マイク・ポンペオ前国務長官は11日、ロシアで麻薬密輸などの罪で収監されていた米女子プロバスケットボールリーグ(WNBA)のブリトニー・グライナー選手がロシアの武器商人との囚人交換で釈放されたことは「悪者への間違ったインセンティブ」を与えると懸念を表明した。
米当局はグライナー氏と米国で収監されていたロシアの「死の商人」ビクトル・ボウト受刑者の身柄をアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ空港で交換した。ボウト氏は、テロ組織に武器を供給した罪などで有罪判決を受け、米国で2008年から服役中だった。露政府は、グライナー氏の拘束を取引条件にしたとみられている。
米FOXニュースに出演したポンペオ氏は、グライナー氏の釈放を喜ばしいとしながらも、露政府などが自国の収容者を取り戻すために米国の有名人を拘束する危険性が高まると述べた。
また、トランプ前政権下では有名人を巻き込んだ囚人交換を行わない方針だったと強調した。「すべての米国人を取り戻すことを使命としたが、同時に連れ去られるリスクを作らないこと」を重点にしたと語った。
トランプ氏は11日、自身のプラットフォーム「トゥルース・ソーシャル」でロシアとの囚人交換を断ったことがあると明かしている。2018年にロシアでスパイ容疑で逮捕された元米海兵隊員のポール・ウィーラン氏とボウト受刑者との交換について「武器取引で数え切れないほどの人々を殺してきた人物との引き換え」を拒否したと述べた。
グライナー氏の囚人交換について、バイデン米大統領は8日、ウィーラン氏の釈放を実現するため政府は努力を続けていると述べ、「どの米国人を帰国させるかという選択の問題ではない」と語った。
トム・コットン上院議員もグライナー氏の釈放を歓迎するとした上で「世界最悪の武器商人の一人を解放し、敵に(有利で)危険な前例を作るという代償を払うべきでは無かった。今後米国人が拘束されれば、どのような悪人も釈放してしまう恐れがある」と危機感を示した。
中国は2018年にスパイ容疑でカナダの元外交官のマイケル・コブリグ氏と企業家マイケル・スパバ氏を逮捕した。同時期にカナダでは、中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)副会長兼最高財務責任者の孟晩舟被告を米国に引き渡す最終審理が行われており、中国側が孟被告の釈放を求めてカナダ政府に圧力をかけたと見られる。
後に、孟被告は2021年に釈放され中国に帰国。中国当局に拘束されていたコブリグ氏とスパバ氏も解放され、カナダに帰国している。
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