中共浸透工作を暴露した元スパイ、王立強氏 豪州は亡命申請を却下 

2023/01/11
更新: 2023/01/11

中国共産党の海外での影響力工作の実態を暴露していた中国の元スパイ王立強氏が豪州への亡命を拒否されたことが明らかになった。内務省は却下理由として、豪市民に対する「詐欺行為」を理由に挙げた。王氏は現在、中国への強制送還の可能性に直面している。

英デイリー・テレグラフによると、行政不服審査所(AAT)は王氏が中国に戻ることには「重大な懸念」があるとしつつ、同氏が観光ビザで豪州に入国する前に詐欺を働いたことを理由に亡命を拒否した。

王氏は2019年に豪州に亡命を要請し、豪州情報機関(ASIO)に対して共産党政権のスパイ活動を明らかにした。

当時27歳だった王氏は、エポックタイムズの取材で中国共産党の全体主義的なアジェンダに幻滅したことが決断につながったと話していた。

「年を取り世界観が変わるにつれ、中国共産党の権威主義が世界の民主主義と人権に与えている損害に次第に気付くようになった」「党と共産主義に反対する気持ちがますます明確になり、この組織から去る計画を立てた」

また「何度も考え直したが、もし(中国共産党に)残っていたら、良い結果にならないと強く確信した」と心情を綴っていた。

香港と台湾でのスパイ活動

王氏は豪州の入国管理局に、自身が中国共産党の工作員であると告白したほか、香港と台湾における共産党政権のスパイ活動を暴露した。

同氏は2018年、台湾の蔡政権を弱体化させることを目的としたの台湾地方選挙で20万個のソーシャルメディアのアカウントを開設するなど、大量の偽情報活動を調整するよう命じられていたと述べた。また、親中・国民党の韓国瑜氏の選挙を支援するために、15億元を一部の台湾メディアに献金したことも暴露していた。台湾に渡る際は偽造パスポートを使っていたという。

王氏は、中国共産党上層部の命令で香港の大学に潜入し、軍事・兵器情報を盗み出したとも語った。また、いわゆる「禁書」と呼ばれる中国政府への批判的な本を扱っていた香港の銅鑼湾書店経営者である李波氏の誘拐に関与したことなどをすべてASIOに打ち明けていた。

さらに、豪州にいる中国共産党のスパイ活動の責任者と密かに会っていたほか、その人物が豪州のエネルギー部門で働いていると主張した。

これに対して中国共産党中央政法委員会は、王氏は無職であり詐欺罪で有罪判決を受けていると発表。王氏の発言内容を全否定した。

王氏は弁護士を通じて、中国共産党が自身に対する中傷活動を行うことは予想していたとしたうえで、自身は豪政府に宣誓供述を行い、虚偽の供述をすることが重大な結果をもたらすことを認識していると反論した。

元上院議員「現実的で冷ややかな影響」

王氏の亡命が却下されたことで、裁判の判断に懸念が生じている。

タスマニア州の元自由党上院議員エリック・アベッツ氏はエポックタイムズの取材に対して「本当の亡命者が支援を得られないというのは実に悲しく、懸念される事態だ。亡命が認められない場合、これは非常に現実的で冷ややかな影響を与えるだろう」と語った。

豪州の両大政党の政策立案者も2019年、王氏の亡命を支持した。現豪首相のアルバニージー氏は当時、様々な暴露を踏まえると王氏には「正当な亡命権利」があるとの見方を示した。

自由党のアンドリュー・ハスティー国防相も王氏の亡命を支持した。「我々の主権を守るために立ち上がった人を豪州は保護するべきだ」と述べた。

中国人作家「非常に悪い前例となる」

豪州の中国人作家で、中国問題に詳しい曾錚氏は、特に豪政権が北京との関係を正常化しようとする中で、中国共産党はこうした問題に関して豪政府に確実に圧力をかけてくるだろうと述べた。

2020年4月にモリソン前首相がコロナの発生源や感染拡大に関する調査を求めた際、中国は対抗措置として農産物や石炭など豪州産品の輸入を凍結した。

2001年に曾氏が豪州に亡命申請した際にも中国共産党が内務省に圧力をかけたと述べた上で「王氏の送還は常に悪い前例となる」とエポックタイムズの取材に答えた。「強制臓器摘出といった中国共産党の秘密を知っている人が亡命しづらくなる。彼らは西側政府への信頼を失うことになる」

また中国共産党を裏切った者には容赦ない復讐が待ち受けていると指摘。「強制送還が実現すれば、自由を切望する在中国人を含む自由世界は、オーストラリア政府に失望するだろう」と述べた。

「西側の自由世界とそれを目指す人々、特に自由を渇望する中国共産党体制の人々を我々は歓迎し、支援するべきだ」と訴えた。

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