米東海岸、クジラ死亡数が記録的増 洋上風力発電の一時停止呼びかけも 

2023/02/27
更新: 2023/02/27

米国東海岸ではここ数カ月で少なくとも18頭のクジラの死体が打ち上げられた。ニュージャージー州の市長グループは、洋上風力発電の「即時一時停止(モラトリアム)」を呼びかけている。

州議会議員に宛てた書簡で、市長らは最近漂着した「前例のない」数のクジラに対して「一致」した懸念を持っていると述べた。

市長らは連邦政府と州機関に対して、死亡事故を調査し、洋上風力発電活動が死亡事故の原因ではないと「確信を持って判断」するまで洋上風力発電のすべての活動を直ちに一時停止するよう求めた。洋上風力発電は、ニュージャージー州の気候変動戦略の要となっている。

「1月12日、38日間で7頭目のクジラの死骸がニュージャージー州ブリガンタインに漂着した。前例のない数のクジラの立ち往生は、洋上風力開発で使用する音響調査船による継続的な活動と重なる」と、1月30日付の書簡には書かれている。

「私たちはクリーンエネルギーに反対しているわけではないが、これらのプロジェクトがすでに私たちの環境に影響を与えていることを懸念している。私たちの海岸線で将来、不必要に死者が出ることを防ぐためにも、今すぐ行動を起こすよう強く求める」

ニュージャージー州とニューヨーク州の海岸で、またしてもザトウクジラの死体が発見されたとの報告を受け、モラトリアムの呼びかけが行われた。

FOX 5ニューヨークが報じたところによると、このクジラは24日午前6時半ごろ、ナッソー郡のリド・ビーチで発見され、救急隊が到着したときにはすでに死んでいたという。

大西洋海洋保護協会(AMCS)によると、この海生哺乳類は最大40フィート、体重2万9000ポンドの雄で、地元の作業員はペイローダーと掘削機の助けを借りて海岸に移動させた。

AMCSによると、ニューヨーク州環境保全局、野生生物保護協会、沿岸研究センター、コーネル大学などの研究者からなる生物学者チームは、クジラの突然死の原因を解明し、病気、毒物、衰弱、人為的原因などの可能性を排除するために、火曜日から剖検を始めた。

検査や組織・体液の採取が終わると、約40歳以上と思われるクジラは海岸の特定の場所に埋葬される。

しかし、同グループは、剖検の結果には数週間かそれ以上かかるかもしれないと警告している。

「12月1日以来、ニューヨークで座礁した2頭目のザトウクジラだ」と同団体は述べた。「米海洋大気庁(NOAA)Fisheriesと私たちのストランディング・ネットワーク・パートナーは、2016年から続いているザトウクジラの異常な死亡事故を積極的に調査している」

マーフィー州知事、クジラの死を「悲劇的」と表現

「クジラの死について懸念を表明している地域社会と同様に、このチーム全体がこの美しい動物たちの喪失について悲しみを共有している。今のところ、死因はわかっていない。船の衝突や漁具への絡まりは、クジラにとって最大の人的脅威であることが知られている」と、同団体は付け加えている。

また、AMCSは、クジラの死亡が風力発電開発と関連しているかどうかについての憶測を指摘したが、現時点では、洋上風力活動が死亡に寄与していることを示す証拠はないと述べている。

市長の手紙によると、この数カ月間にニュージャージーとニューヨークの地域に打ち上げられたクジラの死骸は、月曜日の死骸で少なくとも8頭となった。

しかし、NOAAのグレーターアトランティック地域漁業事務所の広報担当者であるアンドリア・ゴメス氏は、USA TODAYに対して、月曜日の死骸発見により、12月1日以来「ニュージャージー州では6頭のザトウクジラが座礁し、東海岸での18頭の大型クジラ座礁が報告された」ことを明らかにした。

また、ニュージャージー州に拠点を置くクリーン・オーシャン・アクションは、最近のクジラの死が建設工事や洋上風力発電所と関連しているかどうかを、調査するよう連邦政府に要請している。

最近クジラの死が増加しているにもかかわらず、ニュージャージー州のフィル・マーフィー知事は先月、この死は悲劇的だとしながらも、「洋上風力発電の開発を一時停止するつもりはない」と述べた。

2016年からNOAAは、メイン州からフロリダ州に至る大西洋沿岸で増加しているザトウクジラの死を調査しているが、これまでに180件のクジラ座礁が報告されており、そのうち24件はニュージャージー州、35件はニューヨーク州でのものだった。

(翻訳・大室誠)