中国社会のみならず、世界の華人圏を騒然とさせている「胡鑫宇事件」について、江西省当局は今月2日に記者会見を開き、自殺と認定した。いっぽう、当局の説明は解せないとの世論は根強い。
自殺か他殺か、それとも強制的な臓器摘出、いわゆる「臓器狩り」の組織犯罪に巻き込まれたのか。ネット上では白熱した論争を呼んでいる。
先月28日、中国江西省の私立進学校、鉛山致遠中学(日本の高校に相当)の高校一年生・胡鑫宇さんは遺体で発見された。胡さんは昨年10月14日、校内の寮から外に出たきり行方不明になった。大規模な捜索が行われたが、結局発見されなかった。携帯電話や財布は寮の部屋に置いたまま、失踪時の所持品はボイスレコーダーのみ。
警察は106日間もつるされたまま放置された遺体は「臓器の欠損はない」と強調し、遺体が何者かによって運ばれたとの疑惑も否定した。しかし、胡さんの失踪から発見現場までの足取り、遺体の状態など事件には依然と多くの謎が残されたままだ。
中国の著名な映画監督で、「大嘴(おしゃべり)」の異名を持つ宋祖德氏は当局の発表を前に、「胡さんの臓器は失踪したその日には上海に送り届けられて、移植された。数億元の取引だった」とする衝撃スクープを暴露した。この情報は大紀元は確かめられていない。
胡さんは「希有血液の保有者であること」、また失踪直前の日記に「光を見るのが怖い、ひどくのどが渇く」といった症状をつづり体調不良を訴えていた。この症状は移植前に投与する薬の副作用との指摘もある。
昨年9月、中国当局は「臓器移植条例」の改正を発表した。まもなくして移植医療専門の製薬企業の「上海健耕医薬科技株式有限公司」の上海証券取引市場の上場申請が受理されたと報じられた。臓器移植関連の腐敗と利権ではないかとの疑いも浮上している。
当局が公表した「臓器移植の発展に関する報告書(2020年版)」によると、中国は2015年から2020年まで臓器提供数、移植数ともに世界第2位だった。しかし、これほど多くの臓器はいったいどこから来ているのか。
中国では18歳以下がドナーになることは禁止されているにも関わらず、昨年11月、武漢で同じ日に3人の児童が同時に心臓移植を受け「快挙」と報じた。「子供の臓器がそんなにすぐに、しかも同時に出てくるもの?」と小さな子供を持つという母親は指摘した。
急増する各地での青少年の失踪が「臓器狩り」の組織犯罪と関連付けて、中国の未成年保護者たちは「血液検査はしないように。ドナーにされてしまうかも」といった論も出るなど、不信感が高まる一方だ。
カナダの人権弁護士で「臓器狩り」の調査第一人者であるデービッド・マタス氏によれば、主たる犠牲は法輪功学習者だが、近年ではウイグル人など少数民族、失踪した香港の若者となる可能性も指摘する。今回の事件と中国世論の反応で「健康な若者であれば、誰しもが悪魔的ビジネスの餌食になりうる」との考えが定着しつつある。
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