信じて疑わない人もいるほどだ。確かに、単純なミスというには頻度が高い。
ともかく取り違えて流された歌「香港に栄光あれ」は、香港の民主化を求めるデモ参加者らの間では「非公式の国歌」として位置づけられるほど、多くの香港人に支持され、愛唱されてきた。
台湾の自由時報は、この歌について「香港の状況に対する不安とともに、後退しないという革命的な精神を歌ったもの」と評価しているのに対し、中国側はこれを「香港独立を扇動する歌」と見なして、今も神経を尖らせている。2019年、人権活動家の賴日福氏は、この歌をネット上に投稿しただけで中国当局に拘束されている。
2019年9月10日に行われたサッカー香港代表とイラン代表とのFIFAワールドカップ予選で、中国国歌が「香港の国歌」として演奏される事に反発する観客らは、中国国歌の演奏後に「香港に栄光あれ」を大合唱する場面もあった。
しかし2020年6月から、香港での反政府的な動きを取り締まる中国の「香港国家安全維持法」の施行により、この曲を公衆の前で歌う行為は「香港独立を煽る行為」と見なされ、刑事罰の対象となるおそれがあるため歌われる機会が少なくなった。
こうしたなかで、大きなスポーツ競技会など世界に中継される場での相次ぐ香港国歌の「取り違え」に、香港民主化支持者の間では歓声が広がっている。
「香港に栄光あれ(願榮光歸香港/Glory to Hong Kong)」
2019年11月28日夜に香港の愛丁堡広場(Edinburgh Place)で開かれた大規模集会(10万人参加)で、香港の人気女性歌手の何韻詩(デニス・ホー)さんによって演唱されたバージョン。
グーグル検索でも上位 今も根強い人気の「香港に栄光あれ」
ちなみにGoogleで「香港国歌」と検索すれば、この「香港に栄光あれ」が「義勇軍進行曲」より上位に表示される。
昨年11月、中国の特別行政区政府である香港政府はこの検索結果についてGoogleに抗議し、香港国歌のネット検索結果を変更するよう求めたが、Google側は「アルゴリズムで検索結果が決まる」として、この要請を却下している。
この歌について、YouTubeでは各種の派生バージョンが投稿されており、英語、日本語、韓国語版など多言語版が各有志メンバーによって発表されている。
「どうしてこの土地に再び涙が流れるのか。どうして人々をして憤り怨ませるのか」
「どうしてこの恐怖は消そうとしても消えないのか。どうして信念の為に退却しなかったのか」
これは「香港に栄光あれ」冒頭部分の日本語訳の一例だ。
香港の民主化を求めた大規模デモから3年以上の年月が過ぎようとしているが、ツイッターには先月も「2019年12月8日に香港の大規模デモの現場で撮影された映像」が投稿されている。
香港のデモ現場で、参加した市民や学生は5本の指を掲げたり、また5本と1本の指のポーズをとるなどして「逃亡犯条例改正案の完全撤回」や「普通選挙の実現」などを含む5つの目標は「1つも譲らない」と訴えていた。
このような3年以上も前の映像にも、これを見ると「当時の感動が蘇る」「この歌を聞くと胸が引き裂かれそうになり、涙が溢れる」「アジアが誇る国際都市はついに沈没した」「香港に祝福を」などのコメントが寄せられている。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。